第20話 リオさんのこくまろ生絞り飲みたいな!

 あたし達は美乃梨商店に出品する商品素材を集める狩へと再び赴いた。

 そして、あたしは赤、黄、白と3種類のポーションを大量に生産し終えた所だ。

 そして、リオがあたし達の防具を作ってくれて、つい先ほど完成したから取りに来て欲しいとフェローチャットに書き込みがあったので取りに向かった。


「うわ!? 何この行列!?」


 昨日出店したばかりの露店に、大量の行列が出来ていた。


「これ……全部お客さんなの?」


 どうみても冒険者には見え無さそうな人まで並んでいる。

 

 萌生効果か……坂城のやつ! 


「姉ちゃんすごい! やっぱボクの姉ちゃんのお店なだけあるね!」


 萌生が純粋な瞳であたしを褒める。こんな目で見られるとやや複雑だ。

 でも萌生にそんなこと言われちゃったら、坂城に文句は言えなくなるわね。


「そ、そう? みんなのおかげよ」


 萌生のあたまを撫でると、屈託のない笑顔であたしを見つめてくる。


 あーもう! 萌生可愛いんだから!


 あたし達は露店に到着し、お店番をしているリオへと挨拶をする。


「やっほーリオ。お店番ご苦労さま。それにしてもすごい繁盛してるわね。」

 

 あたし達に気が付いたリオがこっちにやってきた。


「あ、こんにちは皆さん。すごいですよ、あれだけあったポーションがもうすぐ完売です! さすが萌生さん効果ですね」

「え? ボクは何もしてないよ?」

「ご謙遜を……私にはあんな捨て身な事できません。でも……どうしてもやれというなら……」

「そういえばリオさんもポーション作れるんだよね? 白ポーションの商品名なんだっけ……あ、そうだ。リオさんのこくまろ生絞り飲みたいな!」


 もう辞めさせよう。何も知らない純粋な子がいう言葉ほど心に来るものはない。

 萌生は詳しく知る必要はないから、黙っているようにリオには口止めするよう口に人差し指をあてて目くばせした。

 萌生はいつまでも純粋なままでいればいいの。

 萌生を汚していいのはあたしだけ。


「それにしても、別にお店番は必要ないから、リオはずっとここにいなくてもいいのよ?」

「いえ、せっかくですし。それに私の商品も置かせてもらいますし。あ、そうそう、みなさんの防具出来ましたよ」


 そういうとリオは背中のリュックを地面に降ろしてひろげ始めた。

 リオは裁縫と鍛冶のスキルを取得し、前回集めた素材でパーティーの防具を作ってくれたのだ。


「まずは美乃梨さんの防具です。どうぞ」


 リオは両手で皮の鎧をあたしに渡してきた。

 随分とごつごつしている感じがする。

 でも、デザインも女性らしく随所に布でフリルを着けてくれていた。


「美乃梨さんの防具は耐久度もさることながら、壁役として避けられない痛みへの緩和を念頭に置いて作りました。

ただ数値だけの防御力だけではなく、痛みを軽減させるために、体全体を覆える防具にしました。特に皮を二重装甲にすることで、ショック吸収率をあげてみました」


 うわ……この子そんなとこまで考えて作ってくれたんだ。

 気が利く子なのね。気に入ったわ。


「ありがとう、リオ! 大事に使わせてもらうわね!」


 あたしは防具を受け取り、インベントリ画面から装備を付けてみた。

 各所がしっかりガードされているけれども、関節の動きも邪魔にならない作りになっていた。

 これは予想以上にいい職人になるんじゃないかしら。


「次は……萌生さんの装備です」


 萌生に手渡した装備と比較すると、あたしの装備よりもかなり軽装なようだ。


「マナの回復速度アップのため、露出を多めにしました。この世界では、肌と大気に浮遊しているマナが多く接している方が早くマナが回復するんです。

それから、特に萌生さんは幼さを活かしたフリルのついた可愛らしい衣装にしました」

「ありがとうリオさん! 大事にするね!」


 萌生は受け取った装備をあたしと同じくインベントリ内から装備する。

 いつもの薄茶色の服から、可愛らしい衣装へと一瞬で切り替わる。

 どうやらポスターで撮影した服をそのまま装備へと作り直したようだ。

 露出が多いのは姉として放ってはおけないのだけども……マナの回復速度が速くなると聞いてしまうと何も言えなくなる。


「アリサさんも同じく露出は多めです。ですけどデザインは大人の女性用にしました」

「ありがとう。大事にするわね」


 アリサの装備は、白をベースとした色使いの装備だった。

 アリサはおへそを出したミニスカートの装備を着てそわそわしている。

 元男がそんな服着たら、やっぱそうなるでしょうね。


「くくく……似合ってるわよ、アリサちゃん」


 あたしはアリサのおへそをツンと突いて少しいじわるをしてみた。


「や、やめてください、美乃梨さん! 恥ずかしいんですから!」


 リオはカルナインの元まで行き、鎧を手渡す。


「カルナインさんは、パーティーのアタッカーであり一番動き回る役目でもあるので、軽さに重点を置いた装備にしました」

「ほほう! 俺の動きを考えた上での装備か! これはありがたい。恩に着る!」


 カルナインの装備は、黒に近い濃い茶色をしたレザーアーマーだ。

 首元や手や腰などに白いファーが取り付けてあり、コントラストの効いた鎧に仕上がっている。

 カルナインが着ると、ベテランの大戦士のようだ。


「最後はニナさんです。胸があまり揺れないように、胸を抑える防具を広めにしました。矢を引き絞る時に少しでも邪魔にならないように、防具の凹凸を減らすように心がけました。

