4-5.騎士の訪問
翌日、ユスランはクレハと一緒に郊外に出かけると言い、城を後にした。
シャルハも公務があるために、その日は外出をしないことにしていたが、ルーティがあることを告げて来た。
「姫にお会いしたいという方がいらしています」
「約束はない」
「それが、あのパーティにいらしたお客人でして。是非とも姫にお会いしたいと」
「誰だ」
「隣国の騎士団長、ドルテ様でございます」
それはシャルハも名前だけはよく知っている騎士だった。
名門貴族の跡取りとして生まれ、戦場で数々の手柄を立て、隣国の国王の命を救ったこともあると言われる人物である。
「確か最近、王より領地を与えられたとか?」
「その通りです。パーティの際も姫に会いたかったようですが、どういうわけだか見つからなかったので、と」
あの時は、理由は不明だが豚の血を浴びてしまって、それどころではなかった。
パーティにも殆どおらず、しかもわざわざ訪ねて来たのを追い返すとなると、少々都合が悪い。
「因みにイルド大臣は既に謁見室に通しておられます」
「じゃあもう会うしかないじゃないか」
「ドルテ様は騎士団長の肩書に相応しい、武勲と騎士道の持ち主です。姫とも気が合うかと」
「それはボクが決めることだ」
「もっともです」
ルーティは慇懃に頭を下げる。
「ですが、花畑に行き、剣の稽古もしないような軟弱な男は趣味ではないと仰っていたではありませんか。結婚するなら自分と同じような勇ましき武人が良いと」
「う……」
「それとも、ユスラン王子が……」
「彼は関係ない! 会えばいいんだろう、会えば!」
破れかぶれに叫んだシャルハだったが、ルーティはいつもの涼しい表情だった。
「それでは謁見室へ。その前にお召し物を変えてから……」
「わかってる!」
シャルハが部屋を出ていくと、公務用のテーブルの陰に隠れていたウナが現れた。
愛らしい口元を尖らせて、ルーティに抗議をする。
「どういうつもり?」
「ウナ様」
「私はユスランがいいと言った。覚えているでしょ」
「勿論、私はウナ様の意見に反対するつもりもありません。ですが、姫はどうも鈍すぎるうえに頑固者です。先王に悪い意味で似てしまったのでしょう」
ルーティの冷静な分析に、ウナは腕組をして唸る。
「それは確かに言えるかも」
「多少強引ではございますが、自覚をさせるのも大事です」
「でもシャルハがその騎士団長を気にいっちゃったらどうするの」
「余程、あの王子がお気に入りのようですね。ですが、ご安心下さい。姫については天使様よりも私が一番よく知っています」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます