最終章 ほんとの春のその先に
はじめに
LGBT。
どのくらいの人が、この言葉を知っているだろうか。
L=レズビアン。G=ゲイ。B=バイセクシュアル。T=トランスジェンダー。
つまり、性的マイノリティの人々を表す言葉だ。
俺も優も、LGBTだ。
優はG。魔性の美貌と男前な精神を併せ持つGだ。
俺は……敢えて言えばB、なのだろうか?——最近気づいたのだが。
少しずつ、ごく自然に引き合うように——俺は優と恋に落ちた。
彼を愛し続ける。彼を幸せにする。今はこれが、俺の確かな誓いだ。
「性的指向はグラデーションを描く」という言葉がある。性科学者、アルフレッド・キンゼイによるものだ。
彼の研究によれば、人間の性的指向は少しずつ色の変わる帯に例えられ、人は皆その帯のどこかに立っている……という。
白か黒か、ではなく、グラデーション。
もともと、人間のセクシュアリティは、きれいに線引きのできる性質のものではない。個人差はあっても、自分たちが思うよりずっと微妙で曖昧なものなのだ。
LGBTにあてはまる人が日本人に占める割合をご存じだろうか。
約13人に1人だ。
学校の1クラス(30〜40人前後)に、3人程度存在する計算になる。
「え?会ったことないよ?」そう思う人も多いかもしれない。
それはなぜか。
——それは、その人々が、簡単には自分のセクシュアリティを周囲に明かすことができないからだ。
事実を言えば、奇異の目で見られるのではないか。差別を受けるのではないか。悲しい思いを経験しなければならないのではないか……そう考えるのだ。
LGBTは、病気でも、単なる趣味でもない。
少数ではあるが、生物学や遺伝学的に自然に存在する性質のひとつだ。たまたま背が高い、低い……そういった差異と同じように。
多くの人々は、異性に対して愛情を抱く。
それが、たまたま同性に向くか、両性に向くか……それとも、成長と共に自分の持って生まれた性を「変えたい」と感じるようになるか。
それだけだ。
あなたが異性を愛するのと全く同じ想いで、俺たちは同性を愛し、共に生きたいと願う。
確かに存在している愛情が、周囲に認められない。世間から否定される。……それはなぜか?
遠い昔から、多くの国で同性間の愛は禁じられてきたからだ。
少数派という、理由にもならない理由で。
「自然ではない」という、古典同然の非科学的な理由で。
生物学や遺伝学など一切存在しない大昔の教えに、俺たちは未だがんじがらめに縛られている。
人間が勝手に作り上げた「常識」が正しいのではない。
もっと自由に人を愛したい「本能」が、真実のはずだ。
仮に、愛する人との繋がりを、周囲が白い眼で見たり、誰にも認められなかったりしたら……あなたはどう感じるだろう?
人間の心の一番大切な部分を占める「愛情」を、世間から隠すようにしながら生きなければならないとしたら——あなたは幸せだろうか?
そんな、引き裂かれるような思いを抱える人々が存在していることを理解しないまま、この社会は回転していくのだろうか。
俺は、動くことにした。
愛する人の存在を、誰にも隠すことなく……「当たり前の幸せ」を手に入れるために。
恐らく、とんでもない悪戦苦闘が待っていることは間違いないのだが……
こんな道行きにお付き合いいただけるならば、ぜひとも見届けてほしい。
LGBな俺たちが、大切な人と幸せになるために……これからどんな道を辿るのかを。
俺と優が手を繋ぐ風景が、当たり前な——そんな日が、いつか来ますように。
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