でも……ニナさんの胸が大きすぎてどれだけ効果があるかはわかりません」

 

 ニナの装備はいかにもアーチャーといったレザーアーマーだ。

 黒いアンダーシャツにレザーの胸当て。そしてレザーのミニスカートに膝まであるロングブーツだ。

 ニナが装備すると、アリサがニナの胸当ての部分を両手で鷲掴みにして揉み始めた。


「おっぱいアーチャーだもんね」

「おっぱいいうな! たく……好き放題触りやがって……あとで俺、じゃなくて私にも触らせろよ!」


 ほんとこいつらは人目のつかない所でどんなことをしているのだろう。

 こんどじっくり調査しなければならないわね。


「今日も矢を引くときに胸に何度もあたってさぁ。矢を打つたびに胸がこすれて困ってたんだよね」

「矢を撃つたびに「ひゃう!」とか声あげてたもんね」


 乳くり合う二人を見つめながら、あたしは転生前の二人の姿を今の姿に重ねてみる。

 こいつらは元男同士。

 男同士では拒否していたのに、女になったとたん好きあう二人。

 いくら女になったとはいえ、こいつらの心は男のままよね。

 ならこれは男と男がいちゃいちゃしてるってことよね?

 アリサが受けか、ニナが受けか。

 アリサが受けっぽいわね。

 リバースだとどお?

 これにカルナインを加えた三角関係は……。


「美乃梨さん、お店のポーションを補充したいので作り終わったのをいただけますか?」


 リオの言葉で我に返る。


「あ、ごめんなさい。あたしが入れとく」


 そういうと、露店をタップして在庫入れにポーションを移した。


「そういえばさ、リオの根源って何?」


 あたしの横にちょこんと立つ可愛らしいNPC。

 この子も根源があるはずだ。

 もうこの子も仲間なんだから、もっと知っておく必要がある。


「え!? 何故聞きたいんですか!?」

「そりゃ仲間なんだし、これから信頼を築いていかなきゃいけないじゃない? 相手を知っておくことも重要だと思うのよ」


 リオは目を逸らし、顔を下にそむける。


「えっと……『純情』と『一途』です」

「あら、素敵な根源ね。あと一つは?」


 あたしの問いに、一瞬ぴくっと体を震わすリオ。

 そしてあたしの顔を上目遣いで見つめてくる。

 こんな顔して見られたら、普通の男なんかいちころじゃないの?

 萌生が惑わされなければいいけど……この子可愛いから不安だわ。


「え!? いえ……あの……いわなきゃいけませんか?」

「できれば知っておきたいとこだけど、これからの信頼関係にも関わるし。変なのじゃなければいいわ」


 再び俯くリオ。


「う……」

「言いたくない……って感じね」

「ご、ごめんなさい」


 『純情』と『一途』かぁ……この二つはまったく問題ないわね。いや、あるか……萌生がそんな子に耐性あるわけないし。


 リオが地面に降ろしていたリュックを背負いだす。

 一体何が入っているのか、かなり重そうだ。


「そういえば、NPCもインベントリあるのよね? なんでいつも重いリュックなんか背負ってるの?」

「え、あ……あの……あることはあるんですけど……私、重い荷物を背負っていると、何故か嬉しくなるんです。

今私って、歩くのが精いっぱいな程荷物を背負っているんだって思うと、何故か嬉しくなってしまいまして……」


 リオの頬が真っ赤になった。口元がにへらと歪んでいることから、どうやら本音らしい。


「……そ、そう」


 なんとなくだけど、残りの一つも想像できる気がした。

 まあ、この話はここまでにしておこう。


「ねえ、リオってなんか子犬みたいで可愛いわね」

「ほえ!? それって……リオに首輪つけて街を連れまわしたいとか……思ってます?」

「え!? そんなこと思ってないわよ!? なんでそんな発想が出てきたの?」


 両手で顔を隠し、恥ずかしがるリオ。


「え、いえ……忘れてください!」


 この話題はだめだ。別の話題にしないと。


「ねえ、あんた達NPCにとって、人間ってどう思ってるの?」

「これから手を取り合って一緒に生活をしていく仲間だと思ってます」


 「ふう」と深呼吸して、手をパタパタ仰ぎながら答えるリオ。


「でもNPCの方が知識があるし、リオにとっても同類でしょ? やっぱ気持ちに差はできちゃうんじゃない?」

「NPCによっては、というよりそのNPCを形作る言葉の根源によると思います。現にNPC至上主義を謳いだしているNPC集団も存在しています」

「前に冒険者ギルドでそんな感じのやつに会ったわ」

「美乃梨さんは……人間対NPCの争いが、起こると思いますか? もし起こったら美乃梨さんはどうしますか?」


 リオの表情は真剣な表情に変わっていた。リオも本当に気になっている事なのだろう。


「人間対NPCの争いかぁ……あたしはあたしの妹を守る事、そしてあたしの仲間を守る事を最優先にするわ。人間とNPCでも仲間になれるっていうのはわかったしね。

だから、そういうどっちかだけっていう争いには加担しない。大事なのはそんな枠じゃない」

「美乃梨さん……そうですね。巻き込まれなければ一番いいんでしょうけど、この先もし争いが起こった場合、どっちかに加担しなければならなくなるかもしれないっていうのだけは、心に留めておいた方がいいかもしれませんよ」


 あたしはふと目を街中へと移す。

 楽しそうに会話をしながら歩く人々。

 人間同士、あるいはNPC同士なのかもしれない。

 人間とNPCが仲良く暮らせる世界のままであって欲しい。


「望まない2択かぁ……」


 もしそんな時が来たら、あたしはどうするのだろう。

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