『SAVES-ORDERRIDE』




激しい音を立て頭部を壁に打ち付け地べたを舐めた敗北者達

「クソガぁ。手間取らすんじゃねぇ」

腹部に更なる追い討ちを食らい呼吸困難になる激しく息が乱れ視線を向けると

「がぁぁぁ!!」

「騒ぐんじゃねぇよ。まだこれからがデンジャーだ」

鉄を仕込んだブーツの踵で踏みつけ更に力を込める。叫び嘆く!顔面を蹴り壁に押し付けながら見下し語る

「多勢で奇襲しやがるならマシな次手を考えてから来いよクソ共が。笑わせんじゃねぇ!」

首を鷲掴みにし握力で締め付けられる!同時に銃口が脳天に当たり狂気の笑みが恐怖で満ち溢れた男の瞳に移った

全てを霧散するかのような灰色の髪と冷徹よりも冷めた青い瞳。引き締まった体躯から想像以上の圧力と風格を出すSick

「ギャングなんざ安上がりの短命だろが。やるならあの一帯を牛耳るマフィアにでもなって売買を縄張りな高額取得をするべきだったな。ここまでだ」

安全装置は解除される。口元が歪み、吊り上がり殺意が増大する。一言

「クタバレ」

執行が下された


凶漢達は沈静した

命を以て

不法投棄がまた一つ無法地帯に増えた


「ALL-DEAD」

「素晴らしいね」

声が聞こえた。振り向かずに誰かは明確だった

「探したよ。隔離都市崩壊からずっと血眼にちょっとなって。ようやく近く迄来たから安心したよ。ちょっとね」

更に増大する背後の影。ゆらゆらと猛然と近付きつつある刺客達

「ソイツら使えたな。まぁ、ここ迄顔あわせちゃえば?何とかなるだろ?後はお前ら、しっかりやれよ」

「何処行く気だ?テメェを嬲り殺しにしねぇと気がすまねぇ」

「あぁ、それ?実はさ。ついさっきから事情が一変しちゃって優先事項が出来た。それじゃあね。次会えたら八つ裂きだよお前」

迫り来る影達がSickを中心に囲んだ


深夜という時間帯に差し掛かり暗がりでしかない場所は外灯も遠く視界もままならない。荒んだ心と同化するかのような黒一色

この不法地帯は何故か夜を更に暗くする特殊効果も感じれた。それだけ

漆黒

「しかし所々で暴れ回るクソ共が充満してやがる………妙な噂が飛び交ってるのが原因か」

死体の山から遠退く。ゆっくりと。そして、瞬時に銃を発砲した!僅かな隙間から顔面を覗かせた人間を対象に。為す術すら与えない

「これは厄介極まり無ぇな……ザケてやがる」


遡る事5ヶ月前

地図にも表記されていない世界から疎外された都市である事態が発生した

CIPHERD07事件

決して語られる事の無い

始まりから終わり迄

関係者は口を塞ぎ加害者は黙認し被害者もう存在しない

歴史は如何なる時も存在し誕生した時点で綴られる

年表と記録し新たに掲げる公表を提示し条約が生まれ統治者は新たな秩序を生み出す。繁栄と平和を祈り

浅くは無いが長く続く事の無い都市の真相

解き明かす者。或いは暴露する者

二択以外にあるとすれば

「生存者がいれば……か」


2007年11月

法の先導者達は苛烈を極める罪人達を沈静すべくある決議案を政府官僚達に提示


PRISENSE-CONCILIATION

【反社会派強制弾圧】


荒廃した国を更に強襲し武力を凶行する過激派を更なる非道の結晶兵器で崩壊させる無差別の殺戮を執行する無惨

虐げられ苦痛と貧困で苛まれる市民諸共爆殺する凄惨を黙認する異論を持さない説得を以て可決させた

