別れの手紙になるはずだったもの





あなたは知っているでしょうか。

あなたが最後に残した手紙

それを読む前に

その手紙が消えてしまったことを。

あなたの最後の言葉に

触れることさえ出来なかったことを。


別れの朝にあなたが残した言葉を

知ることも出来ぬまま

相変わらずな日々を過ごしています。


あなたの最後の言葉に触れていないから

あなたと別れたなどとは思わない

そう、思うようにしました。

そうすれば

あなたの居ないこの日々も

あなたとはもう会えない日々ではなく

いつかまた会う日までの日々になるから

そう、願うことにしました。


これは単なる僕の勝手です。

手紙を読めなかったのも

ほんの少し、などと言って後回しにした

僕の大きな間違いの結果に過ぎないのですから。

あなたが悪いなんてことは雨の雫ほどもありません。


寂しくない、と言ったら嘘になりますが

それでも

寂しくなんかない、と

悲しくなんかない、と

言い張ろうと思います。

結局僕は僕のことが一番で

僕の為にしか詩を書けない不器用な人間だから。

それでも

あなたが去ったことで

あなたがあなた自身を責めてしまうことは

出来れば避けたいと願うのです。


僕は僕を生きていきます。

あなたにはあなたを生きていってほしいから。


でもこれも単なる僕の身勝手なわがままですので

どうか重く受け取らずに

通り雨の戯言で、すぐに乾いて無くなる水溜りくらいに思っていただけたら幸いです。



本当は

こんな僕の手紙など

あなたには送ってはいけないのだろうと

心の片隅では分かっているので

ここに眠らせておこうと思います。



あなたの心に沁みる言葉を

いつか届けられるように

僕はここで頑張ります。





最後にひとつだけ

いつか雨が上がりましたら

あなたの声を

聞かせていただけませんか。














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