砕き崩れ亡く未の夢





2005年9月の故郷に似た部屋の出来事

「夢はある?」

ソファーで寝そべる男へ向けた言葉の真意は寛容とも言い難い。当然ながら軽々しく口にした言葉なので本来ならば悪態が返ってくるだろう

「私は昔はあった。何故ならありきたりな人生とは程遠かったから。子供の頃は」

なぞる指先は肉体では無く何となく壁だった。無意識である。ソファーに横たわる死体は意識を強く持ち自らの手で亡き者にした

「だからあまり興味ある物事は普通だった。生活も平凡で豊かな暮らしも気に止める必要無い。そんな日常が愛しいといつも思っていた」

扉を開け、証拠を消し去った一室を後にする。何となく振り返り安らかに眠る亡骸に視線を送った

「じゃあね。とりあえずアンタのお陰様で日常を楽しめたよ」

スカーフを腰に巻き扉を閉めた




DAZZINGは稀に振り向いた過去の人生を傍観する時がある。それは欲の捌け口と逃避をさ迷う脆さでもあった

「さて、ここからだな」

車を停車し、携帯を操作する運転手の男は同業者である。灰銀の髪が輝きと陰りを持ち、鋭い瞳は青く透明のようで何処か先の道を見据えてるようだった

「行くぜDAZZING。アジトにしちゃあ味気無えが、妙なトラップがあんなきっと」

「そうね、Sick」

返答した相手とは3年前に知り合った。スウェーデンのストックホルムで起きた連続爆破事件の真相を知るただ1人の関係者である。第2のストックホルム症候群とも取れる籠の中の汚れた鳥が憂鬱な心を弄ばれ発生した陰惨な事件を解決した男である

「何かよ。こんな感覚は久々だぜ」

「何がいいたい?」

「罠は当然だがそれだけじゃあねぇ。何か胸糞悪ぃザってえ事があんぜ。」

DAZZINGは思い出した。初対面の時は互いに依頼人が違えど、事件真相に究明した時には共感した事を

「籠の鳥」

「んだよ?いきなりソレが何で出やがる?」

「あの時解決に導いたのは私達の中に事件の首謀者がいたわ。お前はあっさり見破った 最悪は免れたわ。だが」

「関係者は全員クタバったってオチか。二択に迫られたら手ぇ打つしかねぇ」

車から降りたSick。ジャケットの内ポケットから紫色の弾丸を取り出し装填をした

「あの時、犯人が何故解った?」

「ん?決まってんじゃねぇか。要求や射撃は被害者の女がやってただろ?定期的な時間が大体、昼の一時と夜の七時だったからな。飯食わして殺し教えてちっと善意漬け込んで猟奇的なサイコパスに仕上げやがった。つまりは身近で俺らか警察の中に紛れ混んで遠隔に指示してた奴なら携帯を傍受するのにかすめ取れば解決じゃねえか?ソイツは今頃アメリカに移送されて犯罪解決対策部隊の参謀やってたか?実行したあのカスはブッ殺しちまったが」

車のドアを開けたままで正面の廃墟を睨む。寂れた正面の門があるり、監視カメラや音声記録媒体は確認されていない

「勘でそこまでか。お前は」

「いや、携帯打つ奴の面拝んで目星付けただけだ。後は声色で選別して最悪全員ブン殴って何とかしただけだ。土壇場でな」

ゆっくりと歩きながらトリガーを引き発射!門に弾丸が当たった瞬間、煙が蔓延した。即効性の毒薬である

「も少し待て。誰かいんなら炙り出せるぜ。吸ったらクタバるだけだが。へっ」

犬歯を出し悪戯に笑う。煙が消え、指先で合図し、少しずつ近付いた

「ん?門の奥にバックがあんな」

「私が行こうか?」

「俺が援護の方が適してっけどな。そうするか?」

「………だな。頼むぜ」

DAZZINGが歩き出し、Sickは車のドアの上に腕を起き携帯を取り出した。罵声を間髪入れずに吐き出すロッカートが画面に映るが、皮肉な状況であるため唇が上がり通話を切った

「そういえば………あの時の被害者の子はどうなったんだ?」

「ん?ああ、あのきったねぇタヌキみてぇなヌイグルミ持ってたガキか。何か日本にいるって話しだぜ。結局、里親にもたらい回しで長嶺って海軍のヤツの家で養子になったとか」

