第26話 3回くらいじゃボクはまいらないよ。どんどんいかせてください

「いやぁ、ともさんって言うのかい! こりゃまたえらい可愛らしい子じゃないか! いやあ、是非こちらこそよろしく頼むよ!」


 手を差し出すマイクさんに、快く握手を応じるともさん。


「あ、そうだ。よかったらボク達の街に来ませんか? モエノースっていって、姉ちゃんが今日作ったばかりの街なんです」

「さっき広場で話してた例の街かい。ふむ、お主はそこの関係者なのか。よかろう、一目見てみようかの。な、マイク。お主もいくじゃろ?」


 ともさんに言われてマイクも笑顔で頷く。


「もちろん! ともさんがいくなら俺もいくぜ! 萌生ちゃんもいるし、リテアちゃんもいるからな! いやあ……やっと俺の物語が始まったか……長かったなぁ……」


 こうしてボク達はマイクさんと青髪の少女リテアさんと自称銀髪エルフの南ともさんの四人で一緒にモエノースへと戻ってきた。


 街へと戻ってみると、大量の人が集まっていた。

 どうやら坂城さんが移住希望者の説明を行っているようだ。


 ボクは集団の中に、エレットさん達がいるのを見つけた。


「よかった……エレットさん達も来てくれたんだ」


 ボクの言葉に反応したマイクさんもエレットさんを眺めていた。


「よーし! 俺もこの街に移住するぞ!」

「ボクも今日のことを姉ちゃんにちゃんと言っておくね。マイクさんがこの街に移住できるように」

「おお! 萌生ちゃん! さすが我が最愛の天使!」

「リテアさんとともさんも一緒に移住しようよ。なんかね、人間とNPCが仲良く暮らせる街を目指すんだって」


 ボクの言葉にともさんもリテアさんも頷いてくれた。


「ところでリテアよ。何故お主は男共にあのような事をされておったのじゃ? 何か原因に心当たりはないのかい?」


 ともさんがリテアさんに容赦のない質問をぶつける。


「嫌なことかもしれんがな、初めだからこそ聞かねばならんこともある。もしかしたら儂らなら解決できることかもしれんしの」


 なるほど。何か事情があるなら最初に言っておいた方がいいのかもしれない。


「実は……私の職業がビーストテイマーだというのが問題なんです。ビーストテイマーは自分の代わりに捕獲したペットで戦闘を行います。

でも、実は私まだ何も捕獲できていないんです。そのせいで、私は何もできずに……」

「なるほどのう。誰も捕獲を手伝ったりはしてくれんかったのかい?」

「はい。この辺の魔物を捕まえてもどうせ弱いだろうという理由で……」

「ふむ……じゃが何もいないよりはましではないのか?」

「実は……捕獲用のアイテムが非常に高価でして……安易には使用できなかったんです」

「ちなみに一ついくらなんじゃ?」

「一つで1万Gです」


 確かに初期金額5万Gで、一つ1万Gはかなり高価な買い物になる。

 これからいくら手に入るのかわからない時期に1万Gの買い物は確かに躊躇してしまってもおかしくない。


「リテアさん、最初の1個はボクがプレゼントするよ!」


 ボクは既に何度も依頼を達成し、お金は十分持っていた。

 更には姉ちゃんがポーションの売り上げで稼いだお金もあって、モデル代という名目でお小遣いも多少もらっていたのだ。


「そんな! いくらなんでも受け取れません。助けていただいただけでも感謝しないといけないのに……私なんか何の役にも立ちませんし」

「ならばどうじゃ? 儂ら四人でパーティーを組んでみんか? そうすればその出費はパーティー全体の利益になるじゃろ?

儂も冒険に憧れておっての。儂はRPGやオンラインゲームというゲームが大好きでの、捕まえたニワトリでドラゴンを倒そうと必死に育成したことがあるんじゃ!

残念ながら育成途中で死んでしまったがの。魔法使いなのに剣で戦ってみたり、初期職で転職せずにレベルをあげたりの。

そんなんじゃから誰からもパーティーに誘われずに一人でたまり場にぽつんと座っておった経験もあるのじゃよ。じゃからお主みたいなのを放ってはおけんのじゃ。

見よ! この体を。こんなにか弱い美少女エルフが神官なのに剣を持って前衛で戦おうとしておるのじゃ!

