短編賞通信 vol.1  記念品の「文庫」と「令和の私小説」部門について紹介します

毎年12月1日より開催され、いまや日本最大の小説コンテストとなった、カクヨムWeb小説コンテスト。
その短編パートとして2019年より開催されているのが、カクヨムWeb小説短編賞です。

第8回カクヨムWeb小説コンテストで行われた大幅なリニューアルと同様、
カクヨムWeb小説短編賞2022でも様々なアップデートが行われています。
この連載企画では、変更点や新たに選考に協力してもらえる編集部の紹介を行っていきます。

受賞作はすべて非売品の文庫化

昨年に引き続き、短編賞2022にて受賞されたすべての作品は、非売品の文庫として記念品授与されます。
読み切りマンガ化やコミックエッセイでの商業化を目指すだけでなく、 「短編小説として自信あるけれどマンガには向かなそう…」「マンガや音声ドラマよりまずは活字として残したい…」、そんな方のために用意した記念品です。

(カクヨムWeb小説短編賞2021の文庫は現在制作中です)

記念品は表紙から文字組まで、角川文庫とまったく同じフォーマットになります。
ぜひ本棚で憧れの作家の本の横に並べてみてください。

「令和の私小説」部門を新設

カクヨムWeb小説短編賞2022より「令和の私小説」部門を新設いたしました。
2021より募集を開始した「エッセイ・ノンフィクション部門」をアップデートした形です。

「令和の私小説」部門
インターネットの世界では、自らをあけすけに語ったストーリーが数多く生まれてきました。時に虚実入り混じる実話風・実体験風なストーリーが人気を博すのは、私小説というジャンルが隆盛した日本ならではなのかもしれません。募集テーマに基づいた、令和の時代にふさわしい、ネット発の「私小説」をお待ちしています。


今回は、実話や実体験を物語として昇華させてほしい、という意図でこの部門名となりました。
物語、つまり話としての「面白さ」が重要な基準となります。

ある意味で参考となるものは芸能人による「エピソードトーク」でもあるでしょう。
メリハリのない語りには味気がありません。けれども「盛った」と見抜かれた話は白けます。

いっぽうで基本的にオチが求められる「エピソードトーク」とは違った部分もあります。
たとえばいわゆる「実話怪談」(本当にあった怖い話)では、そのオチのなさこそが時に真実味として恐怖を駆り立てます。
基本的に「顔出しの私」が語り部になることが求められる「エピソードトーク」とは違い、小説という媒体はより多様な視点、多様な時系列で表現できる場です(もちろんエピソードトークならではの「間」や「声色」といった表現もあります)。

スカッと笑える話、感情が揺さぶられる体験、深く考えさせられる興味深さ、もう二度と読みたくないとすら思わせる毒など、小説の魅力は百者百様。
あくまで募集テーマありきではありますが、ぜひ小説ならではの「面白さ」を追求していただければと思います。

誰もが体験しているような話でもその深堀り具合や、視点、語り口次第で面白くなります。
あるいはその体験が普遍的だからこそ、教訓が得られたり、個人と社会の関係に対する問いかけとして興味深いものになる場合もあります。

カクヨム読者の皆さんを惹きつけ、多数の実話と創作を読んできた編集者を唸らせる作品に出会えることを楽しみにしています。

「令和の私小説」募集テーマ

・他人の知らない〇〇の世界
他人に話しづらい職業やサークル、団体活動の話、そこで得た強烈な経験など、知られていない世界の現実を実体験と絡めて紹介するエピソードを募集します。

・己の過剰な偏愛
恋愛にかかわる自らの過剰な部分やペットなどへの溺愛、時に周りの人には理解されない趣味嗜好は、自らのアイデンティティーに大きくかかわっています。内なる情動をさらけ出した自分語りを募集します。

・人生を変えた衝撃の初体験
人生には様々な転機があります。誰もが通るが圧倒的に人と違った体験、あるいはほとんどの人は一生かかわらない体験など、一歩踏み出し、そして自らの人生を変えた体験を募集します。

・誰にも信じてもらえない不思議な話
こんな偶然があるのかと思うような出来すぎた話、九死に一生を得た話、真偽不明で自分でもいまだによくわかっていない実体験を募集します。

・墓場まで持っていくつもりの秘密
人はだれしも表立っていえない話を抱えながら生きています。己の罪、託された秘密、打ち明けたら家族や友人関係を壊してしまうかもしれない話を募集します。

kakuyomu.jp