ようこそタルタロスへ 4
「……そういえば父上、この宴会、ティターン神族ばかりですね」
「うん? そりゃそうじゃろう。何か気になるのか?」
「いや、ギガ―スの方々はどうしたのかな、と」
「ぬ」
途端、クロノスの表情が険しくなる。
ギガ―スはティターン神族と同様、巨大な身体を持つ種族のことだ。ギガントマキア、と呼ばれる反乱の実行犯でもあり、ゼウスに殺されている。
死者としてタルタロスに幽閉されている彼らだ。ここにいてもおかしくないのだが……
「ありゃワシらの2Pカラーじゃろ。宴会には呼べんな」
「まあ確かに、同じ巨人ですけど……なんだか、かわいそうだなあ」
「そんなことを言うな。ほれ、椅子とテーブルが来たぞ」
とはいえ、ヘカトンケイルも巨体の持ち主。彼らが運んでくると、ミニチュアの模型を持っているように見えてしまう。
乱雑な動きで置かれたテーブルを、ハーデスとペルセポネの二人が整える。すぐに運ばれる食べ物と酒。ペルセポネが一番喜んでいた。
「これ、全部よろしいんですか? お義父様」
「むろんよ。我が子の妻とあれば、最高のもてなしをせねばなるまい」
「えへへ、嬉しいです!」
まだ落ち着かないハーデスを余所にペルセポネは食事を始めてしまった。
ケルベロスにも肉が与えられている。本当は甘いものがいいんだけど、有り難く頂くとしよう。
「しっかし、お前がこんな美人を連れてくるとはなあ。どうやって捕まえた?」
「いや、それはまあ、いろいろありまして」
「なんじゃ、ハッキリせんやつめ。ゼウスにそそのかされたか?」
ギク、と言わんばかりにハーデスの肩がふるえる。
さすがに父と言うべきか、クロノスは息子の表情で事実を悟った。
「まったく、あやつは。……ワシがお主らを吐きだした時もそうじゃった。父上! これマジ美味しいッスよ! とか真顔で言って、信じられんぐらいまずいものを飲まされたんじゃぞ?」
「ああ、あれは酷かった……」
「ぬ、お主らワシの体内におったから、あの味を少しは分かるわけか」
「一応は……」
やっぱり思い出したくない過去なのか、ハーデスの顔色がみるみる悪くなる。
そんな主人に同情しつつ、ケルベロスは肉を頬張っていた。
チラリと横目を使うと、息子の小さな背を励ます父親の姿がある。食べて元気を出せと促しているようで、クロノスは巨体に相応しい食いっぷりを見せていた。
そこへ訪れるのは。食事を運びまわっている一人の人間。
「あれ、シーシュポス君?」
ハーデスとペルセポネ、ともに見覚えがある罪人だった。
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