助っ人

 それは今週の月曜日の出来事だった。


「セイラさん!」

 お昼休み、その子は突然私のもとにやってきた。

 その子の名前はユイ。

「な、何?」

 ユイはいわゆるスポ根少女。

 所属はバスケ部。

 お洒落しゃれよりもボールを追いかけるのが大好き。

 趣味も違えば友達のグループも違う。

 はっきり言って私とは何の接点もない。

 それがなぜ、いきなり声をかけてきたのだろう?

「その、何か用?」

 しかも若干鼻息荒いので、私は話を聞く前から少したじろいでいた。

 と、彼女は話しかけてきた時と同じ勢いで、パンッ、と両手を顔の前で合わせて。


「お願い! 日曜日の練習試合に助っ人で参加して!」


「……は、はぁ?」

 そのあまりに急すぎるお願いに、私はただポカンと返事するしかなかった。

「ごめん。意味がよく分かんない」

「じゃあ説明する!」

 ユイは再び勢い込んで話し始めた。

 彼女の話を要約すると、今週末に他校のバスケ部とやる練習試合に、私に助っ人として参加して欲しいらしい。

「出る予定だった子がひとりケガしちゃって! ウチのバスケ部一年は人数ギリだし、先輩はその日別の学校と練習試合だから、どうしてもあとひとりやれる人が必要なの!」

 どうもその練習試合は一年生同士の対抗試合らしい。

 それではいくら欠員が出たからといって、同じ部の上級生に代わりに出て欲しいなんて頼めないわけだ。

 まあその辺りの事情は分かったけど。

「でも何で私なの?」

「だってセイラさん、この前の体育のバスケでスゴい動きよかったじゃん!」

「……!」

 なんかストレートに褒められた。

 おだててるのかとも思ったけど、ユイの目からはそんな気は感じられない。

 本気で言ってるみたい。

 現役バスケ部の子にそう言われると、さすがにテレる。

「け、けど私みたいな部外者が入ったら迷惑じゃない?」

「そんなことないって! みんな試合がしたいんだよ! ね? お願い!」

「うーん、でもなー……」

 私はちょっと悩む。

 褒められて悪い気はしない。

 体を動かすのもわりと好きだ。

 けど私はあんまり部活に興味がない。

 放課後に残るのもメンドいし。

 せめて何かもう一押しないと、いまいち頷く気には……。

「出てくれたら練習終わりにサーティワンのアイス奢るから!」

「乗った!」

 交渉成立。

 アイスおごりじゃ仕方ないよね。

 というわけで、私はバスケ部の助っ人を引き受けたのだった。



 早速その日から、私はバスケ部の練習に参加することになった。

 やる前にユイからバスケの基本的なルールを教えてもらう。

 とはいえ、体育でもバスケはやったことあるので、確認程度だ。

 それから準備運動とストレッチをやって、基礎練をしたあと、ハーフコートを使って軽く2on2をやらせてもらう。

 で。

「セイラ!」

「オッケー!」

 ユイからのパスを受け、ドリブルで目の前のディフェンスを躱す。

「わっ! マジ!?」

 驚く相手の脇を抜け、フリーの状態からシュート。

 ボールはゴールのリングを抜け、ネットを揺らす。

「イエーイ1点!」

「ナイスセイラ! ちなみにバスケは2点だよ」

「へぇーお得だね」

「いや、相手も2点ずつ入るから。スリーポイントシュートとかもあるけど」

「そうなんだ。そういえば体育の時も、やけに景気よく点数入るなーと思ってたわ」

 ユイとハイタッチしながらお互いに笑い合う。

「ちょっとーユイ。ウチらより上手い子を助っ人に呼んでどーすんのよ!」

 そう笑いながら言ってきたのは、さっき私がドリブルで躱した子だ。

 怒ってるようなセリフだが、その表情から冗談とひと目で分かる。

「えー、そこは褒めるとこじゃんミカ?」

 ユイにミカと呼ばれた子は、さらに笑う。

「バーカ。あんまりあたしらが不甲斐ないと、センセーにドヤされちゃうでしょ!」

「じゃあミカが抜かれなきゃいいだけじゃーん!」

「あっ、言ったなーこの!」

「わっ、ギブギブギブ!」

 ユイはミカにヘッドロックをかけられ、慌ててタップする。

 その様子はまさにじゃれ合いって感じで、他の部員も笑いながらふたりを止めに入る。

「しっかし、ホント上手いね。夏目さんだっけ? 部活入んないの?」

 ユイを離したミカが、次は私に話しかけてくる。

「あー、あんまり部活は興味なくて」

「えーもったいない。ウチ入んなよー」

 ミカは結構グイグイ来るタイプらしい。

「えぇーどうしよっかなー」

「ミカ。セイラが困ってるってば」

 と、そこでユイが助け船を出してくれる。

 ユイに言われ、ミカも両手を上げた。

 それでこの勧誘は終わり。

 あっさり諦めてくれて、私としても助かる。

「けどホント運動神経いいよね。何かやってたの?」

「ううん。万年帰宅部だけど、ダイエットにジョギングと腹筋してるから、体力はそこそこあるかな」

「ウッソ、そのスタイルであとどこの脂肪減らすの?」

「いや、私って油断するとすぐお肉ついちゃうから」

「へぇー、あたしダイエットとかしたことないや」

「まぁ、部活入ってる人はそれこそ毎日運動してるし」

「確かにねー」

 このミカって子も結構話しやすいタイプかも。

 ていうか、バスケ部の子たち全員。

 気がついたら、みんな話の輪に加わってるし。

 部活やってる子っていったら、もっと泥臭いというか、部活中は部活の話以外するなって感じかと思ってたけど、ここはそうでもないらしい。

「あ、ていうか私お姉ちゃんいるし、紛らわしいから夏目じゃなくて下の名前で呼んでいいよ」

「りょーかい。セイラ」

 みんな話しやすいおかげで、もうだいぶ打ち解けることができた。

 こんな感じに駄弁だべれる部活なら、そんな嫌じゃないかもしれない。

「コラー! 一年何サボってんの!」

「わっヤバ!」

「スミマセーン!」

 って、だからって雑談ばっかりしてていいわけないか。

 先輩たちに怒られた私たちは、慌てて元の練習に戻った。



 そんな感じで、バスケ部の練習が終わるのは大体いつも夕方6時くらい。

 そして、練習が終わったあとは約束通り、駅ビルのパセラでサーティワンアイスを奢ってもらった。

 ちなみに奢るお金はバスケ部一年全員で割り勘とのこと。

「いやー、皆さんゴチになります」

 私は同じテーブルに座るみんなにお礼を言い、早速アイスをひと口いただく。

「うん。美味し」

「けどいいの~セイラ?」

「何が?」

「さっき部活中、お肉つきやすいって言ってなかった?」

「むグ!? きょ、今日はいっぱい動いたからいいの!」

 ユイの指摘に、私はちょっとドキリとしてしまった。

 御夕飯はご飯少なめにしとこ。

 それにしても本当、一日でバスケ部の子たちとは結構仲よくなれた。

 ユイ。

 ミカ。

 アッコ。

 マミマミ。

 リサ。

 名前もあだ名も覚えた。

 ちなみにリサというのが、例のケガをした子だ。

「リサ、足大丈夫?」

「平気平気。軽い捻挫ねんざだから」

「でも松葉杖してるし」

「これ使うと足首に負担かからないから。早く治したくて病院で借りてきたの」

 そう言って、リサは包帯の巻かれた足首をぷらぷらさせる。

 特に痛がる様子もないし、本当に軽い捻挫みたいだ。

「けど何も対抗試合の前にケガしなくてもいいのにねー」

「ホントホント」

「タイミングがねー」

「セイラを助っ人に呼んできた私に感謝してよね!」

「わー怪我人相手になんて態度だ! セイラちゃん助けて!」

「おーよしよし」

 ふざけて寄りかかってくるリサの頭を私が撫でるフリをすると、みんなの間に笑いが起こる。

 うーん、参ったなー。

 ホント思いのほかバスケ部の子たちと馬が合う。

 それに優越感とかそういうわけじゃないんだけど、みんなに頼られるのはちょっと気分がいい。

 大体いつもみんなから頼られるのはお姉ちゃんだから。

「にしてもさー、みんなって仲いいよねー」

 私は和気藹々とするバスケ部の面々を見ながら呟く。

「そりゃあね! だって私たちバスケ大好きだもん!」

 ユイが満面の笑みでテレもなく答える。

 これにはさすがのミカたちも恥ずかしかったらしく、みんなちょっと頬が赤くなっていた。

「あれ? どしたのみんな?」

「このっ……お前はホントかわいい奴だなぁ!」

 キョトンとしているユイに耐えきれなくなったのか、ミカは椅子から立ち上がって彼女に思いっきり抱きついた。

「わぷっ! ミカ、ちょっ、く、苦しいから!」

「……」

 みんなバスケが大好きかー。

 こういう友達関係もちょっといいなって思う。

「なんかいいね、そういうのって」

「おっ、それじゃやっぱりセイラもバスケ部入るー?」

 私の発言にミカが素早く反応する。

「だからー、私は部活とか合わないって」

「そっかー。残念」

 そう言ってミカは軽く肩をすくめる。

 もちろん今のも冗談だ。

 入部云々はともかく、週末の練習試合は結構やる気になっていた。

 それくらい私はバスケ部のみんなのことが気に入り始めていた。



 練習中になぜかパパが学校に来るなんてハプニングもあったけれど、あれから毎日放課後はバスケ部の練習に参加して、気がつけば金曜日の朝になっていた。

「んー」

 二段ベッドの下で目覚めた私はうんと伸びをする。

 最近寝付きがいいからか、やたら寝起きがスッキリしている。

 これも部活効果だろうか?

