冬に立つ木と君




冬に立つ木


その手には何も持たず

その身は何も飾らず

ただただ静かに

でも確かに

日々を生きる


いずれは消える雪を受け止め

いずれは消える寂寞を宿し

ただただ静かに

でも確かに

日々を生きる


葉も花もない

寂しさの象徴のように

立ち尽くし

冬の風や空を

外套を羽織り足早に過ぎてゆく人を

見るだけの日々



冬に立つ君


その手には何も持たず

その心に悲しみだけ宿らせて

ただただ静かに

でも確かに

日々を生きる


いずれは消えると信じていた

これまでの失敗や後悔を

織り込ませた外套を羽織り

何処へも行けず

ただただ静かに

立ち尽くす日々




明日あす

未来

希望

現実

昨日

過去

失敗

後悔

良かったこと

嫌だったこと

忘れたくないこと

忘れてしまいたいこと

変わりたい自分

変われない自分

喜び

笑い

悲しみ

落とした涙

失ったもの

手にしたもの

失いたくないもの

手にしたいもの

これから何処へ行けばいい

行きたい場所はあるか

行きたい未来などあるのか

帰りたい場所はあるか

帰りたい過去などあるものか


ここではない何処かへ行きたいんだ

ここではない何処かへ行きたいんだ




冬に立つ君

ただただ静かに

でも確かに

これからも生きていく


冬に立つ木

ただただ静かに

でも確かに

これからも生きていく



その手に花を

その心に歓びを


外套を置いて

新しさを纏う季節は

もうすぐそこだ


もうすぐそこだ










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