アカデミー
僕は朝起きると、メイドに下の世話をさせていた。もはや、習慣となっている。
「ふふ、救世主様のあそこ……ステキですわ。んっ……」
「出すぞ」
「ふぁい……」
ふう、スッキリ。朝の一発はなんともいえないね。
最近はグレートホールではなく、プライベートダイニングルームで、三人で食事を取っている。僕とマリーとマリリンの三人だ。
マリリンとは、あれから急接近というか。随分と仲が良くなった。そりゃ、体の付き合いをし出したんだから当たり前なのだけど。
やっぱり、肉体関係を持つと変わるもんですね、人間。今じゃべたべたのマリリンさんですよ。
それと僕はマリーとも肉体関係を持っていた。あの流れなら当然だろう。もちろん、マリリンには内密で、だ。その方が燃えるからね。秘密の関係って、甘い響きだろ?
いつぞやの僕みたいになっている。いや、むしろ悪化? とはいえ、もはやなるようになれといった半分自暴自棄に近いだろう。
「おはようございます。救世主様」
「ああ、マリー。おはよう」
そういって、マリーの胸に顔を埋める。この豊満な胸。触り心地、肌触り。顔を埋めるちょうど良さ……最高だね。親子丼とは、まさにこのこと。三十後半とはいえ、金髪の長い髪にこのスレンダーな体。そして胸の大きさ。エロすぎる。そして、包み込むような暖かさがある。
「ふふっ……救世主様ったら。行けませんよ。娘が見ております」
「そうですわよ! いくらお母様とて、わたくしの救世主さまにそのようなこと!」
「マリリン、救世主様は我々全てのモノです。それを忘れずにいるのですよ」
「わ、わかっておりますわ……」
マリリンは僕とマリーの関係を見て、嫉妬しているようだった。可愛い奴め。
さて、あの後。僕はどうなったのかというと。
「救世主様にはアカデミーに入学して貰うこととなりました」
「アカデミー?」
「養成所のことですわ。未来のエリート候補を育成する機関といったとこでしょうか」
「なるほど」
エルゼリア王立魔法アカデミー。爵位持ちの家系だけが入学を許される貴族の養成機関らしい。お坊ちゃま学校といったところか。とはいえ、それなりにしっかりとしているんだろうけど。
本来は高校卒業後に入学させるつもりだったらしい。ようするに、大学のようなものだろうか。
「マリリンも本日からそちらに編入することになりましたので」
「あ、はい。私共々よろしくお願い致しますわ、タダヒトさん」
「あぁ、よろしく」
「それと。異例ではありますが、救世主様が通われておりました学園の生徒も一部編入手続きを行わせて頂きました。急な編入で救世主様が動揺なさると行けませんので。その辺の配慮をさせて頂きました。救世主様と仲がよろしかったクラスメイトから選抜させて頂きましたのでご理解下さいませ」
誰だろうか。僕と仲のいいといえば……やはり、エリカやミュリエル達のことだろう。……正直いうと、顔を合わせづらい。どう対応していいかわからないからだ。エリカの奴は気にするなと言ってくれたけど……あれから僕はこんな調子だし。
精神が不安定なことに変わりはない。ミュリエルはああいう性格だから、気にしないのかもしれないけど。
しかし……このまま流されていいのだろうか。救世主だなんて……僕には。とても、向いていない。出来る気がしない。いや、したくないんだ。ハッキリ言えば。
漫画のようなヒーローごっこじゃない。本当の殺し合いの戦場だ。そこに駆り出される……。かといって、逃げ出せば国際指名手配。八方塞がりとはこのことだろう。
あの女……シーナ・クラフトの顔がちらつく。あのドス黒い笑み……思い出しただけで、苛立ちと、興奮が溢れ出る。くそっ。男の性か。ああいう女を滅茶苦茶にしたい衝動に駆られてしまう。それこそ、あの女の思うツボだというのに。
「救世主様?」
「えっ? あ、いえ。なんでもないです」
「……そうですか。では、私はこの辺で……後はマリリンに任せます」
「はい。お母様」
そういって、マリーは立ち去った。残された僕とマリリン。僕はさっそくマリリンを抱き寄せてキスをした。
「んっ……あっ……もう、タダヒトさんったら……」
「我慢できなくてね」
「ふふ……もう」
色んな意味で、我慢ならなかった。今のこの環境も、あの女のことも、救世主も。全てが。だからそれを忘れる為に、マリリン達を抱いているに過ぎない。ようするに、逃げているのだ、僕は。現実から。
