取り戻せアンケート! 5

「にしても貴様、なぜ天界に来た? 二度と来てやるもんかー! と冥界へ行く前に言っておったではないか」


「こ、今回は特例だよ。ウチでとったアンケートの紙が、こっちの女神に盗まれたの」


「……それはもしや、これのことか?」


 言いつつ、ゼウスは懐から分厚い紙の束を取り出した。

 表には、三女神のくだらない喧嘩に対するアンケート、と記されている。


「な、何でゼウスが?」


「いやな、預かってくれとアプロディテに頼まれたのだ。冥界の者たちとヘラに渡しては駄目ですー、と」


「え、じゃあ返す気なかったりする?」


「無論」


 これは困った。

 ヘラはせめて内容だけでも確認しようとしているが、ゼウスは上手く避けている。一度約束した手前、最後まで守り通そうというつもりらしい。


「……どうしても返してほしいか?」


「う、うん」


「では、条件を一つ出そう。それを守りさえすれば、ワシも今回は譲る」


「わ、分かったよ。――で?」


 うむ、とゼウスは一息。着ている長衣の中に、アンケート用紙を一旦しまう。

 そして。


「ペルセポネと共に、今後も冥界に引きこもってくれんか?」


 破格の条件を、出してくれた。


「……構わないけど、我からも一つ条件があるんだ」


「何かな?」


「天界から何人か、職員を応援として寄越してほしい。そうすれば我の仕事が増えることもないから、安心して引きこもれるよ」


「合い分かった。オリュンポス十二神の同意を即座に取り付け、冥界王の引き籠りを援助しよう」


「ありがとう……!」


 熱い抱擁を交わす男子二名。

 反対に、それぞれの妻は反応が異なっている。ペルセポネはいつも通り笑みを浮かべ、仕方ないですねえ、と納得。ヘラは憤懣やるかたない表情で兄弟を睨んでいる。


「ちっ! んなもんアタシが許さないわよ! でもとにかく、にアンケートの結果だけ見せなさーい!」


「あっ……」


 二柱を突き飛ばし再びゼウスのマウントポジションを取るヘラ。抵抗しようとする夫を一撃で黙らせ、アンケート用紙を奪う。

 集計結果を記した紙があるわけでもないようで、ヘラは自身での集計を開始した。


「なんだか、ヒドイことになってきましたね」


「だね……ていうかゼウス、大丈夫?」


「おおう、問題ない。頭がクラクラするし痛みが治まらんし目は両方開かんが……まったく問題ない。神じゃから」


「いくらなんでも無茶があると思います」


 だよねえ、と頷くハーデスの向こう。


「何ですって……!?」


 あっという間に集計を終えたヘラが、頭を抱えてくの字に折れている。


「アタシが、ビリだなんて――」

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