「そんな事がか」

「んだよ。仲良かったのか?そういや、救出する時もよく喋ってたか?まあ、マトモには暮らせねぇだろ。脳を一回ブッ壊されてっからな」

「でも………生きてるなら」

寂しそうなDAZZINGの表情が何故かSickには嬉しそうに見えた。空を見上げた時に錆びた香りがした





前夜の決行の時

「行くぜ!」

エンダムは大量の導線を投げ、周囲の気温を観測した

「はぁっ?何だよこの異常さは?」

大雪が降り積もる軍事開拓国家の気温。目を疑った

「9度?いつもより20度も高いのか?異常気象も良いくらいだ」

吐く息は白く無い。雪景色が綿で敷き詰められてる部屋のように感じた

「行くわよ!」

DAZZINGが走る!森林を駆け抜け無数の糸を張り巡らせた。木々の間や至る箇所を無造作に

「来たぜ!ここだ!」

導線を更に被せ、固形のスイッチを押した。激しい爆撃が発生し火災に発展した

。更に進行する

「毒牙の鳥が!」

空に鳴交喙が旋回した。西の領域から一部が流れてくる爆発で焼き尽くされた木々が倒れる隙間をエンダムとDAZZINGが駆け抜ける

「さて、次はどうする?」

「決まってるでしょ!同じ爆発を後、三回起こすのよ!」

導線は耐熱性である。糸には極小型の爆弾を仕掛け、吊るした状態で設置し導線に触れた瞬間にDAZZINGの指先で操作する。無尽蔵に爆発する森林の経路は徐々に輪郭を浮かべた

「ダイナマイトより破壊力が断然あるな。その爆弾は?」

「試作品を試されるように命令されたわ。昔は兵器開発で第一次世界対戦で活躍した科学者みたいだわ。NULLUMって言ってた」

「DISEVENES(ディセヴェネス)か?世界鎮圧を遂行した当時の7人の裏世界の支配者。まだ、生きてんのか?」

「ええ。耳を疑ったわ。見た目がまだ子供なのに111歳らしいんだわ。何か話し方も子供だし」

「末恐ろしいのに輪をかけてなんか笑っちまうな。どんどん行くぜー!」

更に爆発が起き、上空の監視が空を迂回したままである。その時東のルートで確認したWET

「突っ切る」

山岳地帯をバイクで駆け抜けた



『Limited-Raves』



「このクソリボンアバズレが~!」

罵声を撒き散らし特攻する銀髪女!最速で至近距離に迫る為飛び込む

「速いのよ。そうよね」

軋轢が更なる機転へ変化した!拳が届く距離迄詰めた瞬間に、腕を捕まれ、空中で引き寄せられた

「絡め取れば捕獲ね」

重力を支配され更なる追い討ちの恐怖

「この不感症がぁー!」

捕まれた刹那、下半身を後方に回転させ間接に衝撃を与える。だが

「軽い。アダね」

背中を見せた瞬間に延髄に冷や汗が走る。手套!

「うらぁ!ゴミ臭え!」

両手を最大限に振り、上半身を回転させ振り替えり、拳を直進させた銀髪女。左方向に遮断し、リボンに触れ地面にひらりと落ちた

「なぁっ!?」

大地に引き寄せられ、激しい音と共に倒れた銀髪女。脇腹を攻撃され、更に肢神経に電流が走るかのように痙攣を浴びた

「平衡感覚よりも確実なのは一時的な麻痺ね。戦闘経験で思わぬ報復は嫌だから」

-こ、コイツは………!-

肉体を起こす直後、追い討ちの蹴りを両手で受け止めるが威力で後方に吹き飛び。鉄棒が背中に当たり三半規管に悪影響を及ぼし吐血

。踞る

「歴戦の勝者は敗走を避ける為に、踏みにじる反撃の用途を持つ。あなたはさしずめ反応速度と反射神経がずば抜けてるのかしらね。この数秒の激突で一部隊鎮圧する位の労力よ。厄介の極みね」

