『西洋と楔』




連邦共和制国家メキシコから国境を超え北アメリカへと入った場所は、盛んな国である。食文化で例えるなら小麦とトウモロコシ。石炭等でアルカリ化し、栄養価を高める【ニシュタマリゼーション】はメキシコの主食でもある。消化もしやすく、先住民の主食は国を隔てても人気料理である

「やはり、宇宙から来た食物のトウモロコシは地球外の味を堪能できる手段だ。スッゲー。月の水から出来たポカリスエットもたらふく頂くぜ。スカシ面の金でな」

貪りながら下品に料理を平らげるファトプリカ

「これこれ!ケサディーヤ。チーズが伸びるこの美味しさ。報酬の宝石は残念だったけどお前の金だからとりあえず満足するよSick」

平たいフライパンのコマルで、穀類の粉に水を加えて作る生地てあるマサを薄く伸ばしチーズを挟んだケサディーヤを食べながら笑顔を振り撒くベルサジュ。

「おい………お前ら」

「まだだ!腹が満足しねぇ………トスターダ!ブリトー!ファヒータ!タコス!まとめて持ってこいや~!」

「俺はサルサ!チラキレス!ウェボス・ランチェロス!テキーラ!遠慮せずに飲めよSick!廃れた面にならないで楽しもうぜ~♪」

暴走する二人。テーブルに並べられた沢山の料理があっという間に無くなる。気概すら失せているSickの胸中は冷静に判断を下す事だった

-ここは高級レストランな筈だ。成金が喜びそうな金ピカの像ややたら格の高い客が伺えた。ドルで対応出来るから北アメリカに違いねぇがコイツは-

「おらぁ!足らねぇ。まだまだだ!疲れた身体が癒えねぇからキャッシュ使うぞ。報酬は下僕の成長だ!未来の姿が眩しくて涙が………ふわぁ」

「なぁSick。決めたんだ。俺、強くなるよ。更なる高みへ登り詰める。だから食べるよ………成長期ってヤツだな。へへ!もっと頑張るからさ。リボ払いでいいか?」

「ザケきってんじゃねぇ!何で全部俺持ちなんだタコ共おおぉ!割り勘にするからな」

ぴたりと手を止めるファトプリカとベルサジュ。口を敢えて丁寧に吹き、ゲップを抑え真剣に睨み付けた

「スカシ面。世の中は不平等だ。全額は勿論今、廃れている憐れな敗北者だ。解るな?」

「理解外だ。却下」

「まずは1つ。これで確定事項だが、世の中はレディーファーストが常だ。銀行員も商社マンも喫茶店も女が牛耳る時代だ。解るか?その意味が」

「解りませんね。俺は女性という生き物は性の捌け口にしか」

「この下僕が!身を弁える姿勢になりやがれ!!」

「はいぃぃ!かしこまりっス!」

両目を強く閉じ、垂直に固まるベルサジュ

「今時代は大きく動いている。女性という生命を産む種族はある意味特権だ。男には出来ない。まずは優劣関係。ここに格差がある。そしてぇぇ!丁寧で親切な母性があるからこそ他者に対する慈愛が常に持ち合わせる!だからこそガサツな男が働くより、女が先陣切れば統一が集束化する。人が増えれば利益が生まれる。女が世界で働けば金の成る木だ。解るか!?」

「解りませんね俺は。ただ、金の無い時代、女にタカりまくって9股して金せしめてました。そん時はぐーたらしてリッチなマイライフを満喫出来ましたよ」

「何処までクズなんだテメェは!!何で暗殺者になれたんだよ」

「たまたま9股の1人がアサシンの娘で、いきなり闇討ちしてきたから、返り討ちにしただけなんだよ。才能って怖いよな。自分でも思うよ」

「気を付けて背筋伸ばしてろ~!」

「はいぃぃ!ラジャっす!!」

再び停止するベルサジュ。周囲の目線より重要な事が今、この空間にある

「つまりだ!女は金が男よりかかるんだよ!金稼いでも、ネイル行ったり、エステでメンテかまして、携帯払って男に金渡したらもう底が見えるんだよ!いいか!?この社会情勢の情報量は高ぇ。今日は授業料は免除してやる。さっさと払えやぁぁ!!」

静まり返る空間。誰かが立ち上がり涙を流しながら拍手をした。やがて歓声が挙がり喝采へと変わる。町が、人が、世界が。この瞬間から全てが

「変わるわきゃねぇだろが!何か妙なテンションで訴えても俺は割り勘貫くかんな!」

「俺は女はどうでもいいけど、金の成る木なら困ったら利用しようと思う。とりあえず笑顔で近付いて最初は奢って、安心したら徐々に金貰って額をあげようかなって………学ばせて貰いました。師匠」

ペコリと頭を下げた瞬間、猟銃で殴られ、テーブルに顔がめり込むベルサジュ

「だったら話は早ぇ。シンプル要望だ」

Sickは立ち上がる。親指で出口を指し挑発した

「勝負だ。ケリつけようぜ」

不適に笑うファトプリカ。トウモロコシと水から作る発酵性飲料のアトーレを飲み干し、外へ出た




「ベルサジュ・シェイダーか」

ティオーレは庭園で降り積もる雪を芯に感じ佇んでいた

見渡す景色が白く冷たい幻想世界で、自然をこよなく愛する彼女は吐く息と共に全身を肌で感じていた

「才覚は既に開花している。茎から瞬く間に生を受け蕾の息吹が芽吹くように」

秋の兆しから咲くナナカマドの花を雪が覆った。冬の訪れは兎の毛を白くし、リスが高い所に営巣した

「ヴァレンティーナ。まだ、お前は世界を知らない。この先の道標はどう示すかだ」

それは安否よりも深く芯根にある暖かな心である。歩き出し、鋼鉄の意思を持つ生きた伝説は振り返る。その視線の先は

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