第27話 あん……ひっぱらないでぇ……食い込むからぁ!
しばらく狼を倒し続けていると、一回り大きめなブラウン狼が現れた。
「こいつがブラウンウルフだ。今までの狼より少し強いが、落ち着いてやれば問題ない。ともちゃん、わりいが回復に専念してくれ」
「了解した!」
マイクさんがブラウンウルフに挑発を入れ、自分にターゲットを向けさせる。
ブラウンウルフがマイクさんに飛びかかり、大きく口を開け鋭い牙で噛み付こうとする。
マイクさんは剣をブラウンウルフの口目がけて振るう。
ブラウンウルフは剣へと噛み付き、その威力を止める。
お互い力と力で押し合い、均衡した状態になる。
「今だ、萌生ちゃん魔法頼む!」
「わかりました!」
ボクはすかさず杖をブラウンウルフへと向け、魔法を放つ。
「ファイアーボルト!」
放たれた炎がブラウンウルフへと襲い掛かる。
轟音と共にブラウンウルフが吹き飛んだ。
「おりゃー!」
倒れたブラウンウルフにマイクさんが止めをさした。
魔法極振りしているボクの魔法でも一撃で仕留めることはできなかった。
「これよりホワイトウルフは強いのか……」
丸焦げになっているブラウンウルフが光の粒となって消えてゆく。
「お! 指輪出たぞ!」
マイクさんが喜びの声を上げ、さっそくどんな指輪なのか確認をした。
「ほほう。魔法+2の効果付きだ。まあまあだな。ほら、萌生ちゃん。あんたにやるよ」
そういうとマイクさんはボクの前まで歩いてきて、目の前で片膝をついた。
「さあ、指をだして」
マイクさんはボクの手を取ると、薬指に指輪をはめてくれた。
「俺からの気持ちを受け取ってくれ」
「ありがとうございます! ボク嬉しいです!」
魔法の威力がもっと上がる指輪なんだもの。
とっても嬉しいよね。
「おお、俺の気持ちを受け入れてくれるのか! 萌生ちゃん、俺も嬉しいぜ!」
いい物をプレゼントしてくれたのに、マイクさんの方が嬉しいだなんて。
きっといい人なんだろうな。
「いいのう。儂も攻撃力があがる指輪が欲しいのう」
「ああ、攻撃の指輪が出たらともちゃんにプレゼントしよう。だがみんな順番にだな。
何のステータスの指輪が出るかはランダムだからな。あと数値は聞いた話だと+1から+3までランダムらしい」
「+3の指輪を両手全ての指にはめれば、+30も増えるね! これは頑張って集めるしかないね」
みんな期待で目が輝いていた。
こうして休憩を取りながら連戦を続け、3時間ほど戦闘を行っていた。
ボクのレベルは魔法使いに転職したばかりなのに、既に18まであがっていた。
ともさんも同じく18まであがっていて、マイクさんは25、リテアさんは20になっていた。
指輪もボクだけで5個も入手して魔法は+9になっていた。
「ともさん、もう強化魔法のプロテクションが使えるはずだよ!」
「ほほう」と自分のスキル画面を確認するともさん。
「プロテクション!」
そういうとともさんは防御力がアップする魔法を全員にかけてくれた。
ボクも使える魔法だけど、MP温存のためにともさんにかけてもらうことにした。
ボクもちょうど別の魔法を覚えた所だった。
ファイアーブラストという魔法で、狭い範囲だけど範囲攻撃が出来る魔法だった。
するとその時、急に大量の狼が一斉に湧き出した。
そしてその狼たちは「ウオー」と一斉に雄叫びをあげはじめ、狼の群れの中から大きな白い狼が現れた。
「ついに来たか! しかし数が多いな……まずは数を減らすぞ!」
マイクさんが飛び出し挑発を行う。
10匹以上の狼が一斉にマイクさんへと飛びかかっていった。
マイクさんは剣を横なぎに振り、飛びかかる狼2匹をまとめて倒す。
しかし、残りの狼はマイクさんへと牙を立て、腕や足へと噛み付いた。
「どっせーい!」
ともさんがマイクさんに群がる狼へとジャンプして飛びかかる。
その勢いと共に両手剣の一撃を加え、その威力で数匹の狼が宙へと舞った。
ともさんのスカートも一緒にひらりと舞う。
もちろんボクは見ていない。ピンクの下着なんか決して見てはいない。
「ファアーブラスト!」
ボクも負けじと魔法で狼の群れを焼き払う。
「やー!」
