第37話外より中の方が気持ちいいのじゃ……中があったかいのじゃ!
人の少ないエレットタウンの街中を走る二人の人影。
ピンクの髪をしたボブカットの少女が息を乱しながら必死に逃げている。
追いかけているのは赤い髪をしたポニーテールの少女。
「おい待てアリサ! 逃げられるとでも思ってんのか!?」
逃げるアリサを追いかけているのはニナ。
ニナは激しく揺れる胸を手で押さえながら前を走るアリサへと詰め寄る。
アリサは曲がり角を曲がり、その後を追ってニナも曲がり角を曲がる。
その曲がった先は袋小路になっていて、アリサは逃げ場を失ってしまう。
「自分から逃げ場のない場所に逃げ込むなんて、捕まえてくださいっていってるようなもんだぜ」
悔しそうな顔を浮かべるアリサは、何かないか周囲を見回している。
しかし逃げ場もなければ助けになるような物も何もない。
「えっへっへ……追い詰めたぜ! 大人しく俺の言う事を聞け」
「いや……こないで……乱暴な事しないで……」
「やだね。これからお前はエロ同人誌みたいな目に合うんだよ! 覚悟しろ!」
いやいやと首を振りながらその場に座り込むアリサ。
そんなアリサの腕をニナは乱暴に掴む。
「おら、もう抵抗はお終いか? なら好きにさせてもらうぜ!」
「きゃあー! やめてぇ!」
ニナはアリサの両腕を掴んで拘束する。
「何やってんのあんた達!」
その時二人の後ろから表れたのは美乃梨だ。
二人は予想外の人物の乱入に驚きを隠せずにいた。
「ニナ! あんたやっていい事と悪いことがあるでしょ! その手を離しなさい!」
困惑しているニナはアリサの手を解く。
「いや……美乃梨ちょっと待ってくれ。これは違うんだ……」
「何が違うって言うの! 嫌がるアリサを無理やり手籠めにしようとしてた現行犯じゃないの!」
「いや……これアリサがそういうシチュが好きだってんで……どっちかっていうと俺が付き合ってるんだよ……」
アリサを見ると、目を斜め上に向けてそっぽを向いている。
恥ずかしいのか顔を真っ赤に染めていて、嫌がっている様子がない所を見ると、どうやらその通りなのだろう。
「はぁ……知りたくもないあんた達の性癖知っちゃったわ……まじ勘弁して……」
美乃梨はそのままどこかへ去ってしまった。
「だからいったろアリサ。外はまだ早いっていったんだよ……」
「移住もまだだし、今なら好き放題かなって思ったのに……残念ね」
「まさか美乃梨が乱入してくるとは思わなかったぜ。ちと見られたくない相手に見られちまったな」
「そうね……明日ちょっと顔合わせにくいね」
「んで……どうする? 宿戻って続きやるか?」
「ん……外で出来るエッチな事でばれないのって何かないかな?」
「露出……とかか?」
「それ速攻ばれると思う」
「コートだけ着るってのはどうだ?」
「それ……いいかも。ちょっと興奮してきた」
「アリサって結構変態だよな」
「普通よ、普通」
中を全部脱いでコートだけ羽織るアリサ。
裁縫店で買った太もも辺りまで隠れる茶色のコートだ。
ファーがついていて、内側もふわふわな生地がついていて暖かい。
しかしコートを着るほど寒いわけではない。
むしろこの時期にコートを着ているのは不自然だ。
そんな恰好で出歩いてはいるが、街を歩いていても誰とも出くわさない。
「誰も……いないね」
「だなぁ」
「ちょっとがっかり」
「見られたいのかよ。見る人が見たら速攻ばれんぞ?」
「そこはそれ。絶妙なとこがいいのよ」
すると見かけたことのある少女が歩いているのを目撃する。
銀髪の長い髪を両サイドで束ねているエルフ耳の少女の南ともだ。
ともは二人を見つけると、二人へと向きを変えて近づいてきた。
「やあお若いお二人さん。んん……? ほほぉ……主らも儂と同志じゃったかい。ふっふっふ」
ともはアリサと同じ大き目のコートを羽織っていて、コートの下からはすらっとした細い素足が見えている。
「こんにちは。ともさんでしたっけ。同志って?」
「ほっほっほ。とぼけんでもいいわい。儂にはお見通しじゃて。くっくっく……」
ともはアリサを上から下までじっくりと眺めながらにやけている。
そんなアリサはニナに小さな声で囁く。
「ばれてるかも。しかもともさんも……かも」
「同志っていってたからこの人も……?」
二人はゴクリと喉を鳴らしてともさんの姿を凝視する。
喋り方こそ年寄り言葉だが、見た目はとても可愛らしい少女だ。
そんな少女が素っ裸にコートだけ羽織って街を出歩いていると想像しただけで興奮してしまうのだ。
「内側の生地がふわっふわでの、この肌触りが何とも言えんのじゃ……ぬくぬくとしていて……」
ともは両腕でコートを着た自分の体を自分で抱きしめて、腰をくねらせて悶えた表情を見せる。
