カクヨムWeb小説短編賞2021を見事獲得された3名へのインタビュー企画。
本記事でご紹介するのは、『鶴に殉ず』の作者である夢見里 龍さん。
受賞者が語る創作のルーツや作品を作る上での創意工夫などをヒントに、ぜひ短編賞にチャレンジいただければ幸いです。
▼受賞作:鶴に殉ず kakuyomu.jp
――小説執筆はいつごろから、どのようなきっかけではじめられましたか?
夢見里:物心ついた時から物語を読んだり考えたりするのが好きで、7歳の頃には学習ノートに小説を書き始めていました。
その頃は作家になりたいとまでは考えていなかったのですが、私自身、辛い時や悲しい時、
物語に助けられた経験が何度もあり、私もいつか誰かの心にそっと寄りそえるような物語を書きたいと想うようになりました。
どうせ書き続けるのならば、それを夢にしなさいという母親の言葉に背を押され、公募に投稿するように。公募ではじめて選考通過したのが14歳の頃でしたが、とても嬉しかったのを今でも憶えております。
――好きな作品と理由を教えてください。
夢見里:『ミミズクと夜の王』 著:紅玉いづき 様
こちらの小説を読み、ほかのどんな小説とも違った童話のような物語に胸を打たれ、ああ、私が読みたかったのはこんな小説だったんだと強く感じました。残酷な絶望があり、哀しみもあり、それでも優しさを損なうことなく紡がれ続ける愛に、何度涙したことか。
最後にあとがきを読んで、紅玉いづき先生が触れた星の、ほんの端っこにでも構わないからいつかは触れたいと想い、電撃小説大賞に投稿するようになりました。この物語がなければ、今の私はいないとおもいます。
『“B.A.D.”Beyond Another Darkness』 著:綾里けいし 様
こちらも昏く残酷な世界観でありながら、背筋が凍りつくほどの美しさが際だつ幻想小説で、多大な影響を受けました。
私が小説を出版できて嬉しかったことのひとつが、こちらの敬愛する御二方の作家様に
自著を御手に取っていただけたことです。ほんとうに夢のような経験でした。
――受賞作は美麗で幻想的な世界が目前に迫るような描き方が印象的でした。受賞作はどのようなところにこだわって執筆されましたか?
夢見里:お褒めに預かりまして、恐縮でございます。
私にはもともと、美しい絵画、美しい音楽のような小説を書きたいという想いがありました。そうしたものに需要があるのかはずっと解らなかったのですが、カクヨムに登録してから、素敵だと御声を掛けてくださる読者様が現れ、とことん理想を貫いてみようという想いになりました。カクヨムに投稿していなければ、自身の進むべき道は見つからなかったとおもっています。
ですが、カクヨムコンの落選を経て、綺麗な場景だけでは幅広い読者様に楽しんでいただける「小説」にはならないのだということをあらためて意識し、理想とエンタメ要素の両立を心掛けました。
そうはいっても主従関係、伝奇、幻想、歪な愛と、とにかく好きな要素を盛りこんだので、エンタメ要素をいれるために妥協したところはひとつもございません。
後はもうひとつ、特に起承転結をしっかりと意識したのが良かったのでは、と思っています。
――昨年に第26回電撃小説大賞の最終選考作を改稿された『死者殺しのメメント・モリア』にてメディアワークス文庫からの書籍作家デビューされています。今後の作家活動の目標を教えてください。
夢見里:有難いことに昨年出版でき、夢をひとつかなえることができましたが、これからもその夢を見続けられるかはわかりません。だからこそ、一年後、二年後にも作家でいられることが今後の目標です。
夢が醒めないうちに、またひとつ、夢をかなえたいですね。そのためにも現在は新たな小説を書き進め、投稿を続けております。
――短編を多く投稿されていますが、短編へのこだわりはありますか? また特に、短編を執筆される際に意識されていることはありますか?
夢見里:書き手としてはもちろんのこと、いち読者としても短編が好きで、特に幻想小説の短編に強く惹かれ、小川洋子様や山尾悠子様の小説を日頃愛読いたしております。
その上で、短編にもっとも大事なものは余韻だと考えております。小説が終わってしまったときに、ぷつりと縁が絶たれ、現実に取り残されるような心細さ。それでいて、終わってしまった小説の残り香がいつまでも離れないような。短編を執筆する際には、そうした余韻の残る読了感を心掛けています。私の短編は理想とする域にはまだまだ程遠いのですが、読んでくださった読者様にほんのひと時の幻想と、余韻を御届けできれば幸甚です。
――受賞作の副賞として本作品のコミカライズが行われました。コミカライズの感想はいかがでしょうか?
夢見里:ほんとうに貴重な素晴らしい経験をさせていただきました。コミカライズを描いてくださったえもふう様には感謝の想いがつきません。
言葉だけで書き綴った自身の物語が絵になり、動きだす……この感動は、実際に経験しないと解らないものだとおもいます。これを読んでくださっている皆様もぜひとも応募し、この夢をつかみ取ってくださいませ!
――最後に、カクヨムWeb小説短編賞2022に挑戦する方に
創作する際に心掛けるべきポイントなどを一言お願いいたします。
夢見里:私が日頃から想っていることのひとつに「最大の才能とは好きになることだ」というものがあります。たいへんなことがあっても、楽しいばかりではなくとも、好きだから続けられる。小説を書くことはもちろん、好きな要素についても、同じことがいえるとおもいます。
なので、これからカクヨムWeb小説短編賞2022で夢をつかもうとする御方は、ぜひともありったけの「好き」を詰めこんでください、と御伝えしたいです。
私は、詰めこみました。
そして最後は、諦めないことです。
私はカクヨムコンも四年程落選しています!公募も始めてから、出版まで十五年掛かりました!でも書き続けたからこそ、夢がひとつ、かないました。これを読んでおられる御方の頭上に、カクヨムコンの星が輝くことを祈っております。