このままでいいとは思っていない。だが、そう簡単に立ち直れるものかよ。あんな出来事があって……。僕は人を殺したんだぞ。それも、何人も。
そんなことを今後、自分の意志で積極的に行わなくては行けないなんて。出来っこない。それを何とも思わずに出来るあいつらは何なのだろう。特殊な訓練でも受けているのか、それとも……慣れてしまうのだろうか。人を殺すことに。何の躊躇いもなく。
おそらく、後者だろうなと思う。人はなんであれ、自然と慣れてしまう。繰り返し行うことで。何とも思わなくなってしまう。それが怖いのだ。人を殺すことも、それに慣れることも。怖い。
しかし、時間は止まってはくれない。すでに決断の時は来ている。このまま流されて行くのか、それとも……僕は。
「タダヒトさん?」
「え?」
「なんだか、随分と思いつめた顔をなさっておりましたわ。大丈夫なのですか?」
「あ、ああ……大丈夫。気にしなくていい」
「本当ですの……?」
「ああ」
「そう……ですか。それなら、よろしいのですけど」
「それより、アカデミーに行くんじゃないのかい?」
「えっ……あ、はい。そうですわ。タダヒトさんもご一緒に。私と同じクラスのはずですから」
「クラスメイトって、やっぱりエリカ達なのか?」
「恐らくは……決めたのは、お母様ですから。私は詳しくはわかりませんが……」
「そうか。まあ、行けばわかることか」
「そうですわね」
僕とマリリンはエルゼリア・アカデミーへと足を運んだ。そこにいたのは、やはり……エリカ達だった。エリカと、ミュリエルと、ヘルミー。それに、クスハがいた。
「……」
エリカは黙っていた。当然か。僕だって、正直何を言えばいいのか、わからない。元気か? なんていうのも、どこかおかしい気がして……。
「タダヒト! 元気してた!?」
こういう時、ストレートな女の子っていいなって思う。何事も真っ直ぐで正直で……明るく、元気だ。ミュリエルの言葉で僕はすんなりと、会話に混ざることが出来た。
「ああ、元気だよ。ミュリエルも変わりなさそうだね」
「うん! ミュリエルは元気だよ!」
「思ったよりは、元気そうじゃねえか。安心したぜ。あんな出来事があった後だしな。お前が落ち込んでいないか、みんな心配していたんだぞ」
「ヘルミー……」
「ヘルミー、あんたその話は……」
エリカが静止させようとする。僕はそれを見て。
「いいんだ。色々あって、僕の中ではまだ完全に整理はついていないけど、なんとかやってるところさ。今はマリリンの家で寝泊まりしている」
「ふふ、私は救世主様とお付き合いしているのですわ。おーほっほほ」
そういって、僕に抱きついてくるマリリン。
「お、おい。マリリン……」
それを見たエリカは、表情を変える。
「ふぅん……そういうこと。人が心配していりゃ、あんたは女といちゃいちゃしていたってわけね」
「……」
おい、と。言い返したくもなったが、概ね事実なので言い返すのをやめた。
僕はもしかしたら、エリカのことが好きだったのかもしれない。けど、それは言わないべきだし、マリリン達と肉体関係まで持つようになった僕に、エリカを幸せにする資格なんて、きっとない。これでいいんだろう。どっちみち、僕は戦場に出ることになる。エリカ達に会うのもこれが最後だろう。
……そう思ったが、アカデミーに編入したってことは。まさか、エリカ達も戦場に出向くつもりなのか!?
「お国の為ですもの。仕方ないわ。どっちみち、あの学園にいても同じように徴集されていたわよ。だったら、アカデミーに編入してより高度な技術を身に付ける方が得でしょ。あんたのことが気になったから来たってわけじゃないわ、別に」
そうか。エリカ達にはエリカ達の考えがあって、ここにいるわけか。マリーのことだ、強制的に連れてきた可能性もあるが、僕の精神状態を考えるなら、強制はしないか。それを聞けばまた僕が動揺するのは間違いないだろうし。
即ち、彼女たちは全員が自分の意志でここにいるということだ。
だったら、僕がどうこう言う必要はない。それが、彼女たちの選んだ道なのだから。
例え、その結果。死が待っていたとしても。
異世界に行ったら、僕以外女の子しかいなかった。 くろね @kurone666
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界に行ったら、僕以外女の子しかいなかった。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます