第38話 ボク、完全にペットにされちゃってるよぉ

 今日ボクはエアーブレスレットの練習をしに近くの森にやってきた。

 練習の手伝いをしてくれるのはリテアさんとともさんだ。

 道具屋でロープも買ったし、準備は万端。


「ほれ、縄の結び方なら儂に任せんしゃい」


 ボクからロープを受け取ったともさんは、ボクの体を縛り始めた。

 やけに手の込んだ結び方をしているようだ。

 ボクが飛んで戻せなくならないようにしっかりと結んでくれているのだろう。

 ともさんは優しいな。


「コツは八の字結びで出来た輪っかの長さなんじゃ。これが大きすぎても小さすぎてもいかん。ちょうどええ大きさにせにゃならん」


 よくわからないけど、ともさんはボクの体にロープを回して輪っかを六角形状にして結んでいる。

 変な結び方だなぁ。

 あれ、でも何だか前も見たことがあるような……。


「ボクこれ知ってるよ。えっと……何だっけ……あそうだ。亀頭結びっていうんだよね」


 ともさんが一瞬驚いた後に噴出した。


「そんなもん結んじゃいかんわい! あっはっは!」

「あれ? 違ったっけ?」

「これは亀甲結びって言うんじゃ。そしてここをきつく縛ると……」


 ともさんがロープをぎゅっと引っ張りきつく縛り上げてしまった。


「あうっ! と、とも……さん……これ……だめぇ……食い込んじゃって何だか変だよぉ」


 ボクは腰をくねらせてもがいてみたけど、余計股間に食い込む縄が体を締め上げてくる。

 そうだ、この結び方前もやられた結び方だ!


「ともさん……んっ……ひどいよぉ……んあん。リテアさん……ほどいてぇ」


 ボクはリテアさんに助けを求めた。

 するとリテアさんはなんだか興奮した顔でボクを見つめていたが、ボクがじっと見ていたらやっと気が付いてくれたようだ。


「そんなんじゃだめです!」


 そう言うとリテアさんは急いでロープを解いてくれた。


「ありがとリテアさん」


 ボクのお礼の言葉をリテアさんは笑顔で返して、ボクにロープを結び始めた。

 もうともさんには結んでもらわないようにしよっと。

 こういうのはリテアさんに任せるのがいいね。

 ボクの信頼をよそにリテアさんは何故かロープをボクの首に回して結んでいた。


「リテアさん……ボク、なんだか犬みたいだよ……」

「うふふ。萌生ちゃんはそのほうが可愛くて似合ってるよ」

「リテアさんまで! しっかり結んでよ!」

「えー……その方がいいのに……」


 リテアさんは本気で残念がっているようだ。


「自分でやるよ!」


 ボクは自分の腰に縄を結び、反対側のロープをリテアさんに渡してからエアーブレスレットを装備した。

 ボクはロープに結ばれて空をふわふわ浮かんでいる。

 地上ではリテアさんがロープを引っ張ってボクを牽引して遊んでいる。


「萌生ちゃんのお散歩だね」


 ボクはロープで引っ張られてリテアさんの後ろを飛んでいる。


「ボク、完全にペットにされちゃってるよぉ」


 リテアさんは楽しそうだ。


「これどうやったら好きなように移動できるのかな……」

「言葉に出してみたらどうじゃ?」

「やってみるね。『進め』」


 すると、ゆっくりと前方に移動しはじめた。

 

「わわわ、動いてる!」

「も、萌生ちゃん! ロープ! ひっぱられちゃう!」


 ボクが前に移動したために、リテアさんはロープが引っ張られて引きずられそうになっていた。

 ボクはその様子を上空から見て慌てて止まろうとしてみる。


「あわわ、『止まれ』」


 ボクの体がぴたりと上空で止まった。


「出来たよ! ともさんのいった通りだ! 言葉で言えばよかったんだね」


 するとその時どこからともなく数人の男達が現れた。


「うひひ、何か楽しそうなことしてんじゃん?」

「ぐへへ、幼女を紐で結んで飛ばす遊びか?」


 ざっと男達の人数は10人前後。

 あっというまに周囲を取り囲まれてしまった。


「念のために聞くけどよ、おまえら人間で間違いないよなぁ~?」

「だったらなんじゃというんじゃ?」


 ともさんは詰め寄る男共の前に出る。

 その隙にリテアさんはボクをひっぱり降ろしてくれた。


「そいつ宗野萌生だ。間違いない、こいつらだぜ」

「ああ、こいつは有名だからな」


 男達の視線がボクへと集まっているのがわかる。

 どの人達もとても嫌な顔をしている。変な事を考えているのかもしれない。


「この子のお姉さんはフルムーンの領主なのよ! 変な事したらあなたたち全員追放されるわよ!」


 リテアさんは声を張り上げて男共を脅すが、声も体も震えていた。

 そんなリテアさんを見て、男共は下種な表情を浮かべている。


「そんなに震えてちゃ説得力ねーな、お嬢ちゃん」

「怪我したくなけりゃ大人しくしてろよ!」


 男達は手に武器を取り出してボク達を脅してきた。

 武器を突き付けられて身動き取れずにボク達はあっさり拘束されてしまった。




 森の木陰でその様子を見ていたマイクは右手で画面を操作して、カルナインへとメールを飛ばす。


『緊急事態だ。萌生ちゃん達三人がNPC至上主義者達に連行された。敵の人数はかなり多い。人数を引き連れて来てくれ。俺は後をつける』


 急いでメールを送ると、男達の後をこっそりつけはじめた。


「普段こうやって萌生ちゃんを見守っていた成果が出たってもんだ。急いでくれよ、カルナイン。手遅れになる前に頼むぜ」

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