あなたのもとに雨は降る





一緒に傘を差した

あの日から

申し訳程度に時が過ぎ

今は少しだけ遠い

そんなところにいる気がします



夏の匂いがする黄昏の空を見て

今頃あなたはどうしているだろうかと

ただ静かに想うのです


自分を責める癖がある

僕と似たあなたのことだから

悲しみの雨の中で泣いていないだろうかと

ただ静かに想うのです



僕の声が

夏の匂いがする風に乗って空へ昇り

あなたに降り頻る雨になれれば

あなたは独りじゃないと

その頬を触れることが出来るのだろうか


僕の声が

夏の匂いがする陽に照らされて出来た影を

繋ぎ合わせた傘であなたの雨を凌げれば

あなたの頬を伝う雨を

拭ってあげることが出来るのだろうか




一緒に逃げようと言った

あの日から

申し訳程度に時が過ぎ

今では少しだけ遠い

そんなところにいる気がするから



一緒に逃げようと言って

あの日繋いだ手を

また握り締めて空を駆け

雨に濡れてひとり泣いている

あなたのもとに辿り着くよ










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