かしましテスト勉強会
もうすぐ夏休み前の期末テストだ。
「テストなんてなくなればいいのに」
私がそう
「セイラのそれ、毎月聞いてる気がするわ」
「毎月は言ってないもん」
「この前も宿題なんてなくなればいいのにって言ってたでしょう?」
「宿題とテストは違うもん」
「ならどっちかだけならやる?」
「どっちもヤダ~」
「駄々こねてないで早く勉強しなさい」
「ヤダ~」
私がテーブルの下で足をバタバタさせると、話を聞いていたサキがクスクスと笑う。
「おふたりとも、相変わらず仲がいいですね」
今日はウチのリビングで、三人一緒の勉強会。
サキは私が誘ったのだけど、よくよく考えたら彼女もお姉ちゃんと同じ優等生組。
三人の中で私だけテストにヒィヒィ言っていることが分かり、絶賛ふて
「大体さー、数学とか古典とか何で勉強するわけ? いらなくない?」
「そういうことはやったあとで言いなさい」
「だからやりたくないんだってー」
「
「ブー」
私が唇を尖らせても、お姉ちゃんツーンとしている。
そうしている間も問題集を解く手は止まらないのだから、勉強マシーンかと心の中でツッコミを入れる。
「サキはどう思うー勉強ー?」
「ええと、勉強はいらないという話ですか?」
「そうそう」
「サキさん、妹の
「ちょっと雑談するくらいいいじゃーん」
「もう三十分は手が止まってるわよ」
「
「まだ始めてから一時間も経ってないけど?」
「えーんサキーお姉ちゃんが冷酷な勉強マシーンだよー」
私が泣きつくと、サキはあらあらと頭を
「でも、私も勉強はした方がいいと思いますよ?」
「えぇー、サキまでそんなこと言うのー」
「知らないことを知るのは大事ですし。それに」
「それに?」
「期末テストで赤点取ると夏休みに補講がありますよ」
「……」
私は無言でシャーペンを持ち直して問題集に向き直った。
けど、二十分くらいで再びダウン。
「うぅ~! 日本の義務教育は間違ってる~」
「世の中の勉強がしたくてもできない子供たちに謝りなさい」
「マジメか!」
お姉ちゃんってホントそういうの分かってくれないんだから!
「そりゃ勉強が大事ってことくらい私も分かってるよ!」
「じゃあ何が不満なの?」
「不満っていうかさ~、ほら、大事かどうかとは別にさ、単純にこうツラいというか、私には向いてないっていうか」
「ワガママ言ってないで早くしなさい」
「だからバッサリしすぎ!」
いい加減泣くぞこんにゃろう。
「……てかさ、赤点取ったからって補講って何なの? それ必要?」
「その愚痴、まだ続くの?」
わー、お姉ちゃん興味なさそー。
「そりゃ勉強できる人はいいですよねー、関係ないもん」
「世の中の」
「世の中の話はもう分かったって! お姉ちゃんさっきから何でそんな世界を意識してるの!?」
「そう言っておけば面倒がないかなって」
「打算かよ! っていうか面倒って! 面倒って!」
「……だってセイラの話に付き合っても、私の勉強は終わらないもの」
うわー正論ー。
「てか毎日あれだけ勉強してて、まだ勉強し足りないとことかあるの?」
「ないけど?」
「ないんかい!」
「ないけど、復習は大事よ」
「ぐえぇー」
正論で耳をタコ殴りにされてノックダウン寸前。
「あーもう! ユイたちと勉強会すればよかったー!」
「ユイさん勉強得意なの?」
「たぶん違うけどさー」
そうじゃなくて、きっとユイなら私の愚痴もうんうん頷いてくれたと思う。
「要するにね、お姉ちゃん! 私はもっとさ、中学生らしいっていうか、もっと意味ない愚痴とか言いながら和気藹々とした勉強会がしたいわけ!」
「……勉強会って勉強する会じゃないの?」
「そうだけど! そうじゃなくて! 伝わんないかなこのニュアンス!?」
私はウガーッと吼えていると、またサキがクスッと笑う。
「要するに、楽しくお勉強会したいってことですよね?」
「そう! サキ正解!」
私は思わずサキをビシッと指差して叫ぶ。
「私はお姉ちゃんみたいなマシーンじゃないんだから、黙々カリカリと問題集ばっかり解いてらんないの! 遊びと潤いが欲しいの! あとお菓子!」
ようやく言いたいことが言えた私は絶叫して立ち上がる。
「てなわけでコンビニ行こッ! コンビニでジュース買ってお菓子買って、あとついでに今日発売の雑誌も買おう!」
「……はあ、もう分かりました」
お姉ちゃんはやれやれといった感じで、ようやく問題集を閉じてくれる。
ああもう、やっとお姉ちゃんが分かってくれたよぉ。
まさか勉強会って言って、本当に集まってすぐ問題集解き始めるとは思わなかったし。
「お姉ちゃんがマジメだと妹も苦労するよ」
「逆じゃない?」
私のしみじみとした呟きに、お姉ちゃんは不満そうに首を傾げる。
まあそれはさておき、私たちはお財布を
「ところでお菓子はいいですけど、雑誌は買うのダメですからね」
「えぇ何でー!?」
「だってセイラ勉強そっちのけで読んじゃうでしょ」
「けど今週は夏特集なんだよ? 今年の夏服とか見たいじゃーん」
「おふたりは夏の予定とかあるんですか?」
「私はお父さんと夏のあばんちゅーるします」
「……って、お姉ちゃん絶対意味分かってないでしょ!」
そんなツッコミと雑談をしつつ、私たち三人はコンビニへ向かって歩き始めたのだった。
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