WORLD・RESONS

「ふ………ファトプリカじゃねぇか。何してやがる?」

「厄介なスカシ面に出くわすなんてツイてねぇが、タイミングだけは悪くねぇ。卑しい匂い嗅ぎ付けてここまで来やがった。スケベな下心と鼻だけは一流なのは認めるぜ」

-何処までも自己都合で反論しやがる-

入り口付近で派手に倒されたベルサジュ・シェイダー。暗殺者の中でも飛び抜けた危険指数、ELEVENS・CHOSE(暗黙の遂行)の一人であり、世界政府公 認の闇の住人達である。暗殺者は依頼内容問わず、周囲に悟られずに死を与える

。飛び抜けた能力が特化した選ばれた11人の一人である

「は………速すぎて、反応に遅れて………しまった」

蹴られた箇所を抑えながら、ゆっくり苦痛の顔を浮かべと立ち上がる。壁に手を当てるが、力が入らず、身を預けた

「大丈夫かよベルサジュ」

「なん………とかな。くそ!またも同じ場所を蹴られてしまった!」

僅かに動揺したのはファトプリカだった。眼光を光らせ、じっくりと睨んだ

-完全にオチた筈だ。まさか、機転で直撃を免れた?コイツはスカシ面並みか?

それに-

「今、ベルサジュって言ったか?」

「ん?あぁ、そうだぜ。世界でも指折りのアサシンだ」

「いや、そんな公に言わないでくれよSick。無様だから仕方無い罰ゲームかも知れんが」

悪戯な子供のように笑うSick と神妙に苦笑するベルサジュ。炭鉱の内部の気温が更に上昇して来た

-あの、政府請負業で名を馳せたスペインのビッグネームか。相棒は幻惑の異名を持つDIREYZのDAZZINGとにわか関与が囁かれた………ならば話は逸れて好都合になる-

くるりと踵を返し、炭鉱の奥へ向かうファトプリカ

「可憐な女の背中を堪能するのを許してやる 付いてきな。突こうとしたら汚え勲章役立たずにしてやる。いいな?」

炎の明るさが増す炭鉱の奥へ歩き出すファトプリカ。小柄に似つかわしくない猟銃を肩に乗せ、煙草を口に含み火を点けずに喫煙者を気取る

「Sick。彼女は一体何者だ?もはや到達した強さに感じる」

「ファトプリカっつう訳分かんねぇ最強女だ。異名は」

次の瞬間、Sickの頭部に銃口が当てられた。直後、風が吹き生暖かさの中に冷ややかを感じた

-マジかよ。十メートル程を一瞬で-

Sickは微動だに出来ず立ち尽くした。隣を歩いているベルサジュは心胆、興奮を覚える

-暗殺の境地、【絶界】(ぜっかい)…………かつてアサシンの頭領であり、ELEVENS・CHOSEの主格帝、OBERONS・END(オベロンズ・エンド)の実戦技法。光すら越える瞬速で死すら実感不可と云われた暗殺術。まさか、体得者が-

飛び付く勢いでファトプリカに近付いたベルサジュ

「俺にあんさ」

銃口で殴られ気絶したベルサジュ

「何だスカシ面?この積極的に猛アタックしてくるいかがわしい場所に生えてるチリ毛髪の先走りトーヘンボクは?」

「案外、話しやすい暗殺者じゃねぇか?しゃあねぇ」

肩に手を回し先へ進んだ




「ここなの?」

「そうだよ。この奥に行くと僕の作った研究所があるんだ」

小型ジェット機を降りるプレマテリアとCARRY。大草原が広がり、花が揺れ、快晴の空が新しい世界へ導いてくれたかのようだった。見渡すと左右には高い山脈地帯であり天然の自然をたっぷり堪能出来る。CARRYは胸を張り、全身で受け止めた。心地良く背筋を伸ばした

「この場所は環境保護団体の管理区でもあるから、安全に暮らせるよ。それに追っ手もあの研究施設からは追いかけて来ないしね」

「まぁ、ないでしょ。あの研究所。リフォーライ【逃亡抑止電圧感知装置】なんてあるんだから。完全に監視システムを外部から遮断しないと逃げれないのよ。嫌んなっちゃうわ。あんな場所で依頼受けて監禁なんて最悪よ。しかも残留破棄要請書作成に手間がかかって。もう、最悪!」

軽くあしらうかのような言葉だが、多少重苦しい背中をCARRYは見せた。プレマテリアは軽く背中に触れた

「これからはさ」

「ん?どうしたの?」

「自由なんだ!好きに時間を使って楽しく過ごそう。その為にCARRYは今ここに居るんだ」

「そう………ね。じゃあたっぷりコキ使いなさいよ~」

「うん。この森林の先だよ!」

杉の木が揺れ、葉が舞う。花の香りが漂い、心が揺れた。全身が前へ自然と誘われるかのように進んだ



「まさかここって」

「そうだよ。原生林広場。自然生息研究の最適所だよ」

それは密林と沼地が一帯に広がる天然の宝庫である。希少認可限定の植物や最菌類、生物が至る箇所にあり感涙に近い笑顔になるCARRY

「ここにある植物って、一生に三度くらいしか見る事出来ないんじゃないかしら?」

「監視区域とか入らなきゃね。とりあえず先に研究所に行こうよ」

「相変わらずつれない子」

下を出し、愛嬌を振る舞ったCARRY。プレマテリアの背中を見て、笑顔が絶えなかった

木々から降り注ぐ光が暖かく心地よい

人生の楽しみがこれから始まる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る