ふわりと束ねた髪が解け、ストレートに変わると雰囲気も少々違うが、脱力する肉体に更に意識が朦朧とした。全身の肉体の疲労が蓄積するが、振り絞り前進する………筈だった

「次はどうするの?」

更なる蹴りが迫り、防御するが、鉄棒に背中を押し付けられ更に逃げ場を無くした。筋力すら奪われ

「万事休す。ここで」

「バルフォードさん!無事ですか!?俺は駄目です。助けてくださーい!」

その一瞬、僅かに力を加減し隙が生じた。押さえ付けた足を腕力で押し返され、均衡が砕けた。一瞬で鉄棒を蹴り跳躍!次の瞬間

「らあぁ!この幸運も」

低空で飛び込み、顔面目掛け殴りつける。速度に対応しきれず防御が遅れた

「実力だおらぁ!」

持てる力を全て叩き込む。無差別な連撃で攻撃しするが全て直撃は無かった。だが最後に蹴り上げた反動を利用し、公園の入り口迄飛び込み着地した

-ちいいいぃぃぃ!!!-

その表情が歪み舌打ちをする。標的を逃し、更には逃亡すら許すキッカケは攻防の時に耳から落ちた受信機の音声が漏れる失態である

「バルフォードっつったな?」

去り際に銀髪女は指を指し、睨み付けた

「その面と名前、忘れ無ぇ!!」

走り去る銀髪女。少し沈黙しリボンと受信機を手に取る。イヤホン式であり、携帯電話と連動しGPS機能も搭載してる為に相手の居場所も特定出来た。吹き上がる怒りの矛先。それは

「私は優秀な部下が欲しいわね。どうしてくれようかしら」

握り締めた力が強く、リボンを再び結び目的地へ向かう。大地を踏む力が更に増し部下の元へ向かった




色彩が宵闇の中で微かな散らばりを見せ、夜中の景色に難色が加わる

それは人の心を映し出す困惑の不可視

Sickは地面に視線を変え、慟哭の憮然さと何かの前触れを感じずにはいられなかった。その心の蟠りの答えに対する追求の催促を胸に秘めながら

「これから開ける」

返事は手を振り返した。何となく言葉を飲んだのは冬に近付く寒空に凍えた訳では無い

「罠は付いてないか。警戒を頼む」

DAZZINGの言葉に反応し、撃鉄を持ち静かに近付いた。だが距離を保つ事も含め援護に徹する

-何が起きやがるか-

DAZZINGの性格を理解してはいる。冷静と慎重の間に躊躇を跳ね退ける激情に駈られる性分がある

-前にストックホルムでガ、犯人を半狂乱になってブッ殺したな。ありゃ危な過ぎた。たまにあるよな………突然、逆鱗に触れたみてえな-

そんな過去の悲惨さを連想した。丁度今のような光景だった

「………?どうだDAZZING。何も」

「ひぃやああぁぁぁぁぁぁ!そんなぁ!!」

その裏声の発狂は風がざわめいた。鳥が無数に羽ばたく

「おい!どうした!?」

「う………うぅぅぅぅ」

両手を頭部に当て崩れ落ちながら渇いた悲鳴を泣き叫び続けた

「あ………あぁぁぁ………うわぁぁぁぁ!!!」

突如、立ち上がり走り出した!獣のように前のめりになりながら廃墟の方へ

「待てよ!深追いすんな。何があるか解らねぇだろが!!」

撃鉄を構え近づくSick。門を越えた先の鞄へ近付いた「DAZZING!」

気が付けば姿が見えなくなっていた。立ち尽くした後に恐る恐る

「な………何!?一体」

鞄の中身を確認した



『Limited-Raves』



「このクソリボンアバズレが~!」

罵声を撒き散らし特攻する銀髪女!最速で至近距離に迫る為飛び込む

「速いのよ。そうよね」

軋轢が更なる機転へ変化した!拳が届く距離迄詰めた瞬間に、腕を捕まれ、空中で引き寄せられた

「絡め取れば捕獲ね」

重力を支配され更なる追い討ちの恐怖

「この不感症がぁー!」

捕まれた刹那、下半身を後方に回転させ間接に衝撃を与える。だが

「軽い。アダね」

背中を見せた瞬間に延髄に冷や汗が走る。手套!

「うらぁ!ゴミ臭え!」

両手を最大限に振り、上半身を回転させ振り替えり、拳を直進させた銀髪女。左方向に遮断し、リボンに触れ地面にひらりと落ちた

「なぁっ!?」

大地に引き寄せられ、激しい音と共に倒れた銀髪女。脇腹を攻撃され、更に肢神経に電流が走るかのように痙攣を浴びた

「平衡感覚よりも確実なのは一時的な麻痺ね。戦闘経験で思わぬ報復は嫌だから」

-こ、コイツは………!-

肉体を起こす直後、追い討ちの蹴りを両手で受け止めるが威力で後方に吹き飛び。鉄棒が背中に当たり三半規管に悪影響を及ぼし吐血

。踞る

「歴戦の勝者は敗走を避ける為に、踏みにじる反撃の用途を持つ。あなたはさしずめ反応速度と反射神経がずば抜けてるのかしらね。この数秒の激突で一部隊鎮圧する位の労力よ。厄介の極みね」

