こっち来ないでください! 5

 ちょっと失望の眼差しで彼を見つめながら、ハーデスは辺りを見回す。

 ハーデスとケルベロス、アイアコスの他にいるのは、判決待ちの死者ばかりだ。みな生気のない表情で、待ち受ける裁きに戦々恐々としている。


「……なんだか、誤解されてる気分だなあ。我、彼らにヒドイことしないよ?」


「まあ先入観というやつです。こればかりは、我らでも解決できません」


「むむ……」


 珍しく、ハーデスは腕を組んで考え始めた。

 先のアイアコスの判決を受け入れる気は、あまり無いように思われる。今考えているのは、代案となるべきコトだろう。

 これだけ大勢の人がいれば、公平な判決が下せるのでは――

 ハーデスの横顔からは、そういう真面目な考えが見て取れた。


「よし、アンケートを取ろう」


「あ、アンケートですか?」


「そう。これから判決が下された人に、セポネ達の中で誰を支持するか聞くんだ。もちろん事情も説明してね」


「おお、それは良い考えです。アドニス君についても、私の方で話を聞きましょう」


「……事実を歪曲しないようにね」


「ええ、努力します。クク……」


 では、と。

 信用できない台詞を残して、アイアコスは自分の仕事に戻っていった。

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