姉妹冷戦ゲーム大戦
と言ってもまあ大体
まず私が注意して、セイラが反論して、というのがお決まりのパターンでしょうか。
時々、私が怒られたりもしますけど。
特に私がお父さんとくっついている時とか。
たぶん
セイラもお父さんが好きですから。
まあ、テレ隠しでお父さんに暴言を吐いたら私も怒りますけど。
というわけで、今朝もちょっとセイラと喧嘩してしまいました。
今日は日曜日なので学校もお休みです。
つまり妹と喧嘩をしても、一日中同じ部屋で顔を合わせるということで……。
「……」
セイラはすまほ片手に何かやってます。
何をやってるのかは詳しくないので分かりません。
私はどうにもその手の物が
ぱそこんの使い方もよく分かりませんし。
あのかぁそるというのが上手く動かせないんですよね。
まうす(?)で動かすらしいというのは分かるのですが……。
はいてくは難しいです。
家事で使う洗濯機や掃除機は使えるんですが。
っと、また話が脱線しました。
そうそう、妹と喧嘩中という話です。
セイラが朝食の準備ができてもベッドでグズグズしていたので、ちょっとそのことで叱って、喧嘩になりました。
お父さんの仲裁で収まりましたが、妹はまだへそを曲げています。
「……」
まあ、私もちょっと言いすぎましたけど。
乱れた生活を送っていると大きくなれないわよ、とか。
それを言ったらスゴく怒らせました。
あんなに怒るとは予想外でした。
そんなにこの前の身体測定の結果を気にしていたのでしょうか?
身長なんてすぐ伸びると思うのですが……。
ちょっとデリカシーが足りなかったでしょうか?
今回は私が怒らせてしまったので、早い内に仲直りしたいです。
今のままじゃ会話もできません。
冷戦です。
姉妹冷戦です。
東と西に分かれて水面下で核爆発が起きるか否かの
このままではいずれお父さんまで爆発に巻き込まれかねません。
それはいけません。
絶対いけません。
というか、お姉ちゃんがこんなにモジモジしてるんですから、ちょっとセイラこっち見て。
と、セイラがすまほをしまって立ち上がりました。
「どこ行くの?」
「……」
私が引き留めるように質問すると、セイラはム~っとした顔をします。
答えたくなさそうにしていましたが、やがてポツリと。
「隣のシリンさんの部屋」
「何しに行くの?」
「ゲームさせてもらいに」
「ゲームって、テレビゲーム?」
「そうだよ」
近頃たまにシリンさんのお部屋にお邪魔していると思っていたら、ゲームをしに行っていたんですね。
いつの間に仲よくなったんでしょう……?
むぅ。
喧嘩中な
「私もついて行っていい?」
「え? お姉ちゃんも?」
「ダメかしら?」
「ダメかどうかは知らないけど……まぁ、ついて来れば?」
セイラがそう言うので、私もソファから立ち上がってついていきます。
管理人室を出て、お隣の101号室へ。
「シリンさーん。いますかー?」
セイラがドアをノックして待つことしばし。
「セイラちゃ、あ、今日はお姉さんもいるんだ……」
「うん。なんかついてくるって言ってきて。一緒に入ってもいーい?」
「えっと、うん、大丈夫」
「いいって、お姉ちゃん」
「お邪魔します」
「どうぞ……」
シリンさんはやや緊張した面持ちで私の顔を見ていました。
やっぱり御迷惑だったでしょうか?
でも来てしまいましたし……。
なるべく邪魔にならないように心掛けましょう。
私は部屋の隅にちょこんと座る。
「えっと……」
「あ、お構いなく。後ろで見てますので」
「あ、そ、そう?」
「お姉ちゃんのことは気にしなくていいですよ」
セイラにもそう言われ、シリンさんはクエスチョンを頭の上に浮かべたまま
それからふたりは座布団や飲み物を用意したり、こんとろーらーの準備を始めたりしてから、ゲーム機のスイッチを入れました。
するととってもカラフルな画面が薄いテレビに映ります。
「『スマッシュシスターズ』?」
私は画面に出てきたタイトルをそのまま読みます。
よく分からないので小首を傾げていると、セイラが信じられないものを見る目で見てきました。
「お姉ちゃん知らないの? よくCMでもやってるじゃん」
「なんとなく聞き覚えは……どういうゲームなの?」
「CPUも含めて最大8人で対戦できる大乱闘ゲームだよ」
「大、乱闘……?」
私はなんとかイメージを思い浮かべます。
「……怖いゲーム?」
「ホラーじゃないよ」
「じゃあ痛そうなゲーム?」
「いや別に痛くはない……もう、見てれば分かるから」
セイラは質問を打ち切って、シリンさんと話し始めます。
どうやらゲームを始めるために、キャラクターというのを選ぶみたいですね。
やり慣れているのか、ふたりとも話しながら選択していきます。
その様子はとっても仲よしそうに見えます。
むぅ。
やっぱりモヤモヤです。モヤモヤ!
