第13話

『Esthetiek en vulkanen』



「何か私が保護者みたいじゃない。実際は逆よ」

ヒールの音が勢い良く鳴らしながらCARRYは身振り手振りしながら両脇の二人の頭を撫でながら歩く。上機嫌な為である。まんざら嫌では無い少年と片目を瞑りながら笑顔になるプレマテリア。晴れ晴れな午後の空と活気付いた街に解放された為か軽快なCARRYの緑色の瞳に映る景色は爽やかである

「ねぇ、どれくらいの危険階級?」

「LOST-FAUND」

動揺し僅かに視線を逸らすプレマテリアは、ショルダーバッグの紐を強く握り、少年は依然、無表情である

「そ、それってどういう事か全く理解できない」

「理解か……あの衝撃から数年経ったけど脳裏から離れない。だが今回は何か違う気がするよ」

歩幅を広くする少年と小走りになるプレマテリア。その前方で後ろで手を組みながら歩くCARRY。周囲には様々な人種の沢山人々

「どの位の規模で観測してるの?」

「この見渡す限りの人の数……かなぁ?」

ー数百人は下らないのかー

「空気中の汚染からの現象?それとも変異からの不可侵領域が悪癖と重なる事態なの?」

くすりと笑い悪戯な表情になる少年

「前者なら大気汚染を主体にした有害現象。後者ならば」

「……常軌を逸した超越現象」

二人の足跡が止まる。見上げれば大人の女性。両手を腰に当て保護者の顔して見下ろしている

「子供らしい会話を一つでも織り交ぜなさい」

「それって……どんな?」

「天才の苦悩はささやかな事だよ。CARRY……僕が輝きの無い瞳で″待って~あはは~!″とか訊きたいのかなぁ?″僕が捕まえたらカジノで君が60000$注ぎ込んで派手に豪遊する番だよ~″とか言ってお花畑で子供の遊戯を楽しめばいいのかな~?」

「何でそういう発想になんのよ!」

「僕、競歩だったら捕まらない自信あるかも」

「アンタも!?」

騒がしくも愉快な一時



Il tempo【同時刻】



Sickは自然動作を織り交ぜ後ろを向く。視線のみを動かし周囲を見渡す振りをしながら正面を見れば猫背の銀髪女が飲み干したフルーツジュースを僅かでも残したく無い為、ストローをかき回し氷を溶けさせコップの中を空にする為である。ガラガラと音がする。だが、瞬きはせず深く息を吸い内心に感情を込めた。深海の底で微かに光を灯しながら輝きを消さずに

ー刺客かー

中央にテーブルが一つ。正面は三つのテーブル、景色は木製の壁に植物があり、音は様々な声と遙か先の波の音。後ろの椅子がガタリと鳴り着席した。僅かに視線を上に向けテーブルの上にある炭酸水を銀髪女のテーブルの方からわざと手を伸ばし飲み干した。少なからず七つはある色とりどりのドリンク

「やだぁ、私が一番楽しみにしていたサイダーだったのにぃ~」

一瞬喉仏が警鐘を鳴らし炭酸が食道で踊るが耐え凌ぐ

「る……せぇ。俺の好物が目に移る場所にありあがるのが悪ぃ」

口元を膨らませ、テーブルに軽く握り愛嬌を醸し出した

「この人の皮を被った悪魔ぁ~もう、知らない~!」

テーブルから立ち上がる

「メニューはお決まりでしょうか?」

椅子から立ち上がる時に妨害が入った。刺客は座りながらメニューを頼む瞬間、銀髪女が横切る、無邪気な表情の裏腹に秘めた豹のような獰猛の瞳。殺気を消してはいるが一瞬で肉食獣の喉元に牙を突き刺す狩猟の野性

「かしこまりました」

深々と頭を下げるwaitress。直後、Sickは撃鉄を取り出しSalender【催眠消音弾】で発砲!同時に銀髪女はwaitressに声をかけ

「アップルパイもう一つ。後、トイレはどこ~?」

童顔な眼差しと身振りで無知を装いwaitressに案内を頼み、テラスから退出し、Sickは立ち上がり、催眠状態の刺客の着衣を調べた


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