リテアさんもマイクさんに噛み付いている狼を短剣で刺して応戦する。
ボク達はレベルもあがっていたので普通の狼程度なら楽に倒せるようになっていた。
しかし、その時一段と大きな雄叫びをあげ、ホワイトウルフが動き出した。
物凄い早さで走り出し、マイクさんへと体当たりを行った。
その勢いでマイクさんが吹き飛ばされる。
そしてホワイトウルフは円状に高速移動を行い、ボク達全員へと体当たりをしてきた。
ボクらは吹き飛ばされてしまい、一撃で体力の三分の一も減らされてしまっていた。
「まずい、予想以上だ! お前達は逃げろ! こいつは倒せねー」
マイクさんがホワイトウルフへと挑発を再び行い、ボクらとは逆方向へと駆けだした。
「マイクだけに背負わせはせんよ!」
起き上がり剣を構えて飛びかかろうとするともさんをボクは制止する。
「ともさん、まずは全員の回復を優先しよう! ボクも手伝うから」
そういうとボクとともさんは全員にヒールをかけて体力を回復させた。
その間もマイクさんはどんどんとボクらから離れ、ホワイトウルフを引き付けて遠くへ行ってしまった。
「マイクさんを追おう!」
少し離れた場所でマイクさんを発見するが、地面に倒れていてかなりまずい状況だ。
「ほれヒールじゃ!」
ともさんがマイクさんへと回復魔法を使う。
そしてボクはホワイトウルフへと魔法を放つ。
ホワイトウルフはボクへとターゲットを変えて、ボクの方に向かってきた。
その隙にリテアさんがマイクさんへと駆け寄り回復ポーションを使う。
ボクはホワイトウルフを引き付け、マイクさん達から引き離した。
しかし、ホワイトウルフの足は速く、ボクの逃げる速度ではすぐ追いつかれてしまう。
「うまくいって!」
ボクはインベントリ画面を操作し、空中飛行レースでもらったエアーブレスレットを装備する。
その瞬間ボクの体は宙へと浮かび上がり、ちょうどタイミングよく攻撃してきたホワイトウルフの一撃を回避した。
「ここならずっとボクのターンだ!」
ボクは地上で攻撃しようと飛び跳ねているホワイトウルフへと狙いを定める。
「ファイアーボルト! ファイアーボルト! ファイアーボルト! ファイアー……」
空中からファイアーボルトを連発してホワイトウルフを狙い撃ちした。
一方的な攻撃を受け続け、ついに体力がなくなったホワイトウルフはその場に倒れ込んだ。
「やったー! リテアさん! 今のうちにテイムして!」
瀕死のホワイトウルフへとリテアさんが駆け寄り、テイムが完了するとホワイトウルフはカプセルの中に消えていった。
「やりました! テイム成功です!」
笑顔のリテアさんに駆け寄ってきたみんなも一緒になって喜んでいた。
「あのね、実は……ボクこれどうやったら降りられるかわからないんだ……」
宙に浮いたままのボクを見上げるみんなの視線。
ボクは手足を振って動こうともがいてみるけど、一向に降りられる気配はない。
「おお……萌生ちゃんのパンツが丸見えだ……」
マイクさんが何か言ってるけど、よく聞こえない。
ボクの真下に来て必死にボクを見つめているから、きっとボクを心配してくれているんだろう。
「儂がちょうどよい物を持っておるから、つこうてみるかの」
そういうとともさんは荒縄を取り出し、輪っか状に結んでボクへと投げてくれた。
見事ボクの体に輪っかがひっかかり、ともさんはぐいっと縄を引っ張った。
縄を掴んで降ろしてもらい、ボクはやっと地面に降りることが出来た。
「次からは萌生を縛ってから飛ばんといけんの。なあに、縛るのも縛られるのも得意じゃからまかせとき」
そういうとともさんはボクを縛り上げてしまった。
「ほれ、これが亀甲縛りじゃ。ここをこうひっぱると、全身が縛られる感触が味わえて何とも言えんのじゃ。いくらもがいても逃げ出せん。完全になすが儘にされる人形に早変わりじゃ」
ボクは訳が分からないまま縛り上げられ、各所に食い込む縄の感触を体に感じていた。
「んっ……と、ともさん!? んくぅ……解いてください! あん……ひっぱらないでぇ……食い込むからぁ!」
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