国家認定組織はあらゆる事態を想定してでの苦渋の結論と語る

意義を唱えた者はその場には存在しなかった

後に事情を耳に挟む人物を除き

「葬るとは解釈すら苦悶する苦難を乗り越えた不可欠だ。何故か?犠牲と大儀は紙一重。私と【奴】のようにな。フッ」


青く澄んだ瞳は理解をした上での解釈だった。INFERNOは笑う。ただ、それだけである


「それは解らないよ。だって【疑惑】だからさ」

回転式の椅子に深く座り両足をテーブルに豪快に置く。不遜な態度を表現したかったからだ。無邪気に笑う少年。身長は東洋人の平均身長程度であり色は黒を好む

「破壊行為は嫌いじゃないよ。美学だとか価値の尊さとか?一瞬で粉々になる様の方が価値があるからね~」

電話をする時の癖を挙げれば態度が悪くなる。それだけ

「僕にはさ。何か隠匿を重んじた合理化に近い疑惑が過ぎるんだよ……兵器を使用する手段なんて掌握か誇示以外は【革命】が妥当じゃないかな?」

天井を眺めながら間延びした口調で話す

「僕さ。あんま関与しない出来事なら対して興味無いんだよ。だから聞くだけだし答えもちょいと散漫。それは愛嬌かな~ぁ?」

「んな事は無いな」

振り向けば人物がいた。指先で持つUSBメモリーを投げ後ろ向きのまま掌の中心に当たり即座に握る。首を少し動かし不敵に笑う

「やぁ、君がここに来るのは久し振りだね~各地で派手に暴れ過ぎるからそろそろ危険階級見直しになるよ?大丈夫かなぁ?好き勝手な暴挙の懐柔指令なんてあったら僕は困るな~」

「 "誰もが自由であり平等を誇示すれば荒野にも芽吹く魂に祝福が訪れる" ………だ、そうだ」

「偉人の格言かい?君が言うと皮肉で卑屈な非情にしか感じないよ……全てひっくるめた僕の確かな言葉」

「互い様だ。影響は受けたが糧にしてるのも違い無いが心酔迄は行かない……と、言った所だ」

携帯を操作しスピーカー音にする。そして足跡が近付き

「よぉ、久し振りだな。ありとあらゆる世界の密裏を交わしその地位を確立したDIREYZ【抹消者】……アンタがこの世界にいずれ残すとしたら手に入れた全てか継承だろ?THANATOS【タナトス】……まずは知りたい事がある」

度を増した低い声は燃ぜる感情を沸き上がらせた

「後継者は誰だ?」




銃弾が飛び交う!低姿勢で走り抜ける

「ザケてんじゃねぇ!」

凶器の産物を取り出し正面の狙撃者の心臓を撃ち抜き瞬く間に後方の物陰に隠れている狙撃者に威嚇射撃し振り向く!

殺意を纏い危険な形相で警告するSick

「テメェでラストだ。汚ぇドタマに脳天にブチ込まれたくなければ出て来い」

睨みながら周囲を見渡し現状を把握する。廃棄車が積み上げられた不法地帯では障害物が多く把握が出来ない死角が多数存在する

「ならばこちらから」

不意討ちの爆音が鳴り響く!咄嗟に片目を瞑った

「爆発!?一体」

狙撃手の周囲から不吉の炎が発生し廃棄車が燃え盛る。煙から人影が見えた

「よぉ、抹消者。依頼を遂行する。デーモン退治だ」


外見は小柄な美少女である。銀色のBob-Shortの髪に猫のように鋭くも愛嬌のある瞳。煙草を口に含み、狂気を宿し吹き捨てる。ショットガンの形状をした猟銃を担ぎファーの着いた長袖を着てショートパンツに黒いスパッツでスニーカーを履いているのが特徴である

ー何だコイツは!?明らかに並の実力じゃねぇ!。しかもデーモンだぁ?ー

それは裏世界で名を連なるSickの俗称である。あくまでも大雑把な表現であるが

前屈みになり銃口を地面に向けるデーモンと呼ばれたSick。感覚を研ぎ澄まし神経を奮い立たせ

ー隙が無ぇ。アブな過ぎんぜー

「捜し回ったんだぜ。中々発見する迄手間取っちまった。ケッ!タリぃ」

「何だテメェは?異名を知ってるのは誰かから特徴を予め訊いていたんだろ?誰だ?」

「INFERNO(インフェルノ)って言えば解るか?」

ーんだと!?じゃあ、コイツはー

「厄介な奴に的にされたなデーモン。あの壊し魔に狙われるなんて、クズかクソのどっちかだな。ここまでだ」

担いだ銃を捨てる。徐々に距離が詰まり

「死ねおらぁぁっ!!!」

最速で駆け抜ける



INFERNO

空を焼き尽くす業火

この2つの異名は世界を震撼させ、未だ素性は明らかにされていない

発祥時期は2003年。政府が密裏に構成した暗殺組織

ORGA-DISAPPEAR

緻密な策略と最速の暗殺と細則された始末を糧に崩壊させた。戦闘部隊すら距離を大きく取り黙認した精鋭をたった2人で壊滅

全てが熟練者を唸らせ悪漢をねじ伏せ裏世界の階級を駆け上がる結果となる

僅か四年で世界四柱の名を轟かせた

その性根は

残虐を極め凄惨を至極とし狂喜を浮かべながら殺戮する

至上に最も近い存在は

裏世界の頂点に立つ絶対者

【皇帝】の眼下まで視野に入る事となる


「INFERNO……ついにここまでに至ったか。解答に紐引くのは或いは別の何かか…だが、まだ早すぎるというのも然り」

巨大な洋館の一室で静かに佇む人物に語る言葉は疑惑。神秘性を持ち風格や物腰も品位が高い。貴族を連想する

「世情の在り方を知り常に危機感を持ち展望し謁見を担う支柱を取得する事で確立する……掌握の段階」

暗く下降する意識の先に一筋の光明。それこそが

「君に任せるよ。何があろうとも引きずり出せばその先は巣窟だ、例え悪巣だとしても。頼むよデュアリバデス」

静かに囁くように確信する言葉

「全て平伏すだけだ」



ある隔離都市崩壊場所

扉を施錠し歩き出す

白衣は好まず脱ぎ捨てたい心情だが日々、当たり前のように羽織るだけにした為嫌悪も薄れた

瓦礫と崩壊の跡地は人を寄せ付けず同僚以外は見る事は無い。標高もあり見下ろせば広大な森林地帯である。登山家も呻く樹海に興味を示す旺盛さがあったとしても自分なら近付かない

野獣生息地と誰かが言った。その言葉に誤りは無い

何故なら

「研究なんて何の役にも立たないじゃない。さっさと帰ろうかしら」

赤い髪と同じ色の睫毛が長く中性的な顔立ちした女性は呆れ顔だった

「あれから何年経ったのよ。ただひたすらありきたりで食料も健康重視で起床も就寝も同じ……監獄も病院も長寿を目的に作られてると感じるわ。嫌な人生」

瞬きし緑色の瞳から映る瓦景色を眺めながら浮いた言葉を落とし溜め息する

「悪態がつけるのはまだ余裕があるのかしらね。まだまだ何年もこの生活を保つ余力ある自分は激怒もするまき散らしは無いけど」

崩壊した都市の石段の上に座りながら景色を眺める

「え!?」

僅かだが壊れた石の門の入り口の方から音がした。後退りし警戒をする。やがてシルエットが見えた時思わず大声をあげた

「あなたは!?」

「ひ……久し振りだね」



ーやべぇ距離を算段する余裕が無ぇー

瞬く間に距離が詰まり即座に拳を直進させ攻撃!直後、左足裏で防御した刹那

右足を腕に絡ませ反動で上昇両拳で連撃!

ークソが!こうなったらー

片手で払い足の絡まる腕を強引に引き寄せ頭突きをするデーモン。拘束した足を解き、上体を反り右足を蹴り上げる銀髪の刺客

「空中に逃げ場は無ぇ!」

蹴りを回り込むように回避し左拳を振り下ろすSick!下半身を空中で反り上体が垂直になり視界が地面になる。銀髪の視界は左足を腹部目掛け放つが、拳を振り衝突!

「甘ぇ!遅ぇよ」

反動を利用し後方に跳び空中後方回転し着地!

