君と僕と、約束の歌





「私が死んだらこの歌を流してね」

そう言って君は笑う


僕と君とふたりで好きなバンドの

「隅田川」という歌は

やっぱり僕も君も大好きで

いつも一緒に聴いていた


切ない歌かもしれないけれど

とてもあたたかくて

聴いていると

この手を離したくないと

その手を強く握りたくなって


失いたくないと

そう、心が千切れそうになるんだ


今日も優しい雨が降る

いつかの夜空に花が咲く

その絵を雨のキャンバスに描いて

今はふたりで眺めながら

好きなあの歌を聴いて

口ずさんで

手を繋いで

いつまでも


いつまでも



誰にだって大なり小なり

守りたいものはある

きっとある

気づいているか

気づいていないか

気づいていないフリをしているのか

なんだっていい

守りたいものなんて無いと言う

その言葉の裏側にこそ

それはあったりするんだ

きっとそうだ

なんだっていいか


僕にだって守りたいものはある

それは君だ

そして僕だ


だからさ


今日も優しい雨が降る

いつかの夜空に花が咲く

その絵を雨のキャンバスに描いて

これからもふたりで眺めながら

好きなあの歌を聴いて

口ずさんで

手を繋いで

いつまでも


いつまでも



「私が死んだらこの歌を流してね」

そう言って君は笑うから

胸は疼くけれど

「わかった」って僕も笑う


きっと

君は僕よりも早く花になるだろう

そして

君はそれを僕よりも願っているのだと

分かるから僕は

「わかった」って笑うんだ


笑うんだ








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