迷惑千万な女神たち 3
「ど、どうしたのアプロディテ。我に何の用?」
「んーとですねえ、つまらないことなんですけど、ちょっとお尋ねしたいことがあってー」
柔らかな口調で、アプロディテは唇に手を当てる。
そんな小さな動作なのに、彼女は男を誘う小悪魔に見えた。
まあそれは然るべき感想だろう。美の女神アプロディテ。ローマ神話では、ヴィーナスの名でも呼ばれる女神だ。
その美貌、および男の扱いについては、彼女の右に出る者などいない。
神々の間でも、彼女の人気ぶりは目を見張る。その魅力に抗えるのは、三大処女神と呼ばれるごく一部の神だけだとか何とか。
「ちょっとアプロディテ様? 旦那様に変なことは吹き込まないでくださいね?」
「あらあら、どうしたのペルセポネちゃん。そんなに怒って」
「自分の胸に聞いてください」
「私の胸ー? 女神の中でも一番大きくて、一番形のいい私の巨乳に聞くの?」
「……」
疲れ切ったというか、あきれ果てた表情をペルセポネは浮かべていた。
一方のアプロディテは本気で受け取っているらしく、自分の胸を触ったり揉んでみたりしている。図面としてはかなり卑猥であり、健全な青少年にとっては目の毒だろう。
「……」
「ちょ、ちょっと旦那様!? 何見惚れちゃってるんですか!?」
「あ、ご、ごめん。つい……」
「むう、ここは私の魅力を再確認してもらうしかありませんね。さあ旦那様、私のオッパ――」
「早く話進めたらどうッスか?」
収集がつかなくなる前に。
アプロディテを除く二人は納得し、仲良く隣に並ぶ。
肝心の訪問者は、まだペルセポネから聞いた指摘を実践している最中だった。
「あらあら、どうしたの二人とも。真剣な顔をして」
「部屋の主人がどっちだが分からなくなる台詞だね……アプロディテ、我に聞きたいことがあるんじゃなかったの?」
「あ、そうなのよー。……こっちに最近、美少年がやってきてない? 日本人なんだけど」
「――」
嫌な予感しかしない。
ともあれそんな報告は聞いていない――もとい聞く気がなかったハーデスは、アプロディテに見ていない旨を伝える。
「おかしいわねえ。ちゃんと
「あ、あの!? 我、凄く聞き捨てならないことを聞いたよ!?」
「奇遇ですね。私もです……」
向けられる非難の目。
アプロディテはわざとらしく頬を膨らませると、胸元から一枚のカードらしき物を取り出した。
「失礼ねー。私はちゃんと、地上で運転免許を取ったのよ? これがあれば、車を運転してもいいのよね? ――他人のを盗んだとしても」
「駄目だよっ!」
満場一致の否決だった。
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