REALTAME FORGET




「何か、映画みたいだ。トロッコに乗って地底へ探索なんて大ヒット間違いないよ。なぁ、Sick?」

「ん?さしてありきたりじゃねぇか?冒険ロマンを実感した記憶無ぇ」

トロッコに乗り、不安定な揺れを楽しむベルサジュ。縦横の幅の狭い洞窟を更に奥深く進行する。時折、草臥れた電球や鼠や蝙蝠の鳴き声が木霊した。肉眼で視るには少々明るさが足りないが、不気味な景色が捜索意欲を嗅ぎ立てた。前列に座るファトプリカは寝ている。鼾(いびき)がしてきた

「そんなツレない台詞しか言えないのかお前は?旅の先々でテンション上がるとか無いのかSick?」

「無ぇ。大体は乱闘か奇襲で消えちまうから感慨深くなんざナッシングだ。アサシンが探索楽しむってあんのかよ?」

両目を大きく開き、神妙な面持ちでベルサジュは、横に座るSickに話しかけた

「何を糧に人生を楽しんでるんだお前は?聞く耳の存在に少しは傾けろよ。人殺し以外の生き甲斐は過程前のロマンに酔いしれた後についでの裏家業じゃないか。耳が馬並みに聞き取れない念仏に俺は祈れないぞ」

「ロマン以前にテメェの勝手な聞き間違いで何処に手を合わせる敬意があるんだタコがぁ!仏頂面の能面みてぇな面して少しは暗殺してみろやぁぁ!!」

「そんな奴いないって!大体、返り血浴びて笑う奴とか、致命傷負わせて止めを刺す相手の前に余韻に浸る奴しか俺は見た事無い」

「二人しかいねぇじゃねぇか!さては暗殺者の中でも他と距離がかなりあんなテメェは!?マジでやべぇじゃねぇか!」

「うるせぇぞ萎びた役立たず共がぁ!可憐なファンシーな夢がネクラ臭が漂って血みどろになっただろが!全員、チェーンソーで引き裂いた後に、何で手作り蕎麦作る夢に切り替わんなきゃならねぇのは雑魚共の陰気な影響で潰されちまった。プリチィドリームスリープをよりによって。あまりにも惨めな自分に泣けて来て………ふわぁ」

欠伸をして、すっかり目覚めたファトプリカ。至るところに亀裂が生じ、間も無く倒壊の兆しも感じた。トロッコに設置した前消灯のみの灯りしか見渡す事が出来なくなる程、更に奥深く進む

「あの、ファトプリカさん。聞いていいですか?」

「何で敬語なんだよ?どんなゴマスリで気を使うんだよ?」

「悪い気はしない。何故なら可憐な腹が寝息を立ててきやがった。へーこらする前に何か食い物よこしな。そしたら、擦った手を見逃してやる」

「へへ~かしこまりっス」

頭部を微かにシャカシャカと掻き、胸元の裏ポケットからチョコレートを取り出した。パッケージを見てファトプリカは興味を示した。Sickは下手なベルサジュの気遣いに両目を細める

「ブランマージュ社のビターチョコレートか。悪くない趣味だ。認めてやる」

「マジっスか?テラ感謝な吐き言葉でやがりますね」

「おい、半分ガチな挑発じゃねぇか。チョコなんざどれも変わらね」

一欠片、口に入り思わず飲み込むSick。ふんわりと苦味が広がりカカオの香りがした

「只のチョコレートじゃない。その頑固ちゃんな舌でもこの美味が解る筈だ。どうだ?」

「ニゲぇし、好きく無ぇ。只のビターチョコだぜ」

ワナワナと怒りがこみ上げベルサジュは更に詰め寄る

「お前はゲテモノしかその舌を満足出来ないのか?口に苦い良薬を含めば効果は発揮できる。後、一欠片食べれば確実に鼻血が出る副作用がある程大変貴重な食物なんだぞ?有り難みの分からない哀れなお前に宝を得る資格は無い!」

「薬にもならねぇリスクしょった食い物なんざ、欲しかねぇんだよタコがぁぁ!大体、無理やりテメェがここに引きずりこんだんだろうがぁぁ!吹かしきってんじゃねぇ」

「よせ下僕。鼻血の価値は女の体を舐め回すように見た後しか出さねぇパー野郎だ。物の価値なんざ理解外のスカシたエロ面だ。見下げ果てて、透けたスカート履いた妖怪ババァに手を出してろやぁ!おらぁ!」

「お前、最低だな。色気は全く無く、あまり俺のタイプじゃないけど、強いから気分上げて上機嫌になった所で暗殺教えて貰おうとしている俺の師匠に少しは謝れよ」

「鼻血垂らしながら何ヌカシてんだファトプリカ!大体、お前こそ少しは謝れよベルサジュ!何なんだテメェらは!」

口論が終わり、やがて、大きい、地底空間へと辿り着いた。遥か上から流れる溶岩が全体を照らし、熱気に包まれていた。溶岩の奥には輝く鉱石があり、炭鉱の最深部へ続く道も発見出来た。至る箇所に松明もある事から目印の役割にも予想できた。岩を崩し階段を作る形跡や人工的なスペースを確保するかのような、物置もある

「これは凄いなー。確かに秘宝があるかもしれない。地底火山であり、錬金すれば見事な大金が芋づる式で」

「何処まで欲まみれなんだテメェは!」

「欲しか無いよ~。だから俺、アサシンになったんだぜ」

その時、ファトプリカの姿にSickとベルサジュは奇行としか感じなかった

「おい、どういうつもりだ?」



VERMILIONは立ち止まったままである。専用の隠れ家の入り口が開くと、上質なソファーに身を預けている一人の女性

「おかえり~」

「BLAIR(ブレア)?」

指先で持つキャンディーを舐めながら挨拶をすませ、携帯を取り出した

「ったく、俺の寝床を盗りやがって」

ギシギシと音を立てる木製の椅子に座りVERMILIONは、レザージャケットをテーブルに置き、ジャーナル紙の記事を読む。何となく興味が沸いた記事があった

「電話終わったよ。リパークは?」

「まだ近くにいるんじゃないか?用事あるなら」

「あるよ。後片付けを手伝ってもらいたくて」

記事に没頭して集中した意識が途切れなかった。昔からの癖である

「厄介な依頼あるから協力してもらいたいのよ」

返事が返ってこない。それだけ関心がある内容だからだ

「ネオ・ヒューマノイド(人体再構造流動態生物)の研究所に行きたい~」

視線のみをBLAIRに向けた


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