ようこそタルタロスへ 6
「アレって、私がシシューポスさんの話を聞いた時のことですか?」
「そう。セポネが怒って、彼に冥界から出ることを許したときの」
「あはは、アレは少し慌ててましたからねー」
話じたいは、そう難しいものではなかった。
シーシュポスはゼウスの命令により、冥界へ連行されることとなる。それは地上での死を意味するものだ。
しかし彼の妻は、なんと夫の葬儀を行わなかったのである。、
この話を聞いたペルセポネは、復讐したいというシーシュポスを地上へ返した。
そして後に、シーシュポス自身が葬儀を行わないよう、妻へ命令していたことが発覚。これによって、彼はタルタロスで終わりのない労働を行う羽目になる。
「あれはきちんと事実を確認しておくべきだったよね……」
「むむ、まるで私が悪いみたいじゃないですかっ。ハーデス様だって騙されてるでしょう?」
「うっ」
そう、この主人も他人のことは責められない。
シーシュポスに恨みを抱いたゼウスは、ハーデスに彼を冥界へ連れてくるよう指示する。が、そこでハーデスがミスをやらかすのだ。
「まったく、聞いた時は驚きましたよ? シーシュポスに手錠の使い方を教えてたら、自分が手錠にかけられるなんて」
「だ、だって、彼が教えてくれ、っていうから……我、すっごく丁寧に教えたんだよ? でもその隙を……」
「ともんでもない失態ですね」
冗談のようなエピソードに、隣りのクロノスは爆笑している。
まあ、夫婦そろってお人好しということだろう。あるいはよっぽど、シーシュポスの誘導が上手かったのか。
「でも、当時は大変だったなあ。手錠をかけられたせいで、外にも出られなくなっちゃったし……アレスが助けに来てくれなきゃ、大変なことになってたよ」
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