戦唄
数日後
軍事開拓国家に到着したSickは大層な迎えだった。案内され室内に入れば広く質素な部屋で棚に置いてある総勢たる勲章を刮目すればこの屋敷の人物が崇高で平和を安泰とし戦場を鎮静した偉大な人物だと伺えるだろう。同時に財力も所有し、遙か上空からなら広大な敷地の全方位を確認出来るだろうか
部屋の中心にある豪華なTableにはクロスが敷かれ上質な紅茶が注がれSickは香りを楽しみ口に含む。作法は過去に抹消術を教わった師から学んでいる
「随分と負傷しているな。打撃痕がまだ残っている」
冷静に淡々と語る声には軽度でも確かな重圧が感じる。それは実績と戦歴が至高に位置する存在。壁に目を配れば軍服と隊を示す鷲の勲章が胸元に着いている。栄光の証明。袖の無いセーターと紺のジーンズを履き、戦場とは懸け離れた服装にSickは少々驚いた。金色の髪が目に少々かかるくらいで左後ろの髪だけは編んでいた。こだわりである。後は少々ウェーブのかかったストレートヘアである
「何だか更に厄介なのが色々絡んだからな。ともかくこれは渡すぜ」
茶色い表紙のした書類を渡す。一望しゆっくり瞬きし報告書を閉じた
「大抵は距離を取る筈であり常で然り。それ程の莫大な価値だ。だからこそ決死の覚悟で挑んで来たんだろう。執念と執拗は確かに感じた」
目の前の女性は軽く視線を地面に流し記憶を彷彿。苦戦とまではいかないが
「覚悟とは背水と決死に分かち合う死地を宿す事で向上する確かな心は………突出にしかその景色は視る事が出来ない衝撃。強敵だ」
「ベルサジュは?」
「解放する」
-ったく。まさか貸しを作る事になるとはな-
「それなら話しは早ぇ。ティオーレ……唐突だが男は知ってるか?」
「知らないが相手がお前なら私は軍人を辞めて尽くす」
口元が歪み笑みを浮かべる
「るせぇぜ。んな事はタリィからゴメンだ……例え話しだが、予期しねぇ奴が絡んだ……皇帝配下だ。殴り殺したが更にTRY-GUNJEASTARまでもな」
眼孔が狂喜を宿した
「その傷は………まさかあの女か。よく生存出来たな。お前は私を愛せ。そしたら全てやる」
思わず吹き出し、むせた
「随分冗談ヌかすなバージン。情けねぇよ 派手に這いつくばっただけだ。価値なんざ無ぇよ。へっ!」
「と、いうか情愛を堪能すればお前とは敵対関係になる事もない。それは戻すが私も戦場で一度対峙した事がある」
少々厚い唇から僅かに感じた感情
「死を覚悟した。三度目のな。お前は二度目だったが………あの異名は的を射ている」
-直接殴られて思ったがあの強さは-
「VALENTINA……お前はこのテレンス報告書に目を通したか?」
「いや、俺は視てねぇ。なんせ持ち主次第くらいな考え方しかしてねぇ」
-そういえばファトプリカ………食い入るように視てやがったな-
「私が最初に死を覚悟した時の話しがある」
口に含む速度が遅くティーカップを置いた時の音は大きかった
「今から約18年前………この時期よりも少し暖かかった頃の話しだ………二ヶ月前でも雪が降り積もる筈だった。外のように」
庭を見れば積雪量は言う迄も無かった。季節外れの桜に雪がかかり幻想的な風景
「9月の季節の筈が数日間、猛暑の日が続いたあの事態は……その時が予兆だったのかもしれない」
執事が応答し豪勢な食事を楽しみバスルームを借り、袖の無いシャツとゆとりのあるズボンでSickはソファーに座っていた。客室にしては広く清潔感があり執事の有能を先程も体感した。ソファーの前には背丈の低いガラステーブルがあり、携帯と撃鉄を起き、寝そべっていた。その時ノックする音が聞こえた
「私だ」「入れよ」
扉を開けば隙の無い美女が入室する。起き上がり正面にあるゆとりのある椅子に座る。両手にはワイングラス2つと白の年代物
「ワインか。懐かしいな「嫌いか?」
何となく……過去が過ぎり「頂くぜ」乾杯し口に含む
「先程の話しだが」「ん?……ああっ!確か九月の猛暑か?んな珍しい事なのか?」
正面に座る軍人を視てその表情に身を固めた
「この国がまだ【独立】と称していた時代……どうやら9月から11月の期間は低気圧がコイル・ドゥーナ海域に異常発生し予測不能観測地として認知されている」
-酒で語るなんざ余程じゃねぇか-
「あの頃私は入隊してから初の軍隊を任された。当時、任務の遠征指示は総指揮官であり、詳細内容は極秘だった。遠征場所の海域は本来【鷲】ではない。【狼】だ。浮かれていたんだろう………愚かしい事で部下だった同胞達は………皆、良くしてくれた。それだけに」
「今なら企みならハッキリ解る位の」
「その通りだ。極秘任務は確かに稀にはあった。だがそれは入念に調べる迄思考が働かない程若すぎた」
飲み干し再び注ぐ。規律良く座る姿が少し柔軟な姿にSickは新鮮に感じた
「現地を調査するとの事以外、何も訊かされなかった。黙認を継続した上官は無線連絡に微かな動揺もあった。口を塞がれた箇所もあり」
「何かあると踏む迄遠かったのか?ザケるにも笑えねぇって所か」
会話の声と切々と降る雪の音
「その時視た光景は今でも忘れ無い。変死体の山だった。全員、手足の指先と目から血を流していた。元凶は………眩いばかりの光を全身に浴びた存在………そして私を除く隊員は死亡。何故、私だけが生存したのか謎だった」
気が付けば空になるワインが話しの終わりを告げた
「ってのはよく解ったが………報告書はつまりその事件内容か?何かTRY-GUNJEASTARは歴史が綴ってあるって話しだったぜ?」
「具体的な作成がされたのは今から90年前の話しだ。それから世界の極秘機密七大怪奇と認定されている。つまりは書類だけで無く映像や音楽にも存在するがな」
その時Sickは都合良く思い出した………ファトプリカの話していた
「【万物の真相】とか……か?」
「一体それを何処で知った?」
「TRY-GUNJEASTARだ。もの凄く興味を示してやがった それだけじゃねぇ……何かを知っている口ぶりだったからな」
背もたれ部分に手を預けるが神経は研ぎ澄まされていた
「………どうやら想像をしえない何かを握っているという事か」
「身に染みて感じた事だが………」
ワインを飲み干し口にする
「人間離れしてやがる。総てがな」
「過去のお前のようにか」
「アンタもな」
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