短編賞通信 vol.3 「G'sこえけん」と「カドカワ読書タイム」が選考に参加します

カクヨムWeb小説短編賞2022で行われている様々なアップデートについてご紹介する短編賞通信。
vol.3では、今回エンタメ短編小説部門にて新しく選考に協力してもらう「G'sこえけん」「カドカワ読書タイム」編集部を紹介します。
ともに今年度カクヨムにて小説コンテストを開催して、カクヨム作家の皆さんのたくさんの短編を読まれています。コンテスト担当者のお二人に、カクヨム作品の魅力、短編作品へのアドバイスについて、話を聞きました。

G'sこえけん「好きをまっすぐ書いた作品に出会える場」

――G'sこえけんとして初めて短編コンテストを開催いただきました

 はい、初めての試みだったので500作品を超えるとうれしいなと思っていたのですが、800作品を超える作品を応募をいただきました。選考はその分大変ですが、うれしい悲鳴をあげています。

――現在選考途中かと思いますが、作品の印象はいかがでしょうか。

 素晴らしいですね。今回は小説そのものでもシナリオでもよいということで広く募集している手前、オーディオドラマやASMR作品にそのままの形で出せるというわけではありませんが、すでに数作品、ぜひ商品化したいと思える作品に出会えています。
 全体的なレベルも高く驚きました。選考中途の段階で具体的な作品については申し上げられないのですが、「あ、こういうシチュエーションたしかにアリだね」と思える柔軟な発想に富んだ作品が多く、新鮮な気持ちで読めています。今回のコンテストでは賞を上げられないかもしれない、けれども別の評価軸であれば十分に受賞や商品化の可能性がある、そんな作品も多々ある印象です。
 そういった意味で、「面白ければ何でもあり」のカクヨムWeb小説短編賞は激戦になるのではないかと思いました。


G’sこえけん~G’s音声活動研究会~


――今回カクヨムで作品を募集してよかったことはなんでしょうか。

 カクヨムの運営の方からも「カクヨムは好きを形にしている作者さんが多い」という話を聞いていましたが、そうした好きがまっすぐ伝わる、作品としての「強度」があるものが多い印象です。
 今回コンテストでは読者の票をそこまで集めていない、100人いたら90人に理解されないかもしれない、けれども一人は絶対好きな人がいる、そんなフェチズムを感じる作品にも出会えました。
 電撃のG'sブランドは、もともとGAME美少女キャラクター専門誌が出発点であり、コアな読者のみなさんと向き合ってきた歴史があります(※G'sには「Gals」と「Games」の両方の意味があった)。特に今の時代は、そうした様々な好きが認められる時代だと思います。今回のコンテストの商業化がうまくいけば、ぜひそうした好きを爆発させた作品を第一に求めるコンテストも検討していければと考えています。

――G'sこえけん賞を目指す方に一言お願いします

 G'sこえけん賞に選ばせていただいた作品は、商業展開を目指していきたいと考えています。エンタメ短編小説部門から1、2作品を選ばせていただくことを予定しています。
 ラブコメジャンルの作品と親和性が高くなるかとは思いますが、他ジャンルでもオーディオドラマになりうる、斬新な作品があれば選出するつもりです。
 将来的にはオーディオドラマを起点に、メディアミックス展開ができる作品も生まれればと目論んでいます。ぜひ好きを形にした作品で、こえけん賞も狙っていただければと思います。

カドカワ読書タイム「〝お約束〟を上手く使えばもっと面白くなる」

――「5分で読書」シリーズとしては2回目の開催となりました。

 前回は3部門で2800作品、今回は2部門に絞ったため少し不安でしたが、2400作品の応募をいただきました。変わらずたくさんのご応募いただき、本当にありがとうございます。

――選考の感想を聞かせてください。

 まず、大賞が出た恋愛部門ですが、対象読者である小中学生を意識した作品が多く非常にレベルが高かったと思います。今後も「5分で読書」のコンテストを開催することがあれば、必ず恋愛部門は入れたいと思います。
 ミステリ部門については少し難易度が高かったかもしれない、ということも考えています。謎を出して舞台やキャラクターの説明をして解決にもっていく、これだけで字数の多くを使ってしまいますよね。非常にうまく話はまとめていただいているものの、もう一味ほしかったかな、という作品が多くありました。またミステリーとしてもキャラとしても完成度が高くても、10代前半の子どもたちが興味を持つには少し難しい作品もありました。私たちとしてはもう少しお題を明確化して、ストーリーを濃く書いていただいたほうがよかったのかもしれないと反省しています。
 一方で、異世界転生や悪役令嬢といったジャンルと同じように、ある種の〝お約束〟をうまく使うことで、短い字数の中でも話を大きく展開させることができると思います。たとえばまめいえさんの『裏の裏の裏は裏』はホームズとルパンを想起させるキャラを据えたことで、読者は簡潔な説明でもキャラ像を十分に思い描くことができ、二転三転ならぬ三転四転するストーリーを十分に楽しめるものになっていました。情報を詰め込めばいいというわけではないのですが、短い字数でよりストーリーを濃く、面白くする工夫はぜひしていただきたいと考えています。

カドカワ読書タイム | KADOKAWA

――ある種の完成度よりも、粗削りな面白さが重要ということでしょうか。

 書籍化を経験された方も多数応募いただきましたし、本当に質の高い文章を読ませていただきました。その前提があっての贅沢な悩みです。小説としての完成度を求めず、粗削りに突っ走っている、だけれども文句なしに面白い、そんな話に出会えればより最高でした。
 たとえば物語もストーリーもキャラクターもベタな王道のものでもかまわないんです。ただそこが自分の好きが乗っかれば必ず自分だけの作品になるはずです。特に筆力がある人こそミートしてヒットを稼ぐだけではなく、自分のスタイルでフルスイングしてホームランを狙う作品もぜひ投稿いただければと思います。

――今回カクヨムWeb小説短編賞2022にも選考協力という形で参加いただきますが、参加者へ一言お願いします。

「5分で読書」シリーズでは、小中学生が朝読の時間に楽しめる本づくりをテーマにしていますし、カドカワ読書タイム全体としては10代前半が本が読むことが楽しいと思える作品を多数手がけています。
 今回のカクヨムWeb小説短編賞2022では、直接的には短編賞・短編特別賞の審査にかかわらず、離れた形で作品を読ませていただきます。ただし、読むからにはカドカワ読書タイムで書籍化したい、5分で読書の短編集に入れたいと思える作品に出会いたいと思っています。
 たとえば先ほどミステリは少し難易度が高かったかもしれない、ということをお伝えしました。けれども、1万字で書かれた短編で、ミステリとして完成度が高く、10代の人が読んで面白いと思えるものについては、字数の調整の上での短編集の収録や、場合によっては長編の単行本化をふくめ、ご相談をさせていただきたいと考えています。あるいは誰が読んでも面白い作品については、10代向けに少し改稿していただくことを前提にお声掛けする場合もあります。
 字数以外の縛りがないからこそ生まれる、カクヨムコンの短編部門だからこその作品に出会えるとうれしいです。

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