ー直撃しねぇ。何だあの俊敏さは!?多少の隙はあるが有り余る早さで対応しやがる。強過ぎんなー

右足を半歩下げ左足を左方に移動させ距離を僅かに空けるSick

「想像以上じゃねぇかこのスカシ面ぁ!感覚の判断ならまだまだ余力あんじゃねぇか、ケッ。疲労さえなけりゃあまだまだ更にバースト上げてやるんだがなぁ!」

銀髪の視界は何処か娯楽に興じるかのような愉快な雰囲気を伺えた

「Justだ銀髪女!」

「はぁ!!?」

「ご明察だ」

撃鉄を取り出し銃口を向けるSick

「さっさと終わらせんぜ」

銃弾を放ち後方の廃棄車を爆発させる!

更に弾丸を放つ!銀髪女の足下に当たり髪を掠め意識を僅かに逸らした隙に

「じゃあな」

最速で逃走した

「てめぇ!待ちやがれ」

後方をみずに発砲し銀髪女の右方向の廃棄車が再び爆発!

取り逃した銀髪女



数日前

ベルサジュ・シェイダー視点の話し

スペインの王政は立憲君主制である。宗教の大半はカトリックであり、王国の実在する国は統治と実権に対し民衆は堅実である。歴史を重んじる首都のマドリードから南部に位置するセビリア出身のベルサジュは

華麗な装飾のアルカサル城やフラメンコの本場としての有名な観光地でもある。夜になれば強盗や詐欺が相次ぐ国でもあるが、ベルサジュは馴染みの故郷である。暗殺を裏家業で縄張りにしたのは灼熱の街をよく知っているからだ。炎の情熱に焼かれ発生する黒煙も

「ヘレスを頼む」

酸味の強い辛口の味をベルサジュは好む。好物のセラニートを口に含み食感を楽しんだ。素揚げしたピーマンをつまみながら静かに待つ。両親は異教徒と罵られ、幼少時代は差別を受けていた。それでも母は優しく父は誠実だった。道が逸れたのは自分だけだ。期待に応える事も無く両親は他界してしまった

-madre。貴女の教えは教養でした。今となっては-

グラスの中を覗けば自分が映る。鋭い瞳が今は妙に優しく映った。カウンターで項垂れたベルサジュの隣に座ったのは

「これからメキシコに行くわ。準備いい?ベルサジュ」

ピンクブラウンの髪が特徴的な女性が隣に座る。身長は高く自分と同じ位であり、175センチ程だろう。ティペットを巻き女性の魅力を引き立てた。ショードレスで身を包み、シェリー酒が良く似合う。へリックスとイヤーロブにダイヤのピアスを付け、高級感を増していた。だが本来の姿は違う

「随分、キメテるなDAZZING(ダズィング)。今日はデート?」

「外出の時は女性になるわ。プライベートじゃないか。それに着重ねする人生だから気苦労も絶えないのあんたなら理解出来んじゃない?」

「だからそんな薄着なのか………風邪引くなよ」

スペインの平均気温は30度。冬にさしかかる時期でも薄着で丁度良い。ピンクブラウンの髪の女性、DAZZINGはあまり気温差に興味がない。異国の民族衣装を連想するベルサジュの服装は常に薄い。他国へ行ってもさして変化は無いだろう

他愛ない会話が続く。アルコールの度数も上がり、陽気になる。深夜になりつつある時間だった。酔いが覚め始めた頃である

「今回の依頼だけどさ」

「ああ、まさか軍事開拓国家に潜伏する話か?」

他国への侵入作戦の依頼を受けたベルサジュとDAZZING。覚め切った感情が更に冷やかになる。氷を入れたグラスよりも

「厄介な依頼内容だわ。何で私達に回って来たんだか 」

「さあな。ヤキが回ったんだ 裏世界じゃ、名が知れ過ぎたよ。他人を不幸にする縄張りに生きたツケだ」

「でも………ちょっと、楽しそうね」

僅かな武者震いをDAZZINGは逃さなかった

「試したいと思った。下手したら闘えるかもしれないだろ?」

「下手しまくったら死ぬだけで実感無く終わるかも」

飲み干したグラスをベルサジュの額に付けた。それでも食い入るかのように

「俺は死なない。お前もな………煮えたぎる力で必ず成功してみせる」

強く意思を表明したベルサジュは更にアルコールを上げた

深夜のバーで朝まで語り合う

つかの間の一時だった

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