「外より中の方が気持ちいいのじゃ……中があったかいのじゃ!」
そういうとコートの前のボタンを外し、コートの裏側の生地をニナに見せつける。
ちなみにともはコートの下にきちんと服を着ていた。
「ほれ、このふわっふわな生地見てみい! 少しだけなら触ってもええぞ? ほれ、ほれ遠慮するでない」
「ほれ」と胸を突き出すとも。しかしニナは裏生地よりもその突き出された胸に目が行ってしまう。
恐る恐るとものコートの裏生地へと手を伸ばすニナ。
「なんじゃかその手を見ておると、おっぱい触られそうな変な気持ちがするのじゃ」
その言葉でぴくりとニナの手が跳ねる。
「ふわふわしてて柔らかくて気持ちがいいのじゃ。触りたいのじゃろう? 触ってもいいのじゃぞ?」
ともは体を前後に震わせ、それに合わせてともの胸も揺れている。
目は完全にともの胸に目を奪われながらも、手は胸元の裏生地を触るニナ。
「どうじゃニナ。裁縫屋のファーコートいいじゃろ? お主も買って同志になるのじゃ。ファーコート友達になるのじゃ!」
ともの胸をガン見しながら返事をするニナ。
「最高ですね! お……私も買っちゃおうかな、あはは」
「うむうむ! 買ったら儂等三人で街を練り歩くのじゃ! ナンパされまくりじゃな!」
しばらくそんな会話をした後、ともはどこかへ去っていった。
「ふぅ……ともさん可愛かったなぁ……」
「そうね、おっぱいも大きかったしね」
「だなぁ……」
「ニナってばともさんのおっぱいガン見してたでしょ」
「うへ、ばれた?」
「うん、ばればれ。多分ともさんも気が付いてたよ」
「まじか!」
街を歩いていると、今度は萌生がいた。
ちょうど道具屋から出てきた所だった。
「お、萌生ちゃん。おっす!」
「こんにちは萌生ちゃん」
二人に気が付いた萌生はてくてくと小走りに二人へと駆け寄ってきた。
「こんにちは、ニナさんとアリサさん!」
「今日も可愛いね、萌生ちゃん。買い物?」
「うん、ロープを買いに来たの。ボクを縛ってもらうんだ」
「へ?」
二人は驚いて萌生を眺める。
「ほら、レースの商品でエアーブレスレットもらったでしょ? 空中での操作がまだわからなくて、ロープで縛ってもらわないと降りられないの」
「なるほどね! だよね、うん。」
ふうと息を吐き、落ち着きを取り戻す二人。
「アリサさんのコートふわふわしてて気持ちよさそう」
萌生は目を輝かせながらアリサのコートを眺めている。
「触ってみてもいいぞ?」
「え!? ニナ勝手に……」
ニナはアリサの背中をぽんと押すと、アリサは萌生の目の前に出てしまった。
「もふもふだぁ……」
キラキラした瞳でアリサを見つめる萌生。
「もう……いいわよ。どうぞ」
そういうとアリサは萌生が触りやすいようにしゃがみ込む。
すると、両手を広げてがばっとアリサに抱きつく萌生。
「もふもふだー! 気持ちいい―!」
ファーに顔を埋めて気持ちよさそうにはしゃぐ萌生。
「萌生ちゃんも私と同じ格好……する?」
「うん! ボクも同じ格好する!」
「私と同じ格好で街を……歩いてみる?」
「うん! ボクも歩きたい!」
「私と一緒に……気持ちいい事したい?」
「うん! 気持ちいい事したい!」
アリサは萌生を抱きしめて頭を撫でているその姿は、一見するとほのぼのとした姿に見える。
しかし、ニナはアリサの興奮している表情を見逃さない。
「じゃあ萌生ちゃん、俺も一緒に三人でやるかい?」
「うん! 三人でやろー!」
「萌生ちゃんが真ん中な」
「うん! ボクがまんなかー!」
「じゃあお姉さんたちについておいで。いい物買ってあげる」
「わーい!」
ニナとアリサに挟まれ、萌生は二人と手を繋いで歩いて行った。
「萌生ちゃんが純粋すぎて辛いわ~」
三人は裁縫屋へと向かい、ニナは自分用と萌生用の二着のファーコートを買って萌生にプレゼントしてあげた。
「ありがとう! 大事に着るね!」
二人は萌生と別れて宿屋に戻った。
「今日はすごく興奮しちゃったわ」
アリサはコートを脱いでベッドに腰かける。
「俺もなんだか今日はやけにムラムラしちゃったよ」
ニナもアリサの隣に腰かける。
「ニナで発散させてよね」
「いいけど俺もアリサで発散するからな?」
「うふふ……みんなには内緒よ?」
「わかってるさ。こんなこと誰にも言えないし」
誰にも言えない二人だけの秘密があるんです。
元男友達の二人が、美少女になってしまったら。
その友情はいったいどう変わってしまうのだろう。
恋愛? 友情? ううん、これはきっと違う別の物。
その二人の行き先は、二人だけのひ・み・つ。
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