第21話 姉ちゃんのアヒルさんがこっちに来ちゃう。だめ! こないでぇ!
夜になり、あたしと萌生はお決まりの一緒の宿に入った。
なんだかんだ言いながらも、結局一緒の部屋に泊まるんだもの。
萌生はあたしの言いなりだから、簡単簡単。
中に入ると、二人はベッドに腰かけ一息ついた。
「萌生はリオのことどう思う?」
あたしと萌生の邪魔になる可能性があるリオ。
今のうちに萌生がどう思っているかを確認しておかなくちゃ。
「リオさん? なんか一生懸命やってくれていい人っぽいよね。防具もすごい色々考えて作ってくれたみたいだし」
「そういうんじゃなくてさ……ほら、可愛いとか、彼女にしたいとか。そういう感情はないの?」
さて、ここでどういう表情をするかで萌生がどう思ってるかわかる。
どうせこの後は適当に言葉を並べるだけで、そこには本性は入っていない。
萌生のことなら何でもわかるから。
「え!? リ、リオさん? ま、まだ知り合ったばかりだし、そんなこと考えるわけないよ!」
ふむふむ。驚き度50ポイント。照れ度30ポイント。落ち着きのなさ60ポイント。
意識してない……てわけじゃないわね。
でも危険人物なのは間違いないわ。
ならあたしはここでリオを上塗りする行動を取らなければいけない。
あたしはお尻をずらして、横に座る萌生へとぴったりくっつく距離にまで詰めてみる。
「本当にぃ~?」
胸を萌生の腕に押し付け、耳元で小さく色っぽく囁いてみる。
萌生は体を離そうとあたしとは逆方向に体を傾けるが、座る位置をずらそうとはしない。
いつもの通り、顔を赤らめて下を向いている。
どうせ目だけであたしを見るんでしょ?
見てない振りしているつもりなんでしょうけど……ほら、やっぱり。
あたしは毎回気が付いてるのよ。うふふ。
もう一押ししたいところだけど、それをすると萌生は逃げる。
だから、わざとここでこのままを維持。
そうすればきっと……やっぱりね。
腕を微妙に動かして、あたしの胸の感触を味わいたいんでしょ?
腕だけ動かしたら不自然だから、体ごと動かすのよね。わかってるわかってる。いつもの萌生よね。
どう? あたしの感触は?
女の子になっても、まだまだ通用しそうね。
心まで女の子になっちゃったらこういった手も効かなくなっちゃうから、あまり男を近づけたくはないわね。
カルナインも最近、萌生の事チラ見し始めてきてるし。
あのマイクとかいうやつも萌生にちょっかい出してきてるし。
意外だったのは坂城のやつよ! なんなのあのポスターは!
まさかあのおっさんまで萌生に欲情してるなんて思わなかったわ。
あそこまで売り上げだしてなかったら、絶対追い払っていたのに。
おまけに知識も持ってるから、下手に無碍にもできないし。
あーまったくもう! イラつくわ!
萌生はあたしだけのものなのに!
みんなしてあたしの萌生を性欲の目で見てる。
でも、絶対萌生は誰にも渡さないから!
萌生はあたしだけ見てればいいのよ!
ほんと面倒! 全部放り投げて、萌生とずっと一緒にいたい。
一気に萌生を押し倒す。
萌生に覆い被さり、両手を掴んで頭の上で拘束する。
「ね、姉ちゃん!?」
両腕を掴まれて、体をくねらせてもがく萌生。
「こんなに小さな女の子になっちゃったから、前より抵抗する力無くなってるみたいね」
「うう~……離してよぉ」
可愛らしく怯える萌生の顔。
これからあたしにいじられるのがわかってるって顔ね。
怯えながらも期待しちゃってるんでしょ?