神官なのに攻撃力極振りじゃぞ!? こんなか弱い美少女が前衛に出て敵にぼこぼこにされるのじゃ。たぎるじゃろ!?」


 途中からだんだんおかしな方向になっていったような気がするけど、ともさんはリテアさんを励まそうとしているのは伝わったような気がする。たぶん。


「と、ともちゃんが前衛に出るかどうかは別として……俺様がいるから大丈夫さ。俺様はきちんとした戦士だからな。か弱いお嬢ちゃん達は俺が守ってやるよ」


 ともさんはそんなマイクさんを見て、目を輝かしていた。


「おお……儂がお嬢ちゃん? 儂を守るとな……? これが……美少女になるということなのか……これはまたたまらんのう。何とも言えん甘い心地がするのう」


 ともさんは何やら一人でぶつぶつ言っていた。


「でも、そうはいっても何をテイムするかは結構重要ですよね。せいぜい狼か大ねずみかスライム……それか小動物くらいしか周辺にはいませんし」


 突然マイクさんが手をパチンと鳴らした。


「おおそうだ! 実は冒険者仲間から噂を聞いていたんだ。ユニークモンスターの話を!」

「ユニークモンスターじゃと?」

「ああ。狼を沸き待ちで大量に狩ってた冒険者が、突然白い大きな狼が沸いたそうだ。恐らく定点狩してたせいでユニークモンスターが沸いたんじゃないかって噂だ」


 その話を聞いたリテアさんの表情が明るくなった。


「みなさんがよろしければ、白い狼をテイムさせてもらえませんか?」


 全員が頷き、話がまとまったようだ。


「あ、その前にボク魔法使いに転職してもいいですか? あとついでに冒険者ギルドで依頼も受けたいです」


 ボク達はさっそくモエノースにできた冒険者ギルド支部へと行ってみることにした。

 転職関連も全て冒険者ギルドで行っているし依頼も受けられるのでちょうどいい。

 それにテイム用のアイテムもここで販売されていた。


 テイム用のアイテムは手のひらに収まる程度の小さな丸いカプセルだった。

 なんでもテイムが成功すると、このカプセルに入れて持ち運ぶことが出来るそうだ。

 ボクはカプセルをリテアさんに渡し、さっそく狼討伐依頼を受注した。


「白い狼をゲットするぞ~!」


 こうしてボク達はマイクさんの案内の元、白い狼が目撃された地点に向かった。

 場所はモエノースの南西で、フルムーンのすぐ西側にある林の地帯だった。

 ボク達もこの近くで以前狼を討伐した事もあった。


「可能性は二種類。倒した後に時間差で沸くモンスターが、ランダムでユニークモンスターになる可能性があるのと、もう一つはここで一定条件下で沸くかどっちかだ。

注意点はたまに狼のワンランク上の『ブラウンウルフ』がランダムで沸く点だ。ただし、こいつはお宝情報がある。ドロップでステータスアップの指輪が落ちるそうだぜ」


 すごい。そんな情報まで出回っていたんだ。

 マイクさんを見ていると、横の繋がりがいかに大事だって痛感してしまう。


「白い狼が沸くまで相当な数の狼やブラウンウルフを倒すことになるだろうから、指輪のドロップも期待できそうだぜ」


 マイクさんがとても頼もしく見えてしまう。

 姉ちゃんはマイクさんを毛嫌いしていたようだけど、ボクにはとても頼りになる男の人に見えてしまう。


「魔法系の指輪が出たら萌生ちゃんにあげるからね」


 マイクさんはそんなことをボクに言ってくれた。

 嬉しいなぁ。やっぱりマイクさんはいい人だとボクは思うな。 

 戦士系の指輪が出たら、姉ちゃんとカルナインさんにあげようっと。


 そしてボクらは林の中の少し広めな空き地がある場所へと辿り着いた。

 そこは周囲とは少し違和感がある場所で、崩れ落ちた廃墟が存在していた。

 周囲には見られない地形オブジェクトの存在は、いかにもここに何かありますと伝えているかのように思えてしまった。

 

「注意しろ! いるぞ!」


 マイクさんの掛け声で全員が武器を持って構える。

 何故か身の丈ほどもある大きい剣を両手に持ち、今にも突撃したくてそわそわしているともさん。

 短剣を片手に周囲を警戒するリテアさん。

 ボクは杖を取り出し、先程覚えたばかりのファイアーボルトをいつでも詠唱できる準備をする。


 マイクさんが最初に走り出し、狼へ向かって挑発スキルを使った。

 木々や廃墟に隠れていた5匹の狼が一斉にマイクさんへと襲い掛かった。

 マイクさんはボクと狼との射線を塞がないように横へと回り込んでくれていた。

 戦いなれている感じがする。


「ファイアーボルト!」


 ボクはさっそく魔法を使ってみた。

 初めて使う攻撃魔法だ。

 ボクの杖の先端に30センチメートル程の炎の球体が現れ、ボクの視点の中心目がけて炎が飛んでいく。

 

「キャウン」


 ボクの魔法一発で狼を倒すことが出来たのを確認する。

 ボクが初めて倒した敵だ。


「ボクだってやれるんだ!」


 すかさぐ二発目の準備を行う。


「いくぞい!」


 ともさんが剣を振りかぶって狼に突撃していった。

 マイクさんへと襲い掛かっている狼を横から切り伏せるともさん。

 重そうに振りかぶり、大上段からジャンプしながら大剣を振り下ろす。

 どすんと大きな音がなり、見事一撃で狼を倒した。

 振りかぶって剣を振り下ろす勢いで、ともさんの両足は後ろへと跳ねていて、とても可愛らしい攻撃の仕方だった。

 少女が重い武器を一生懸命振り下ろして戦うといった印象だ。

 スカートがひらりと舞って、ともさんのピンクの下着が露わになっていた。


 年寄り言葉を使う割には、随分と可愛らしい下着を履いているんだね。


 リテアさんは周囲を警戒し、新たに敵が襲ってこないか確認しているようだった。


「ファイアーボルト!」


 またしてもボクの魔法で狼が倒れる。


「も一発! ファイアーボルト!」


 結局ボクが5匹中3匹倒すことができた。

 今までのボクでは考えられないような成果だ。


「ナイス魔法! 萌生ちゃん!」

「萌生さんすごいです」

「やるのお。ちびっこ」


 えへへ。みんなに褒められてすっごく嬉しい。

 姉ちゃんのパーティーの時じゃ考えられないような成果だ。

 もしかして、ボクってすごいのかもしれない。

 もっとこのメンバーで狩がしたいって思ってしまう程だった。


「MPの残りは大丈夫か? 少し休憩しようか?」


 マイクさんがボクに確認をしてきた。

 今のボクは絶好調だ。

 MP極振りしてたおかげで残りもまだまだ沢山ある。

 何よりもっと戦っていたい。


「うん。3回くらいじゃボクはまいらないよ。どんどんいかせてください」


 この人達となら、ボクは主役になれるかも!

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