何です何です?
ふたりしてあんなに楽しそうにして。
お姉ちゃんとは今朝からロクに目も合わせてくれないのに!
大体、寝坊した妹を姉が叱るのは当然の義務です。
仮に私が言いすぎたにしても、セイラはセイラで反省して、和解案のひとつも提示してくるべきなのでは?
このままでは核戦争勃発です。
ここが
それでもいいんですかセイラ?
というか、もうちょっとお姉ちゃんに構って。
「……」
「……!」
と、そこでシリンさんと目が合ってしまいました。
ジッとふたりを見すぎていたようです。
「……キララちゃんもやってみる?」
ちょうど一ゲーム終わったところのようで、シリンさんは私にこんとろーらーを貸そうとしてくれます。
「えっと、でも……たぶん私ヘタですから」
「最初はみんなそうだから。それに、なんだかやりたそうだし」
「じゃあ、御言葉に甘えて」
私はシリンさんからこんとろーらーを受け取ります。
「シリンさん」
「何?」
「……これどう持つんですか?」
「え? そこから?」
私はシリンさんにこんとろーらーの持ち方、ついでに簡単なゲームの操作法を教わります。
「……」
その間セイラは暇そうにこんとろーらーをグリグリしてました。
しかもちょっと嫌そうに。
傷つきます!
こうなったら私も容赦しません……!
「シリンさん! 是非もっとこのゲームを詳しく教えてください!」
「え? 詳しくっていうか、操作法さえ分かればあとは自由なんだけど……」
「何でも構いませんので!」
「えっと、じゃあ……ストーリーの概要とか?」
どうもこの『スマッシュシスターズ』なるゲームは、キャラクター同士を操って戦わせるもののようです。
まるで古代ローマの剣闘士のようですね。
見た目はこんなにカワイイのに……。
でもこんなカワイイ顔して、キックやパンチや、あと何かよく分からないもので、スッパーンパッカーンと相手を吹っ飛ばすようです。
やっぱり怖いゲームです。
いちおうストーリーのような物もあるらしく、どうも『スマッシュシスターズ』は姉陣営と妹陣営に分かれて戦っているそうです。
「……なるほど」
まさに今の私たちの状態です。
好都合なことに、セイラが選んでいるのは妹キャラとのこと。
であれば、私は姉キャラを選ばないわけにはいきません。
このゲームに勝って、姉としての
そうすればきっとセイラも今朝からの態度を改め、また私をお姉ちゃんと
「さあセイラ! 勝負です!」
「……まあいいけど」
そして、姉妹のプライドを賭けた勝負が今、はじまりました――
――完敗です!
「なぜですか!」
「そりゃお姉ちゃんクソ弱だし」
「ぐぬぬぬ」
やはりはいてくは私にはダメでしたか。
全然キャラが思った通りに動いてくれませんでした。
それにあの、コマンド(?)というのがよく分かりません。
すてぃっくをはじくと言われても、なんかキャラがヨタヨタと前に歩いてしまいます。で、セイラ(のキャラ)に蹴られます。
パッカーンと私(のキャラ)はお星様になってしまいました。
「いやー、お姉ちゃんにも得手不得手ってのはあるんだねー」
セイラはいつの間にか上機嫌です。
とっても悔しい!
「このままでは姉としての威厳が~」
「アッハッハ! どうせ双子なんだし、今日から姉と妹入れ替える?」
「そうはいきません! もうひと勝負です!」
「オッケー。かかってきなさい」
むぅ~セイラの態度からは余裕が感じられます。
次こそは負けません!
「……ふふ」
ふと私たちを後ろから見ていたシリンさんが小さな笑い声を漏らしました。
「シリンさん?」
どうかしましたか、と目で尋ねます。
それに、またシリンさんは小さく笑って。
「いや、ふたりとも仲いいな~と思って」
「……!」
仲がいい。
シリンさんからはそう見えたのでしょうか?
そういえばなんだかセイラもいつも通りに戻っています。
私のモヤモヤも気づいたらスッキリしているような?
あれ?
もしかしてすでに私の目的は達成されてましたか?
冷戦終了ですか?
「ほらお姉ちゃん、次の勝負始まるよ」
「わっ! ちょ、ちょっと待ってください!」
私は慌ててこんとろーらーを握り直します。
って、さっきから私たちでゲームを占領しすぎてました。
持ち主のシリンさんに御迷惑です。
早く返さないと……。
でも。
もう次の対戦が始まってしまいます。
画面ではすでにカウントダウンが。
……シリンさん、ごめんなさい。
次は必ず替わります。
ですからあと、もう一戦だけ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます