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Sickは早走で携帯へ取り出し連絡をした。タクシーへ乗り目的を変更する

-んだよ。もう面会わせか-

目を閉じイメージを浮かべ、事態を辛く見つめては沸々と沸き上がる黒い情を内側に留め、シュミレートした。それは確かな衝突の前哨である。目的地迄、ゆっくりとする暇すら無いほど張り詰めていた


3時間後

有刺鉄線と無機質の廃棄場所へと足を踏み込んだ。オート型の銀色の愛銃アンダラウド・ダウドを手に持ち、歩き出す。冷酷な青い瞳が更に冷ややかな視線で捉えた。ギシギシと不快な音を立てた鉄骨の橋の中央に佇む男。広がるガラクタの世界を眺めながら

「来たか」

言葉を放つ。それは一切の微塵も感じさせない突き刺さるような鋭利の心を込めた

「ベルサジュ。訊きてえ事がある」


「あそこだ。遥か先の蒸気機関車 あの鉱山を通る列車に乗って新しい場所へ行く。それが楽しみだ」

「るせえ。また、前置きが長ぇ御託ばっかヌカしやがる」

「旅は醍醐味だ。暗殺を縄張りにする人殺しの有意義は案外日常だ。標高ある山岳をゆっくり列車が走り、この瓦礫一帯を眺める時に思う。後、一歩間違えたら崩れ落ちて "すぐに終わる" と」

「んだよ。何を比べて語ってやがる」

「今回、俺は依頼でテレンス報告書を奪還する為に軍事開拓国家へ入国した。難儀な国境を通過し、あの官邸へ侵入した。そして俺は生きた伝説………ティオーレ・テンバランスと戦った」

草臥れた柵に身を預けSickは愛銃をガンホルダーへ戻し、同じ景色を眺めた。瓦礫と鉄骨の隙間から見える山岳地帯の山頂付近の鉱山を。火山列島でもある為に炭鉱目的で訪れる場合は環境連盟財団へ特別許可書を発行し、鉱山管理組合に許可書を認定して貰わなければ入場不可である。それだけに列車に乗るだけでも手間がかかり、一苦労は免れない

「俺は一矢報いる覚悟で挑んだ。初撃で必殺を与える威力でな。かつてお前と死闘を繰り広げたあの時のように」

視線をベルサジュ・シェイダーへ移し、右手の掌を眺め、苦痛に浮かべる姿を見ていた

「あっさりだ。俺の蹴りを楽に払い、更に鋭い延髄蹴りで一瞬で意識が飛んだ。全く………今迄の死地を越えた戦歴が全て潰された。敗北とはあっさりと結果が訪れ後でじわじわと痛感するんだな」

Sickは僅かに吹き出した。右に同じく感想を述べられ改めて敗北感が滲んだ

「だが、生きている。俺はあの列車に乗り景色を楽しんだ後にもう一度、更に暗殺に磨きをかけ再戦を申し込む」

「おい、何吹き果ててやがる?マジかよ。だったらバケモンになって心臓止まっても反撃出来るサイボーグになりやがれ」

「そうだな。まだまだ俺は弱い。過信した強さを捨て、更に暗殺術を昇華する。その前に」

Sickと向き合う。拳をゆっくり握り締め、激情を向けた

「暗殺と抹消。どちらが上か試してやる」

「マジかよ」

その時、遥か先の炭鉱から謎の爆発音が聴こえた

「何だと!?」

「まさか襲われてんのか?」

殺気を消し、親指でジェスチャーするベルサジュ

「付き合えSick!今から原因を探るぞ」

「何なんだテメぇは!」


瓦礫地帯を走るSickとベルサジュ

「まずいな。優先特許が出来てしまった。あの場所は駄目だ」

「一体、何があんだよ?」

「謎の鉱石があると噂で耳にした………大変希少価値があり、興味があった。それを奪うつもりで破壊するなら俺が頂く」

「おい、景色で満足するんじゃねぇのか?」

「幾つか、侵入経路を確かめる為に何度も機関車に乗ってたら無理なら景色で満足していただけだ。くそぉ!!」

「随分、長え前フリだったなおい!だったら列車から飛び降りてやり過ごせばいいだろうが」

全速力で走るベルサジュに付いていくSick。愛銃で障害物を払い、コンテナの山を飛び乗りながら、目的地へ近付く

「………あ、あそこは火山岩もあるから場所を間違えるとや、火傷するかも知れないだろ」

「ザケてんじゃねぇ~!んな事に今気付いたのかよ」

「環境には優しいんだよ俺は~!お前みたいにむやみに壊したりしない」

「て、テメえ………案外タコなんだな」

顔がひきつり、青筋立てるSick。更に爆発が立て続けに発生し火山から地鳴りが響く

「俺の鉱石が!早くしろSick。役に立てよ」

「マジでタリぃ!何だってんだよ」



現場は現地の人や関係者等騒然とし、サイレンが至る方向から近付いて来ていた

「クソ!ほぼ倒壊している。此所まで規模がデカイと」

「こっちの隙間からなら入れるんじゃねぇか?」

入り口から迂回し、崩落した岩と岩に人一人通れる入り口を発見した。ゆっくりと近付き岩に触れる

「程好い温度だ。半身浴に適している」

「ほらな!いったじゃねぇか。まだ溶岩くせぇのが頂上付近に見えるが、観光客とかは入り口付近の観覧ならオッケーなんだろ?」

ベルサジュは動揺を隠せなかった。余りに耳を疑う発言に立ち尽くした

「お前は存在が節穴か?俺達裏の根城達が堂々と入るなんて端くれ以下だ」

「テメェは散々、遠くから見てた目が節穴だろうが!関係者装って、さっさとかっさらっちまえばいいだろが!後は複製頼めば済むんじゃねぇのか?裏の根城で寝てばっかいっからイージーな事に気づかねぇんだろが!」

「だが、今の状況は極めてベリーな位ハードだ。あれを見ろ」

岩の隙間から炭鉱内を覗き見ると俊敏な速度で次々と作業員を気絶させる小柄な女性が居た

「は、速い!あれほどの動きは滅多に無いぞ?策を練ろうSick」

食い入るように小柄の女性を眺め、ベルサジュは息を飲んだ。あらゆる可能性を脳内で構築し打倒する手段を選択した

「瞬間的に行動範囲を制限する連携で距離を潰そう。そこから更に攻撃要因を削減し、単調な………?」

気がつけば掌を額に当て呻いているSick。その姿に

「どうした?今から奇襲に………?うわっ!」

それは不意討ちである。凄まじい勢いでベルサジュとSickの方へ突進して来た。入り口へ入り最速で蹴りを繰り出すベルサジュ!上体を倒し、滑り込み岩壁を蹴り背後へ回った

「おらぁ!遅えっ!!」

延髄を蹴られ一瞬で意識を絶たれたベルサジュ。入り口へ覗くと

「まだ懲りねぇのかスカシ面ぁ!殴られ足りなくてマゾになりやがって。暑い場所なのに震えちまうよ………うう。何だこのちょっと雑魚は?」

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