『MADNESS DON'T FAR CRY』



「これがあるのか。人間から悪魔に変貌する業の化身………それで生き残れたか」

後頭部の血を親指で払い袖をまくるファトプリカ

「一つだけ………何でこんな回りくどいスイッチを作ったかだ。成長したのは人間としてだ。良心が目覚め悪意が退行したって事か」

距離が詰まる。互いの間合いに近付く

「TRY-GUNJEASTAR。この異名が付いた経緯は多々あるがデッケェ要因は」

まるでそれは異様なビジョンが突如描かれたようだった。繭のような靄が浮かび上がる不可思議な現象を視覚的に捕らえた

「久々に面白ぇ物が見れた褒美だ。気絶前に教えてやる………強さを大きく分け三段階ある」

突如………激痛!左脇腹!右胸!顎先!右脇腹!左頬!足払いで浮かせ更に踏み込み顔面を強打。激しく背中を地面に叩きつけた!

「まだ狭い世界でしか生きてねぇからな……身に染みて教えてやる」




苦痛が全身を支配し景色は天井だった。暫く動けない程だった指先ですら神経を刺激した。芳心したのは痛みだけではない。それは格差でありあまりにもありすぎる事実を………実感

「負けたのか………俺は」

すぐ横を見れば報告書が置いてあった。尚更、同情が敗北感を膨張させた




「悪ぃ。取り逃がしちまった」連絡しながら店を出て会話をしていた

「知らねーよ。気づいたらバックレたんだよ。あのスカシ面は」

メインストリートを出る頃には夕暮れで帰宅する住民達が大量に行き交う。外見が小柄な少女なので安否の視線を流す。何故なら夜の治安が良くないからで保身を安否する民間人の感情は読みとれた

「とにかく次の依頼が来ちまったからここ迄だな。後は好きにしろエニシンク!じゃあな」

早走で港へ向かう瞬間、目につき足が止まる。それは

「しかたね~ビーフストロガノフなら食い尽くすのが先だな。ひひ~」

下品な顔で洋食屋に入るファトプリカだった



「ねぇねぇ。そういえばだけど」

夕暮れの道を歩く。土手がありランニングする外国人が通り過ぎたり段ボールを敷き急下降する子供達。長身の男とポニーテールの女が並んで歩いていた

「ここ、何か日本に似た道ね。河原もあるし」

「よく知らないが視線を別に振れば下町にも見えるな。ハッ!」

髪留めを取り背中迄長髪があり首を振り調整された。上下白スーツの女、リパークは携帯を取り出し

「ここからメインストリート迄距離があるのよね。でも面白い事なら立ち止まる?」

「一体どんなだ?」

通り過ぎる自転車やサッカーしながら通り過ぎる子供

「この街にSARGATANASがいる」

「何!!?」

足が止まる。夕暮れを睨み唇が歪む

「楽しむ要素増えちゃったわね~?どうするの?」

沈黙。黄金の瞳が拡大し………

「止めだ。まだ勿体ないからとっとくぜ。ハッ!」

歩き出した

「いつかその時が来るまで楽しみにしてるさ」

VERMILIONはニヤリと笑みを浮かべ、歩き出した。後から付いてくるリパークは袖口から刃物を取り出し、一瞬で自分の髪を切った

「おいおい、何してるんだ?」

「何となくよ。空を見て気紛れに夕陽が沈む綺麗な太陽にお礼がしたかったの」

「よく解らないな」

「いつか、太陽すら作り出すエネルギー源が完成するわ。そしたら必要無くなるじゃない?そうよ。それも悲しいじゃない」

「そんな事はまだ先の話だな」

「後10年後よ。その時を楽しみにこれからを生きるの。精一杯ね」

セミロングの長さになり、白いスーツを脱ぎ捨て、ゆとりのある黒い長袖になり鼻歌まじりでスキップしだした



『胱歔の未月』


曇り空

霧と雪に蓋した季節と

肩に触れ

秋先の朱に照らした孤独と共に

言葉に変われば

移した涙の意味と

幾重も包む風に微笑む影と戯れ何を残す?

凍える程の哀れさと

苦しさに包む優しさに

孤独を分かち合う

せめぎはせずに

朧が満ちた大地に溶け

何を残す?

映した片目に満ちた光が

思い出す

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