ほんと可愛いわ……。
あたしは萌生のほっぺをペロリと舐め、そのまま耳の裏まで舌を這わせる。
「ひゃあ! 姉ちゃんやめてぇ~」
萌生の上にしっかりとまたがり、太ももで萌生のお腹を締め付ける。
「こんな小さな体になっちゃって……強く締め付けたら壊れちゃいそうね……うふふ」
腰を前後に動かし、あたしの体の感触を萌生に覚え込ませる。
「や、やめて姉ちゃん! そんなことしないで! ダメだってばぁ!」
萌生は我慢が出来なくなったのか、足をばたつかせて暴れ始めた。
この辺がまだ限界なのね。
全然前に進まないわぁ……はぁ。
あたしは萌生を解放してあげた。
「ボク、お風呂入ってくるから!」
慌てて備え付けのお風呂へと駆けこむ萌生。
萌生が中に入って扉を閉める直前、あたしはその扉を開ける。
鍵なんか掛けさせない。
「あたしも一緒に入る」
「何で入ってくるの姉ちゃん!? 出てってよー!」
あたしを追い出そうとするけれども、そんな力じゃ全然足りないわよ。
萌生を強引に脱衣所からお風呂場へと押し込み、あたしは衣服を全て脱ぐ。
「きゃああ!」
何故か萌生の方が悲鳴を上げる。
「ほら、萌生もぬぎぬぎしましょーね~」
萌生の腕を掴み、無理やりぐるっとまわさせインベントリ画面を開かせる。
「ちょ、何するの姉ちゃん! や、やめてよぉ!」
萌生の人差し指を掴んで、画面を操作する。
無理やり衣服を『装備解除』させ、全裸になる萌生。
裸の萌生を抱え込んで一緒に湯船に入り込む。
「もお……姉ちゃん強引すぎるよぉ……」
湯船で向かい合って入る二人。
ぶつぶつ文句を言いながらも、あたしの言う事を聞く萌生。ほんと可愛い。
あたしはくるりと指を動かして、昼間買ったおもちゃを取り出す。
「ぽちゃん」と音を立ててお湯に浮かぶのはアヒルのおもちゃ。
揺れる水面にそってアヒルもゆらゆらと揺れている。
「懐かしいでしょ、これ。道具屋に売ってたの。これでまたあれやりましょ」
「息吹きかけて相手の方にアヒル移動させた方が勝ちってやつ?」
「そそ。負けた方が勝った方の言う事一つ何でも聞くこと! いい?」
「やだよー……ボクこれ勝ったことないんだもん……」
「はい、開始3秒前~さーん、にー、い~ち……スタート!」
強引にゲームを開始する。
開始と同時に萌生は「ふう」と息を吹きかけてアヒルを動かす。
あたしの方にゆっくりと移動してくるアヒル。
でもあたしはまったく動じない。
何故なら、萌生はこのゲームに絶対勝てないのをあたしは知っているからだ。
あたしも軽く「ふう」とアヒルに息をかけ、こっちに移動してくる速度を遅くさせる。
しかし、徐々にアヒルはあたしの胸のそばまで近づいてきていた。
そろそろかな。
このゲームのミソは、萌生の視線とアヒルとあたしの胸の位置で決まる。
嫌でも萌生はあたしの胸が視界に入ってしまうのだ。
ほら、萌生の目が挙動不審な動きを始めたわ。
ここらであたしの『真の攻撃』をしておこうかしら。
「あぁん……萌生の息があたしのおっぱいにあたってる」
「え!?」
ほら、顔を背けて目だけであたしを見ようとして、すぐ目を逸らしてる。
今の内にあたしは「ふう」っとアヒルを萌生へと移動させる。
「姉ちゃんのアヒルさんがこっちに来ちゃう。だめ! こないでぇ!」
必死に押し戻そうとするが、まっすぐ見れない萌生。
そのため、吹き付ける息もアヒルを反れてしまっていた。
「あんっ」
アヒルが萌生のちっちゃな胸の乳首にぶつかり、萌生が小さく喘ぎ声をあげた。
「はい、あたしのかち~」
こうしてあたしの勝利となり、萌生を好きに扱える権利を得た。
その夜、あたしは萌生を縛って身動き取れないようにして、一晩中あたしの抱き枕にしたのであった。
「面倒な事すべて忘れて……いつまでも萌生と一緒にいたいなぁ……」
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