AWAKE 本編2 エピソード20
『過ぎ去りし日々に開墾』
「久しぶりだVALENTINA【ヴァレンティーナ】。あれからどうなったかは気掛かりだったが」
嗄れた声が安否を含めた言葉を投げかけた。それは今から約、5ヶ月前の地図から抹消された隔離都市で起きた事件概要を仄めかす言葉だった
「デュアリバデス………アンタがここ迄に至った経緯が知りてぇな」
戦闘に於ける態勢を解き壁に寄りかかったSick。攻撃を止め背を向けず距離を取るWET。眉根が変化し、握る拳をコートに入れた
「テレンス報告書を持ち主に戻す事が目的だ。それ以外は無い」
曇りの無い眼差しで一瞥した。風格は維持し淡々と語る 揺るがない姿勢であり世界を股にかける英雄の威厳が周囲に突き刺さる
「つまりはさ~ここにいる人達の条件……って所かしらね?」
反対側の道で3人を挟むように語るBLAIR。変貌速度が少しずつ前よりも遅くなる。戦闘思考も薄れあどけない笑顔を振り撒いた
「俺は持ち主のティオーレと直接連絡した。返す以外の用途は無ぇ」
吐き捨てる言葉は周囲に漬け込む隙を与えない威圧でもある
「残り半分の内容を見てぇ。それだけだ。拒否ったら木偶の英雄ごと八つ裂きにしてやる 対処法はもう掴んだ。すっげ~な。自分自身に酔うぜ」
両手で仕草した銀髪女。猫のように愛嬌のある目の奥に豹のような覗き込む視線をBLAIRは感知した。真っ黒な瞳が暗く沈む
「他国に譲渡する……が、出来ないなら諦めるだけだ。ちっと別件もあるからな」
WETは携帯を取り出し【目的地】を確認した
「じゃあな。降りる」
「WET!」
呼び止めるSickの声は怒声に近い
「随分、都合よすぎんぜ。何かを」
「企んでるに決まってるさ。だが、この状況で立場悪すぎるのも好条件な取引も無い それは確かだからさ。それに………」
銀髪女と目が合い交錯したのは
「やたら報告書に興味を示したのは知りたい事があってしかもそれは肝心な事なんだろ?TRY-GUNGEASTARぁぁ!?」
「けっ!知らねぇ方が世の為なんだよ。好奇心全面に出すなら、まずは身を守る巨大な後ろ楯作れ半ザコ」
「何となく解った。満足だ」
英雄、デュアリバデスの横を通り過ぎ姿を消したWET
「さて、ならば報告書は誰が届ける?ヴァレンティーナ」
「しっかり届けるぜ。つうか、じゃねぇと俺がトンでもねぇ事になる」
その時軽快な靴の音が響き何も無い掌から報告書が出てくる 手品のように。それをSickに渡す前に素早く手を動かし手に取る銀髪女。確認する
「………成る程な。これが発端の要因になった訳か」
目を閉じ息を吐くSick。喫煙者なら既に火を点けるが禁煙の為、僅かに頭皮を撫でた
「おら、スカシ面!これで間違い無ぇ。全部だ」
受け取るSick。バインダーファイルをコートの裏から出し近寄るデュアリバデス
「しかしまさか残骸者が関与するとはな」
「他国に売るとしたら何処の国だったのかが引っかかんぜ。それがまさかよ」
自然の旧知の仲の会話に混ざる初対面のBLAIR
「合衆国なら………危ない話しだったわねぇ!まぁそれでも……とりあえずここ迄」
「まてやぁ!」
叫ぶ銀髪女!鋭い豹の眼光を向け足止めさせた
「名前を教えろ」
指先を顎に当て上向きになり唇を尖らせ………笑みを浮かべた
「BLAIR【ブレア】。またね」
そしてその場から立ち去る。何故か背後を見せているが正面で顔合わせしている感覚だった
「デュアリバデス。アンタはまさか」
「悪いが悪用目的なら」
「そこまで人生博打して大損するほどギャンブル運強かねぇよ。へっ!」
互いに笑みを浮かべ、姿を消したデュアリバデス
「まてよ」銀髪女は壁に掌を当て考える。表情は険しく、すぐ横の二流俳優のポスターに手が当たれば顔面に拳を炸裂させていただろう。それだけ不快であり内情の淀みを実感していた
「まさか……アイツがBLAIRか?」
-銀髪女は俺の五歩後ろで両手を組みながら何かを考えているようだった。そして本来の目的の場所にある寂れたBARの前に着いた。ここは裏家業を始めた時に知り合ったオッサンの遊び場で好きに使わせて貰ってる。外見とは少々違うのが中身であり扉を開ければ……………ただのだっ広い部屋に中央に木製のテーブルと椅子があるだけだった。後はバカでかい冷蔵庫と蛇口が八つ 捻る所にプレートが付いてて味は違う。当然水じゃねぇ……ダイニングはあるが食器棚も無ぇ。冷蔵庫の横に収納入れがありコップだけがある 天井は電球一つ。高さは3メートルって所か 昔は外見と一致する店だったがオッサンにも本職がありその答えは奥に通じる部屋が答えを示したー
「おい、銀髪女!」
「ファトプリカだ。そのノーマルな呼び名は格別頻度を下げるからノーだ。ケッ!」
椅子に座り背中に背負っていた装飾をあしらった細長い楽器入れを置く 中身が相違なのは言う迄も無い。悪態を突くが年代を彷彿させる空間に少々落ち着く銀髪女………ファトプリカ
「何か飲むか?」
「トロピカルドリンク。配合間違えんなよ、ケッ!」
世上は多方面全てが標的を模索する事態が把握出来る程だった
行き交う人々が事件が多発し視線を横断させながら逃げまとう。子供が躓けば慌てて近寄り抱きかかえ颯爽と逃げ出す 誰もがこの場所から遠退きたくなる。複数倒れていた警官に肩を貸す同業者や現場検証 そして高台から倒壊した瓦礫を撤去する作業員達。半生を街と共に生活する人も今日の出来事で引っ越しを考慮する人も多いだろう。中には嫌気が指した
「しかし派手な事態になったな。通り抜ける手順はしっかりしないとな」
依頼主に連絡するWET。視線を幾ばくか送りながら
「悪いがずらかる」
通話を終わり愛車の二輪迄走っていった
その背後に迫る謎の刺客
「停まりなさい!前方の車」
激走する!何かと衝突すれば大破しかねない程の速度超過。決して目的を達成するまではスピードを緩めるつもりはない!
「しつこいな!中々の激しいカーチェイスだな。ハッ!!」
やがて直進すると人影が見えた。その姿に神妙な顔する少年と笑うVERMILIONに笑顔が耐えないプレマテリアとCARRY。ジープが通り過ぎた瞬間!パトカーが傾き歩道に暴走し民間人に衝突!そのまま引きずり飲食店の壁に激突。後続車のパトカーも被害にあう
ジープは走り去った
悲鳴の歓声に近い声でCARRYは名を呼んだ
「リパーク!」
肩を僅かに上げ舌を出し合図した
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