兄に勝る弟などいないっ! 4
「もう、仕方ないですねえ、旦那様は。やっぱりお仕事は他の人に任せましょう!」
「任せてる、といえば大半任せるかな……すでに」
「ですよねえー」
よしよし、と息子を可愛がるように、ハーデスの頭を撫でるペルセポネ。
そのやり取りを見て、呆れかえっているのはアレスとヘパイストスだった。そういえば彼らは当初の目的を果たしてないが、どうなんだろう?
「……なあ兄貴、帰ろうぜ。グダグダになってきだ」
「そうだね……僕も妹の武具、修理しないといけないし」
「あ、じゃあ俺のも頼むわ。この前ぶっ壊れちまってさあ」
「君は扱いが乱暴だからそうなるんだよ! ……まあ、今回は引き受けるから。あとで僕の工房に持ってきてくれ」
「お、話が分かるじゃねえか!」
などと、案外と仲が良さそうにやり取りするゼウスの子ら。
ハーデスは去っていく二人に気付いた様子がない。甘やかしてくれるペルセポネに身を委ねて、充実した食後を過ごしている。
「はあ、本当に冥界の仕事って嫌だな……若いころの我を叱りたい気分だよ。よく考えろ、って」
「でも旦那様、若いころは格好いい方でしたよ? 活き活きとしてるのは、とってもイイことだと思います!」
「えっ、い、今は?」
「ナヨナヨですかねえ」
トドメの一撃だった。
ハーデスは今度、哀れな顔つきのまま机に突っ伏す。犯人は笑ったままで、何一つ深刻に捉えていなかった。
まあ、ハーデスにとってはいつもの痛撃である。
「ゼウスみたいに皆が慕ってくれるようになるには、どうすればいいんだろうね……」
「え、旦那様は皆の人気者ですよ? 今日だってあのお二人、来たじゃないですか」
「それもそうだけどさ……こう、もっと威厳を振り撒きたいよね。我こそは冥界王、ハーデスであるぞ! みたいな感じで」
「えー、似合いません」
ますますショックの度合いを深めていくハーデス。
でもまあ、こんな主人だから冥界はのんびりやれてる気もする。地上で大手を振ってるゼウスやポセイドンと違って、大騒ぎを起こすような人ではないからだ。
「よぉし息子よ! 今宵はワシとヤケ酒じゃ!」
「え、いや、我お酒苦手なんだけど……って父上くさい! 酒くさい!」
「気にするな! ほれ、飲め飲めぇーい!」
「うぼぼ……!」
滝のような酒を浴びせられるハーデス。
ケルベロスとペルセポネは、それを笑いながら見届けていた。
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