頑張れお兄ちゃん 6

「ちっ、やっぱりあんたら兄弟じゃない! 肝心な時に問題ばっか起こして!」


「ぜ、ゼウスと我を一緒にしないでくれ! 我はやる時はやる男なんだ!」


「ゼウスだってヤる時はヤる男よ! おらぁっ! とっとと働け!」


「……」


 ケルベロスとペルセポネは、手を出すことなく傍観者に徹していた。だって見る分には面白いし。

 実際、ペルセポネは笑みを浮かべながら二人を見ている。兄妹仲が良いですねー、と明るい感想をつぶやいて。


「ちっ、仕方ないわね。私の愚痴を聞くなら大目にみてやるわ」


「……ヘラの大目に見るって、我は全然使用できないんだけど」


「あ?」


「すみません全力で信頼しております」


 と言いつつ、ハーデスの目からは疑いが消えない。……聖なる泉で身体を清めていないヘラは、確かに嫉妬深いストレスまみれの女神だろう。


「ね、ねえヘラ、時期は春なんだしさ、カナートスの泉で身体でも洗ってきたら? 気分もスッキリするよ」


「アンタ、私と話したくないっての?」


「け、決してそのようなことは……」


 しかし実際、ヘラは沐浴をせねばなるない。

 カナートスの聖なる泉は、ヘラが処女性を取り戻す場所として有名だ。この後は美の女神にも劣らないほどの美女となり、ゼウスも浮気を止めるんだとか。

 まあ根本的な解決にならない辺り、効果は長くないんだろうけど。


「――愚痴ってのはね、一つよ」


 ヘラはケルベロスをチラリと見て。


「その可愛い犬、どうして私に寄越さないの?」

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