カクヨムWeb小説短編賞2022で行われている様々なアップデートを紹介してきた短編賞通信。 いよいよカクヨムコン直前となるvol.4では、昨年度の短編賞受賞者3人のインタビュー記事を紹介します。 受賞者が語る創作のルーツや作品を作る上での創意工夫などをヒントに、ぜひ短編賞にチャレンジいただければ幸いです。(以下、各インタビューより一部抜粋)
稀山 美波さん
――小説執筆はいつごろから、どのようなきっかけではじめられましたか?
稀山:初めて小説らしいものを書いたのは中学生の頃です。当時はライトノベルをよく読んでいて、「自分も何か書いてみたい!」となったことがきっかけです。その際は短編を数本書いた程度で、それから社会人になるまで執筆は一切していませんでした。それから十数年経ち、たまたまネットでカクヨムコン5に関する記事を見かけ、拙い短編を必死の思いで書き上げた当時を思い出しました。懐かしさ半分・不安半分・期待少々……といった心情の中、いくつか短編を応募させていただきました。
残念ながら受賞とはなりませんでしたが、好評の声を多くいただけたのが非常に嬉しかったのを今でも覚えています。そのことがモチベーションとなり何本も短編を投稿し続けている内に、小説の執筆にどっぷりとハマってしまいました。
――普段から短編を多く投稿されていますが、短編へのこだわりはありますか? また特に短編を執筆される際に意識されていることはありますか?
稀山:短編は少ない文字数の中で物語を完結させなければならないため、起承転結を意識するようにしています。
特に起承転結の中でも”結”の部分にあたる、物語最後の一文やオチにはかなりこだわっています。短い文章の中でしっかりとしたオチをつけるという点では、短編小説の面白さは漫才や落語の面白さに近いのではないかと考えています。
そのため、お笑いで言うところの「緊張と緩和」を意識して書くようにもしています。
くれはさん
――好きな作品と理由を教えてください。
くれは:子供の頃は佐藤さとるさんの本が好きでした。特にコロボックルシリーズです。
佐藤さとるさんの本は、設計図や地図なんかが出てきて、それが「本物っぽさ」を感じさせるというか、こういうことが本当にあるんじゃないか、自分でもできるんじゃないか、というバランスが好きです。
それから小学校の頃に江戸川乱歩の『人間椅子』をうっかり読んでしまって、そのときに何か道を踏み誤った気はしています。少年探偵団シリーズで知っている作家だったので、まさかこんな作品だと思わずに読んでしまうという事故でした。
他には『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』という小説が好きです。主人公はうさぎたちで、うさぎの感性で書かれているなと感じられるのが好きなところです。地図があるところも良いです。
あと最近だと『ヘテロゲニア リンギスティコ』という漫画がとても好きです。人間の言語学者が魔物の暮らす場所で体当たりで意思疎通を試みるお話です。それぞれの種族の特徴が反映された意思疎通のやり方や考え方、文化になっていて、それらが興味深くてとても面白いです。
本当はもっとたくさんあるのですが、キリがないのでこのくらいで……。
――普段ボドゲをテーマにした長編(ボドゲ部(仮)の角くんはボドゲ世界に入り込んじゃう大須さんと遊びたい)を書かれていますが、ボドゲはいつ頃から熱中されているのでしょうか? またボドゲにかかわっていることが執筆に活きていると感じることはありますか?
くれは:ボードゲームは、多分十年くらいになると思います。執筆に活きているかどうかは……どうでしょうか。ボドゲをテーマにお話を書いていることを考えれば活かせてると言っても良いかと思います。
ボドゲに限らず感情を動かす経験はお話を書くのに大事だと思っていて、ボドゲだとそれを手軽に味わえるというのはあるかもしれません。
夢見里 龍さん
――受賞作は美麗で幻想的な世界が目前に迫るような描き方が印象的でした。受賞作はどのようなところにこだわって執筆されましたか?
夢見里:お褒めに預かりまして、恐縮でございます。
私にはもともと、美しい絵画、美しい音楽のような小説を書きたいという想いがありました。そうしたものに需要があるのかはずっと解らなかったのですが、カクヨムに登録してから、素敵だと御声を掛けてくださる読者様が現れ、とことん理想を貫いてみようという想いになりました。カクヨムに投稿していなければ、自身の進むべき道は見つからなかったとおもっています。
ですが、カクヨムコンの落選を経て、綺麗な場景だけでは幅広い読者様に楽しんでいただける「小説」にはならないのだということをあらためて意識し、理想とエンタメ要素の両立を心掛けました。
そうはいっても主従関係、伝奇、幻想、歪な愛と、とにかく好きな要素を盛りこんだので、エンタメ要素をいれるために妥協したところはひとつもございません。
後はもうひとつ、特に起承転結をしっかりと意識したのが良かったのでは、と思っています。
――最後に、カクヨムWeb小説短編賞2022に挑戦する方に
創作する際に心掛けるべきポイントなどを一言お願いいたします。
夢見里:私が日頃から想っていることのひとつに「最大の才能とは好きになることだ」というものがあります。たいへんなことがあっても、楽しいばかりではなくとも、好きだから続けられる。小説を書くことはもちろん、好きな要素についても、同じことがいえるとおもいます。
なので、これからカクヨムWeb小説短編賞2022で夢をつかもうとする御方は、ぜひともありったけの「好き」を詰めこんでください、と御伝えしたいです。
私は、詰めこみました。
そして最後は、諦めないことです。
私はカクヨムコンも四年程落選しています!公募も始めてから、出版まで十五年掛かりました!でも書き続けたからこそ、夢がひとつ、かないました。これを読んでおられる御方の頭上に、カクヨムコンの星が輝くことを祈っております。