「 詩 」





朝に目が覚めると

「おはよう」と憂鬱が微笑むから

熱いコーヒーと共に飲み込んで

体内で眠らせた夜と溶け合う頃に

代わり映えのない仮面の街へと身を投げる



蔦が這うように流れる人々

紛れ込むことで守るのは自身の中心

肌を焼く日の照りが生命を育むというのなら

その実深く濃い影をも育むということだ

大抵の生物は光を求め生きるのだろうが

影でしか息ができないイキモノもいる

それが僕だということは

もう何年も前から知っている

僕だけが知っている



夜は影が主役だ

砂浜に打ち上げられ息も絶え絶えな魚が

波の気まぐれで故郷の海へ帰り

再び息ができるようになったと安堵するように

僕は息をゆっくり


吸って、、吐き出す、、


もういちどゆっくり


すって、、はきだす、、


すると身体はふわりと軽くなり

からだの中心に眠らせておいたぼくが目を覚ます

夜を泳ぐぼくは生き生きと、息をして


夜を吸えば、ことばを吐き出して

今度はその、ことばたちと夜を泳いで


やがてそれらは体を手に入れて

夜の向こう側へと旅立つ

ぼくはそれを見送る


ぼくから生まれた、ことばたちは

きっとどこかで泣いている君の頬に溶けて

いずれは蒸発するのだろう

それを見届けることはできないが

それを夢想しながら眠りにつけば

いつまでも安らかに


いつまでも安らかに




今宵も夜の海を泳げば、息をして

吐き出された、ことばたちは気まぐれに

月の光のもとに手を繋いで、詩を名乗り

ぼくをまた、生き存えさせるのだ。















*決められた言葉から生まれる詩

にも公開してあります。




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