姉妹の休日(キララ編)その3
ここのビルは
アニメイト以外にもいろんなオタク向けショップが入っていて、フィギュアやカードショップなどもたくさんありました。
目的のアニメイトは5階です。
エレベーターを降りてすぐに入り口があって、そのままお父さんと一緒に入ります。
今日は日曜日というのもあって、私と同年代の男女も多く見られます。
中にはカップルっぽい方々も。
「~♪」
さっき下でカップルと言われたのを思い出して
両手に荷物がなければ、お父さんと腕を絡めたいところ。
けど
「キララ、くすぐったいんだけど?」
「ちょっと混んでるので、許してください」
実際、店内はとっても混んでました。
歩くのもちょっとずつしか進めないです。
そんな状態なので、目的の本棚の前まで来るのに何分もかかってしまいました。
並べられた本のタイトルをお父さんと一緒に眺めます。
と、見つけました。
「これですよね……。お父さんが最後に携わった本って」
「うん。そうだね」
お父さんが出版社を辞める前に作った最後の本。
「これ買ってきますね。並ぶと思いますから、お父さんは先に出てて貰っても」
「いや、僕が買ってくるよ。外にベンチがあるから、キララはそこで待ってて」
「じゃあお父さんの荷物も預かりますね」
私はお父さんの分の荷物も持って先に外に出ます。
よく考えたら、こんな大荷物持って混んでる店内に入ったのは周りに迷惑でした。反省です。
それから十五分ほどしてお父さんは出てきました。
手には本の入った袋……とポスター?
「フェアの対象商品だったみたい」
「ああ、なるほど」
私もあまり詳しくありませんが、販売促進のためにこういう特典もたくさんつくようです。
「売れてくれるといいですね」
「うん」
お父さんは
その目はなんて言うんでしょう……。
私たちに向けるものとは、また違いますが。
強いて言うなら、お父さんの愛情を感じます。
それはできあがった本に対してでしょうか?
それとも作家さん?
あるいは……辞めてしまったお仕事に対してでしょうか?
「さて、そろそろ帰ろうか」
「あ、はい」
お父さんに
帰りもバスに乗って、私たちは
まだ夕方には少し早いですが、そろそろ洗濯物を取り込まないとです。
お父さんもこのあとは夕飯の
「ニャー」
その時ふと
そちらを見ると、道路から寮へ続く砂利道の途中にのら猫がいました。
「猫だ」
「猫ですね」
「かわいいね」
「かわいいですね」
夏目家は全員猫大好きです。
飼えるなら飼いたいですが、前のアパートもペット禁止だったんですよね。
「……」
気がつけば、私もお父さんも猫が逃げないように立ち止まっています。
……この機会に、聞いてしまいましょうか。
先程のお父さんの顔を見てから、気になっていることを。
「お父さん」
「ん?」
「お父さんは前のお仕事を辞めたこと……後悔してますか?」
私もセイラも、お父さんがなぜ出版社を辞めたのか理由は聞かされていません。
でも、たぶん私たちのためだということは何となく分かっていました。
もし私たちの
「前の仕事は好きだったけど、辞めたことを後悔はしてないよ」
ふと荷物を下ろす音が聞こえて、次にお父さんの手が私の頭にやさしく載せられました。
「だって、大好きなキララやセイラと前よりずっと一緒にいられるからね」
「……!」
お父さんの言葉に、私は
ああ、お父さん……!
「お父さん、大好きです!」
「うん」
「今すぐ結婚しましょう!」
「うん……うん?」
お父さんは首を
構わず私はその首に抱きつきました。
この胸いっぱいにお父さんを感じます。
「やっぱり御夕飯も私がお手伝いします! 夫婦一緒にこの女子寮を切り盛りしていきましょう!」
「いやいやいやちょっと待って! ていうか静かにして!」
お父さんは慌てて私を引き剥がそうとします。
離しません!
絶対絶対離しません!
それこそ一生! ずっと! 一緒です!
「お父さん愛してます!」
「分かったから離して!」
気がついたらのら猫はどこか行ってしまっていました。
お父さんと結婚したら猫も飼いたいですね。
あとでセイラにもどんな猫がいいか聞いておきましょう。
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