『Winter Under』




野次馬が賑わいを更に煽り、対峙する二人を円上に囲った。視線が交錯する

「けっ!スカシ面ぁぁ。廃れ過ぎてスカシっ屁面に格上げだおらぁっ!散々殴られてまだ、懲りねぇのか!?」

「るせぇ!クソプリカ。わざとやられてやったんのをまだ理解出来ねぇらしいな?クタバリ損なった以上は奥の手があんぜ」

右手首を何度も回し、人差し指のみをファトプリカに向けて突き付けた!歓声が沸き拳を上げた。高々と

「行けあんちゃ~ん!」

「男を見せろ~!」

背後から追い風のような同調の声の正体達は同性である!口笛や感情の高鳴りを示す足踏みがテンポ良く響く

「軟体動物共が、くっだらねぇゴツゴツした肌を寄せ合い、いかがわしくしやがっておらぁっ!可憐な女共の連携プレイで潰しまくってやるぜ~!」

中指を突き立て煙草を吹き捨てるファトプリカ。黄色い声援を受け、猟銃を地面に起き構えを取る

「やっちゃって~!」

「男に目にものみせろ!」

「たりぃしぃ~♪」

満天の星空が輝き1つの流星群が次々と頭上に動く。深夜の飲食店の空き地での出来事。住宅街からの苦情は免れないが熱気が収まらない

「行くぞおらぁっ!」

突進するファトプリカ。左拳を直進させるSick!

その時!




「嫌いじゃない。この季節も気象も」

「私も同意だ。やはり故郷とは懐郷と相違無い」

白日の冬景色に溜め息を混ぜたティオーレ。隣にいる男は

「私は世界の世情に身を置いた時、節々にこの国の在り方を良く学んだ。破壊と弾圧に潰された後に残るのは灰と沈黙だ。そして降り注ぐ自然が覆い包む」

「苦い記憶と共にか。夢を抱き忠誠を国に近い、死地をこの手で作り出した後も………血に染まり汚れても愛国心で震い上げた。神に誓い、悪に堕ちても」

「それが生きた伝説の殺戮の系譜か」

「ただ屍を躊躇無く踏み続けただけだ。お前もそうだろ?TANATOS(タナトス)」

短い白に近い銀色の髪の男ーーTANATOSは視線を雪原に向けた。遠くの狼が吠える。何かを示すかのように

「ただ、生きる理由が戦場にしか無かった。器用に生涯を静かに過ごす理屈が欲しかった時は遅かった」

TANATOSの灰色の瞳が捉える夢の途中は、未だに補食を識別する肉食獣の瞳だろう。狼が飢えを満たす前兆のように

「どうやらSickはここに訪れたようだな」

「愛弟子が気になるのか?そういえばCIPHERD-CITYで消息を絶ったらしかったな」

「あれは偶然の産物だ」

疑惑の浮かぶ言葉がティオーレの表情に吹聴したかのような神妙な心境も芽生えた

「世界から抹消された隔離都市。政界と財閥と権力で隠蔽した未確認所在地」

告げる確信の言葉の前に執事から応答が入る

「まもなく強風が吹き荒れる。続きは邸内で話そう」

「失礼しよう」



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