頑張れお兄ちゃん 4

「ほ、本当ですか!?」


 やった、とポセイドンが小躍りする。ハーデスは相変らずの仏頂面だが、少しだけ頬を緩めてもいた。

 その後は兄弟の会話もなく、さっさとポセイドンが退場する。


「ふう、面倒なやつだね……自分の方が偉いからって、何でもしていいわけじゃないんだよ」


「だ、旦那様……」


 久々に仕事をしたんじゃないか?

 ペルセポネも同様の理由で感動している。肝心のハーデスは驚くばかり。いつもの情けない雰囲気まで戻っていた。


「ど、どうしたの二人とも!? いや、一人と一匹!」


「だって、ねえ、ケルベロス?」


「そうッスねえ。まさかハーデス様が仕事をするなんて」


「い、今の、お仕事かな?」


 激しく頷くペルセポネは、夫の手をとって激しく上下に振る。彼の方も満更ではなく、驚きから喜びの表情へと変わっていた。


「でも本当、アテナ様ってヒドいですよね。女神なんですから少しぐらい大目に見ればいいのに」


「まああの子、意外と気性が荒いからね。賢いところもあるんだけど……」


 そこはやっぱりオリュンポスの神々。妙に人間くさいというか。

 まあ一番気性が荒いのは、他に候補がいるのだが――

 ケルベロスは思わず身を震わせる。正直、彼女のことは苦手だからだ。


「? どうしたのケルベロス」


「いや、気性が荒い女神、ってことであの人を思い出しちゃいまして。俺、ちょっと苦手なんスよね」


「あー、確かにケルベロスは苦手かもね。だって――」


 ヘラ様は、とペルセポネが口にした瞬間。


「ハーデス!? いんでしょ!?」


 最強女神が、荒々しくドアをぶち開けた。

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