おわりに

 この物語を読んでくださった皆様へ。


 物語に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。



 今、LGBな彼らがあなたへ語れることは、だいたいこれで全てです。

 この社会の現状が変わらない限り、彼らにこれ以上語れることはありません。



 異性を愛し、異性とともに生きることが「当たり前」。

 それが「常識」として頑固に居座る、この社会。


 これまでの「常識」が間違いだった——そう思うべき時代が来ています。


 少数の存在を「それは間違いで、不自然で、受け入れられない」と否定する権利は、誰にもありません。むしろそう思うことこそ、不自然で不寛容な間違いです。



 あなたが何よりも大切にしている「愛」というもの。

 その「愛」とは、あなたが心に抱いている形だけが絶対ではありません。

 ひとりひとり、違う形をしています。人の性格がひとりひとり違うのと同じように。


 そのさまざまな形をした愛情を、自分の愛と同じように大切に思うこと。——それは、そんなに難しいことでしょうか?そんなに大それた、受け入れられないことでしょうか?


 形はさまざまでも、ひとを愛する思いは誰も同じです。

 いつでも本気で、必死で、真剣です。……あなたも、そうでしょう?


 自分と異なる愛の形を差別し、軽視する前に——あなたの愛する人への思いが軽視された時のことを、想像してみてください。

 あなたの愛が、社会や周囲から認められないとしたら……5分だけでも、それを想像してみてください。



 あなた自身の愛情を大切に思うように、その他の愛情も認め、受け入れる。

 社会全体がそんな大らかさを持つことができたら、こんなに素敵なことはありません。

 もっと自由に人を愛することができたら。もっとさまざまな愛情を経験することができたら——社会は、今よりもっと幸せで楽しいに違いありません。



 この社会が、そんなさまざまな愛情を受け入れる方向へと大きく動いた時に、彼らはまた新たな物語を語り出すのかもしれない……そう思います。



 この物語の続きを知りたいと思ってくださる方が一人でも増えることを、心から願っています。




 ——「当たり前の幸せ」を手に入れた拓海と優の新しい物語が、一日も早く始まりますように。





 この物語を読んでくださった皆様の応援があったからこそ、悪戦苦闘しながらもこうして結びの言葉を書くことができました。物語の中で必死に進み続けた彼らを、ひとまず幸せにしてやることができました。


 深く深く。心より、感謝申し上げます。





 平成29年7月




【参考文献・資料】

『同性婚——私たち弁護士夫夫です』(南 和行 著/祥伝社)

『同性婚のリアル』(東 小雪 他1名 著/ポプラ社)

日本医師会「日本医師会員のみなさまへ 各論的事項No.15 卵子提供か、卵子再生か〜生殖補助医療と倫理、最近の話題」             

                                   他

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ほんとの春を探してみたら【シリーズ三部作】 aoiaoi @aoiaoi

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