 何はともあれ気持ちのいい朝だ。

「お姉ちゃん、おはよう」

「おはようセイラ」

 お姉ちゃんと朝の挨拶を交わしつつ、朝の準備をする。

「パパは?」

「キッチンで朝ご飯作ってるわよ」

「ふーん……」

 私は頷きつつ、ちょっと早めに着替えて部屋を出る。

 足の向かう先は陽ノ目ひのめそうのキッチンだ。

「あ、セイラおはよう」

「ん。おはようパパ」

 パパはちょうど目玉焼きを作っているところだった。

 私はそんなパパの背中を見ながら、ちょっと自分の髪をイジる。

「用事?」

 そうすると、パパから話しかけてきてくれた。

 こういう察しのいいところは、パパのいいところだと思う。

「んっと、私ほら、最近バスケ部の練習に混じってるって言ってたでしょ?」

「ああ、そういえば言ってたね」

 パパは背中を向けたまま頷く。

「それで、日曜日に練習試合があるんだけど」

「練習試合?」

「そ。それで、私それに助っ人で出るから……」

 試合観に来て。 

 と、そこまでがなかなか言えなかった。

 言うのが変に気恥ずかしい。

 服買ってとかアクセ買ってとか、そういうワガママを言う方がむしろ気楽な気がする。

 何でそうなるのか分からないけど、なんかそうなのだ。

 なんて風に私がまごまごしていると。

「そっか。セイラが試合に出るなら応援に行かないとね」

「……!」

 パパってホントこういう時は察しがいい。

「べ、別にいいけど。変に気合い入れたりしないでよね、あくまで助っ人だし、練習試合なんだから」

 私はついテレ隠しに早口にそう捲し立てる。

「ん。分かったよ」

 パパは少し笑いながら頷く。

「~~~」

 なんだかやっぱり恥ずかしい。

「じゃ、じゃあそれだけだから!」

 私は踵を返して部屋に戻る。

「あら、セイラ?」

 部屋に戻ると、パジャマから着替えたお姉ちゃんが私を見て小首を傾げた。

「そんなにニヤけて、どうかしたの?」

「なっ、何でもないから!」



 そんなことが朝にあって。

 私の週末の練習試合に対するやる気はさらに上がっていた。

 早く放課後になって、バスケ部の練習が始まらないかと思っていたくらいだ。


 けれど、その日の休み時間。


「え……リサ、治ったの?」

「うん」

 尋ね返した私に、ユイはコクリと頷いた。

「今日、学校来る前に病院行ってきて、先生に看てもらったらもう大丈夫だって」

「へぇー……そうなんだ。治ってよかったね」

 もちろん、それはよかったことだ。

 リサとももう仲よしだし、ケガが治ったのは素直に嬉しい。

 ただちょっと……次に言われそうなことを想像して、あっ……と思ってしまった。

「それで、その週末の練習試合なんだけど、リサがやっぱり出たいって言っててさ」

「……」

 まー、そうなるよね。

「練習にまでつき合ってもらったのに申し訳ないんだけど……」

「あー、うん、平気平気。気にしないで」

 私は頑張って笑顔でそう手短に答えた。

「まー所詮素人だしね。みんなの足引っ張っちゃ悪いし、リサが出た方がいいって」

 これは本当。

 私と違って、バスケ部のみんなバスケが好きでやっているし。

 どちらが試合に出たいかなんて、そんなの比べるまでもない。

「セイラ、ごめんね?」

「いーっていーって。放課後アイスで元は取ったしね」

 申し訳なさそうなユイに私は手を振る。

「あっ、ちょっとトイレ行ってくるね」

 私はそう言って教室を出た。

 その足はトイレに向かおうとするが、私の前に何人か女子のグループが入っていったのを見て、行き先を階段へと向け直した。

 なんとはなしに一番上までのぼり、誰もいない踊り場で腰を下ろす。

「……はー」

 ため息。

 まいった……。

 まさか今朝パパを誘ったタイミングでこう来るかー。

「……まあ、仕方ないんだけどさ」

 部活とか合わないとか言っちゃったし。

 勧誘も何度も断わっちゃったし。

 それに練習試合だって、ユイたちにとっては大事な試合なわけだし。

 リサもバスケがしたいから、軽い捻挫でも松葉杖して早く治そうとしてたんだし。

「……」

 それにたぶん、パパを誘ってなかったら、私はもっと簡単に納得してた。

 私がモヤモヤしてるのは、パパになんて説明しようかっていう、ただその気まずさだけが原因で。

 たぶん、そんなことのために、本気でバスケが好きな子たちの邪魔はしてはいけない。

「……はぁ」

 まあけど、やっぱりため息ついちゃうなぁ。

 とりあえず、休み時間中に全部吐き出しちゃわないと。

 変な空気を引きずったままじゃ、パパに説明する時に面倒だし。

 バスケ部の子たちとも気まずくしたくないしね。

 せっかく友達になれたんだし。

 ひとまずここで次の授業まで時間を潰して……。

「セイラ?」

「!」

 不意に声をかけられて、私はドキッとする。

 階段の下に現れたのはユイだった。

「えっと、どうしたの?」

「んー、セイラのことが気になってさ」

 ユイはそう言いながら階段をのぼり、私の隣に座る。

「やっぱ怒ってる? こっちから頼んだのにさ」

「あーいや……そういうわけじゃ、怒ってるとかじゃなくて」

 私はどう誤魔化そうか言葉を探す。

 そんな私をユイはジッと見てきて。

「セイラ、何かあった?」

「!」

 ドキッとして、私はちょっと声を詰まらせた。

「セイラってもしかしたら気にしないタイプかと思ってたけど、なんかさっき様子おかしかったから……」

「あー……」

 思ったより顔に出てたかな、私?

 それともユイが案外鋭いだけ?

