概要
自分が。毎日が。生きていることが。
全部が嫌い、嫌い、嫌い。
あたしは、もう二度と、
子どものころみたいには笑えない。
泣くことも、もうなくなった。
〈小学校の取り壊しが始まります。
結羽も来てよ。
みんなでサヨナラしよう〉
その手紙が届いた、十六歳の夏。
あたしは、島に戻った。
仲間と呼んだ人たちと再会した。
東京でモデルとして活躍する良一。
島で暮らす姉弟、明日実と和弘。
会いたかったけど、会いたくなかった。
──これは、人の死なない物語。
──でも、大切なものを失う物語。
──本当にあった出来事によく似た物語。
探している。
あがいている。
あたしは、どんな唄を歌いたいんだろう?
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!壊されても、壊れないもの。なくなっても、消えないもの。
まずは目次だけでも覗いてみて欲しいです。
エピソードタイトルだけですでに作品として成立していて、私はフライング気味に感動してしまいました。
本編では、目次そのままの世界観がより濃厚かつ繊細に広がっています。痛々しいほどに眩しい青春の輝きが、深く心に突き刺さりました。
主人公の結羽ちゃんはクールで周囲にあまり興味がなさそうなのに、やたらと記憶力が良いのです。
なぜそんなに色々なことを鮮明に覚えているのか。その理由が明かされたとき、彼女への愛しさが爆発して思わず画面の中の『結羽』の文字を撫でました。
そして読了後、また最初から読み返したくなりました。
無愛想と不機嫌で心を覆い隠していて、一読…続きを読む - ★★★ Excellent!!!知らないはずなのに懐かしい町
行ったこともない場所が自然と目の前に広がっていく。
その海も、その山も、真節小も。
全て見たことがないのに、映像が心に残り、心がぎゅっと締めつけられる。
いつも鎧をかぶり続けていた心は、懐かしくても素直になれない場所にやってきて温かな涙を流す。
感情をさらけ出すことへの恐怖は、久しぶりの顔たちに逢うことでいつしかやわらいでいった。
続編を読みたい気持ちと、この物語はここで終わっているからいいのだ。
という気持ちのせめぎ合いが、あぁぁぁーー!
すみません。取り乱しました。
何がいいたいかといえば、とてもいいお話だということです。
気持ちがどっぷりと浸かりました。
素敵なお話をありがとうござ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!残された思い出が、未来への一歩になる。
少子化の世の中では東京でも廃校というのは珍しくない。過疎が進む地域では推して知るべし。
廃校になった小学校の卒業生たちが、校舎の取り壊しに際して、集まってきて――というところから始まる物語。
最初、久しぶりに出会ったのだろう周囲の人々に対し刺々しくて、頑なな、主人公が好きになれなくて辛かった。
ところが。
最後の3話ですごく好きになれた。
思い出と今が混ざった結果、彼女の脆いからこそ頑なになっていた言動が溶かされていく。この様をどうか見ていただきたい。
もう一つ、個人的に好きなところを。
玄界灘に浮かぶ島が舞台なのでしょうか。
書き言葉で方言を正確に書くのはとても難しいと思うのですが、…続きを読む