ふわりと束ねた髪が解け、ストレートに変わると雰囲気も少々違うが、脱力する肉体に更に意識が朦朧とした。全身の肉体の疲労が蓄積するが、振り絞り前進する………筈だった

「次はどうするの?」

更なる蹴りが迫り、防御するが、鉄棒に背中を押し付けられ更に逃げ場を無くした。筋力すら奪われ

「万事休す。ここで」

「バルフォードさん!無事ですか!?俺は駄目です。助けてくださーい!」

その一瞬、僅かに力を加減し隙が生じた。押さえ付けた足を腕力で押し返され、均衡が砕けた。一瞬で鉄棒を蹴り跳躍!次の瞬間

「らあぁ!この幸運も」

低空で飛び込み、顔面目掛け殴りつける。速度に対応しきれず防御が遅れた

「実力だおらぁ!」

持てる力を全て叩き込む。無差別な連撃で攻撃しするが全て直撃は無かった。だが最後に蹴り上げた反動を利用し、公園の入り口迄飛び込み着地した

-ちいいいぃぃぃ!!!-

その表情が歪み舌打ちをする。標的を逃し、更には逃亡すら許すキッカケは攻防の時に耳から落ちた受信機の音声が漏れる失態である

「バルフォードっつったな?」

去り際に銀髪女は指を指し、睨み付けた

「その面と名前、忘れ無ぇ!!」

走り去る銀髪女。少し沈黙しリボンと受信機を手に取る。イヤホン式であり、携帯電話と連動しGPS機能も搭載してる為に相手の居場所も特定出来た。吹き上がる怒りの矛先。それは

「私は優秀な部下が欲しいわね。どうしてくれようかしら」

握り締めた力が強く、リボンを再び結び目的地へ向かう。大地を踏む力が更に増し部下の元へ向かった




色彩が宵闇の中で微かな散らばりを見せ、夜中の景色に難色が加わる

それは人の心を映し出す困惑の不可視

Sickは地面に視線を変え、慟哭の憮然さと何かの前触れを感じずにはいられなかった。その心の蟠りの答えに対する追求の催促を胸に秘めながら

「これから開ける」

返事は手を振り返した。何となく言葉を飲んだのは冬に近付く寒空に凍えた訳では無い

「罠は付いてないか。警戒を頼む」

DAZZINGの言葉に反応し、撃鉄を持ち静かに近付いた。だが距離を保つ事も含め援護に徹する

-何が起きやがるか-

DAZZINGの性格を理解してはいる。冷静と慎重の間に躊躇を跳ね退ける激情に駈られる性分がある

-前にストックホルムで、犯人を半狂乱になってブッ殺したな。ありゃ危な過ぎた。たまにあるよな………突然、逆鱗に触れたみてえな-

そんな過去の悲惨さを連想した。丁度今のような光景だった

「………?どうだDAZZING。何も」

「ひぃやああぁぁぁぁぁぁ!そんなぁ!!」

その裏声の発狂は風がざわめいた。鳥が無数に羽ばたく

「おい!どうした!?」

「う………うぅぅぅぅ」

両手を頭部に当て崩れ落ちながら渇いた悲鳴を泣き叫び続けた

「あ………あぁぁぁ………うわぁぁぁぁ!!!」

突如、立ち上がり走り出した!獣のように前のめりになりながら廃墟の方へ

「待てよ!深追いすんな。何があるか解らねぇだろが!!」

撃鉄を構え近づくSick。門を越えた先の鞄へ近付いた「DAZZING!」

気が付けば姿が見えなくなっていた。立ち尽くした後に恐る恐る

「な………何!?一体」

鞄の中身を確認した




亡霊の異名を持つ抹消者は闇に溶け込む。気配を消し呼吸を浅く長く吸い込む

-この瞬間だ-

扇状地へ繋がる台地を馬車が走る。荷台の隙間から覗けば荒野が広がっていた。多少の仮眠から計測した時間経過も予測済みである。荷台から飛び降り疾走!岩山を蹴り飛び越えながら距離を近付けた

「スクラッチ!」

伸縮型のベルトを巻き付けたナイフを投げ、大木に突き刺さる。反動で宙に浮き、公道を走り去る車に着地した。更に助走を付け、跳躍!走り去る車に飛び乗り高く羽ばたいた。転がるように着地したのは

「ここからか」

豪華列車の天井へ身を潜めた



高速で走る列車の追い風は凄まじい威力である。鉄線に当たらないよう回避しながら様子を伺うGHOST

-さて………どこから突破しようか-

蒸気が活気づき煙突の付近へ潜伏したのは音の遮断を目論みにしたからである。近年、列車強盗が相次ぎ対策として挙げられたのはセキュリティ強化である

-間も無くだ-

GHOSTは車両に通じる扉に手に触れた。うつ伏せ状態で取っ手の部分に糸を巻き付けた。ピアノ線である

-内側から認証コードで開く仕組みなら、逮捕してくる筈だ。ならば-

蒸気ドームに巻き付け、手首をしなやかに動かした。反動と強度で強制的に扉が開き、ピアノ線を特殊な鋏で切ると死角になる煙突の裏に身を潜めた

-来る!-

梯子の昇る音を察知し、扉が開いた瞬間………首筋をピアノ線が巻き付き束縛した

「動くな。声帯を網羅した………従って貰うぞ」




品格の高い列車の中は優雅な暮らしを日常とする富豪の集である。金銭の浪費に苦難と判断した。怠慢と贅沢が含まれれば優雅とは程遠い

「ん~ん♪マンダム。実にトレビアーンな味だよ~ん」

フリルの付いたナプキンを着けたふくよかな中年男性。フルコースを食べ終え、デザートを口に運ぶ。ココナッツペーストを生地に練り込んだタルトケーキが美味しく上機嫌な表情を浮かべた。噛めばガナッシュのサクサク感とパイナップルの酸味が広がり満面の笑みが絶えない

「満足して頂けましたか?ヘクター官房長官」

米国紳士のような面持ちの端正な顔立ちの中年男性が安堵を浮かべた表情で珈琲を口に含む。グアテマラの後味が良い珈琲の酸味が食後の胃腸を調整してくれた。上質な空間もテーブルに置かれた一輪の花も安らぎの一時である

「エクセネス国防相君。君とは政界の付き合いも長くなったよね~ん♪。ポクちんも群雄割拠を築いた君との関係は戦友のように感じるよ~ん」

「全く同意です。あの時代があるからこそ今回の大統領選に固紐を結束させた忍耐の数年でありました。8年の歳月です」

珈琲を飲み終えたエクセネスと呼ばれた男性。自慢の上質の口髭を指先で触れた「あの頃は資金調達で多額の軍事費用を癒着した。最新テクノロジーを兵器に投入しペンタゴンのデータベースを改竄し、財産保有者の個人機密情報源を武器製造庫へ同期させた。遠隔地盤変動強制兵器、ガイアパラドクス【地殻軸共振装置】の開発にも成功しましたね」

「あれは最高だよ~ん。地震としか人は思わない位の素晴らしい発明品。大災害すら人の手で可能になったからね~ん♪」

小指を立てミルクティーを飲み、ナプキンで口を拭く。よだれ掛けのように思われても仕方がない程、品位は欠けるヘクター

「人為的な手段で実験台になった国は数知れませんね。大日本帝国は現在も王制こそ無いが巨悪の小国。我らが合衆国の礎に律儀な事で」

「フランス程では無いよ~ん。共和国の名も間も無く投役になる筈だからね~ん。ゆくゆくは奉仕も義務付けられ改新された兵役も担う事になるよ~ん。戦争再びだよね~ん♪」

くぴくぴと喉の音を立て満足に舌を嗜めた。真後ろの席に座る女性に気配りを配慮するヘクター。エクセネスも背筋を伸ばした

「社会体制に変革をもたらしたブルジョア革命も前世紀の恐怖政治からの解放がありました。そして第二次世界大戦………ドイツのマンシュタイン・プランによりイギリスはダンケルクから本土へ撤退。機械化部隊による制圧であっさりと降伏しましたね。いとも」

「だが、フランスには血脈よりも歴史の遺伝子があるよ~ん。それこそが」

「殺戮という名の淘汰。抹消された歴史の系譜………ですね」

互いに交わされた会話が終わり、離席するヘクターとエクセネス。その時、真後ろのテーブルで紅茶を呑みながら待ち人の為に時間を費やすのは

「ずんだ餅が食べたいわ」

セシリア・ハイゼンレイア。気品溢れる女性である

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