3-7.暗殺メイドは影で企む
ティアはシャルハが何処かの王子と話しているのを、窓のカーテンの隙間から見ていた。
広間の窓にはどれも緞帳のように分厚いカーテンがかかっており、ティアのような細身の女が隠れていても、誰もそうとは気付かない。
いつの間にか姿を消したティアを、メイド長辺りは気にするかもしれないが、ドジばかりのメイドが粗相をして追い出されたと思ってくれるだろう。
「指輪……、あれね」
シャルハの左手の中指に光る指輪を見る。照明のせいで妙に輝いてしまっているが、大きな宝石がついていることはその煌きでわかる。
「相変わらず、天使が邪魔ですけれど仕方ありませんわ。この際ですから指輪と一緒に穢れてもらいましょう」
ティアは手に持った袋を愛おしそうに撫でながら呟いた。
各テーブルの上に乗っている、血の滴るステーキ。それを作る際に出た血を集めて、腸で出来た袋に注入したものである。
伸縮性のある腸袋は、血を大量に流し込まれて破裂する寸前だった。ティアがこれを投げつけてシャルハに当たれば、中の血が全て飛び散って、指輪は勿論のこと、他の全ても血まみれになる。
その光景を思い浮かべて、ティアは悪趣味な笑みを浮かべた。
「悪く思わないでくださいね、女王様」
スリングショットを手に取り、いつもは鉄球や石を乗せる場所に腸袋を置く。ゴムを限界まで引っ張り、カーテンの隙間から照準を合わせた。
息を止めて照準が揺れないように構え、一瞬の隙を狙う。シャルハがウナに何か言われて顔を上げ、左手で髪を掻き上げた瞬間、ティアはゴムと袋を抑えていた右手を離した。
カーテンの布を押し開くようにして発射された袋は、一直線にシャルハへと飛ぶ。シャルハが気配に気が付いて、顔を向けた途端に、大きな破裂音が響き渡った。
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