「セイラ、そんなにバスケの試合やりたかったの?」

「いや……私のは、そんな立派なものじゃなくて」

「じゃあ、何?」

 やっぱりユイってグイグイ来るタイプだ。

 いや、バスケ部みんなそうかな。

「えっとね……」

 私は観念して、正直に話すことにした。

 ぶっちゃけ小っ恥ずかしかったけど。

 だってパパに観に来てもらうつもりだったー……って。

 まるで私がファザコンみたいじゃん!

 いや、私はお姉ちゃんとは違うし。

 まあ……パパのにおいは好きなんだけど、お姉ちゃんみたいにベタベタしてないし。

「……」

 私の言い訳交じりのくだらない話を、ユイは黙って聞いていた。

 それで聞き終わって、彼女は少し考えたあと。

「……うん。よし!」

 ユイは自分の膝を叩いて、何かを決めたようだった。

「じゃあこうしよう! 私の代わりにセイラが出るってことで!」

「……え? えっ?」

 話はよく分からず、私は二度聞き返してしまった。

「……どゆこと?」

「元はと言えば私の所為だし。だから私が責任取る!」

「いやいやいや、それじゃ本末転倒でしょ」

 私は首を横に振る。

「ユイは部員なんだから出なきゃダメでしょ」

「そんな法律はない!」

「顧問の先生になんて言い訳するのよ?」

「そうだなー……じゃあ、今から私も捻挫を」

「わーっ! 階段から落ちようとするな!」

 私はユイの制服の袖を掴んだり、あーだこーだと押し問答したりした。

「ていうか、私のはホント私情っていうか、たいしたことじゃないし、そんな気ぃ遣わなくていいから!」

「ダメ!」

「何でよ!」

「だって友達がそんな顔してたらほっとけないよ!」

「こっ……!」

 私はまた声を詰まらせた。

 あーもう何でこの子はこーかなー。

 ちょっと恥ずかしいセリフを素で言いすぎじゃない?

 聞いてるこっちがテレちゃうし。

 なんて言うか。

 こんな風に言われると、くだらない言い訳できなくなる。

「……けど、ホント別にユイとか、もちろんリサが悪いわけじゃないし、私も私の所為で友達に迷惑かけたくないの」

「うーん…………よし、分かった!」

 ユイは今度は自分の両手を合わせてパンッと叩く。

「じゃあ“練習”試合はセイラに譲るから、今度またバスケの“練習”につき合って!」

「はぁ……? えっと、それってまたバスケ部に来てってこと?」

「そゆこと!」

 たずね返す私にユイは勢いよく頷く。

「ほら、ウチらって人数少ないでしょ? だからセイラくらい上手い人なら、たまに遊びに来てくれるだけで凄く助かるよ! それに私、セイラとまたバスケしたいもん!」

「……」

 練習試合を譲るから練習につき合ってって交換条件だったのに、結局遊びに来てって言っちゃってるし。

 それじゃ今までと変わらないじゃん。

 本当にもう……仕方ないな。

「分かったわよ。乗ったわ、その提案」

「ホント!?」

 ここで本気で喜べるんだから、この子って本物だなと思う。

「でも、私からも交換条件」

「……?」

 首を傾げるユイ。

 彼女にばっかりいい格好はさせられない。

 だって私たち友達だし。

「今度は私がアイス奢るわ」



 そんなこんなで週末の練習試合。

 パパもお姉ちゃんも約束通り応援に来てくれた。

 ビブスを着た私は、バスケ部のみんなと円陣を組む。

 ユイはなんかヘタクソな包帯を足首に巻いて、ベンチに座って手を振ってる。

 あれが仮病なことを知ってるのは私だけだ。

 他の子たちにまで気を遣わせたくないからと、私とユイで秘密ということにした。

 少し騙しているみたいで気が引けるけど、その分の借りはまた今度バスケする時に返そう。

 そういう約束だしね。

桜舞おうぶ中ー! ファイトーっ!」

「「「「おおーっ!」」」」

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