PSヒーロー始めました。
くずもち
第1話
「―――」
俺、大門 大吉は一心不乱に鉱山で穴掘りに勤しんでいた。
俺の黒髪からは汗が滴り、シャツとズボンは土にまみれていることだろう。
そんなことにはいっさい構わずに、ガッツンガッツンとツルハシで岩盤を崩す。
洞窟の中での重労働はおそらく相当ハードであるが、きついことばかりでもない。
地道に穴を掘っていれば、いいことだってちゃんとある。
「―――ん? こいつは……ひょっとしてひょっとするか?」
そして今日も俺は、土の中からお宝を発見した。
とても暗く、黒くも見える結晶はじっと見ているとわずかに光を放っていた。
土をかき分け、見つけたそれを大事に取り出し、俺は叫んだ。
「親方! 出ましたよ!」
「おう! ちょっとこっちに持ってこい!」
発見報告に野太い声が返ってきて、俺は掘り出した物を持って走った。
待っていたのは鉱山夫の責任者、ドワーフのダン親方だ。
立派な髭がトレードマークの彼はこのあたりのドワーフ族の顔役で、昔冒険者として鳴らした豪傑である。
ダン親方はごっつい指からは想像もできない繊細な動きで発掘品から土を払い、良しと頷いた。
「魔石だ。読みは外してなかったな。よくやったぞダイキチ!」
そう言ってダン親方は機嫌よく俺の肩を叩いた。
ちなみに魔石とは魔法という不思議な力をこめることが出来る鉱石である。
魔石を加工した道具は魔道具と呼ばれていて、原材料の魔石は高値で取引されている。
大きな鉱脈でも発見すれば俺達にボーナスチャンス到来だった。
「よし! ダイキチのいたあたりを重点的に掘っていく! 忙しくなるぞ、野郎ども! 気合入れろ!」
「「「へい! 親方!」」」
鉱山夫仲間のドワーフ達が親方の号令に一斉に返事を返した。
彼らが動き出すと、ツルハシをものすごい勢いで振るって簡単に大岩を砕き、俺だったら三人は必要な岩を一人で運び出してゆく。
その馬力はとても人間技とは思えないほどパワフルだが、これこそが魔法の効果だった。
俺も体力には自信があるけど、単純な力仕事は本気になった彼らには絶対にかなわない。
俺はほぼドワーフ達しかいないこの場所に、紆余曲折あって流れ着いたのだが、力不足を感じながらもここに居ついているのにはそれなりの理由があった。
その日の仕事終わり、俺はダン親方に声をかけられた。
「お疲れさんだ、ダイキチ! 今日はバイト代をはずむぞ!」
「ありがとうございます! 」
「発掘したジャンクはいつも通りまとめてあっから持っていってくれ。何人か人を連れていっても構わんぞ?」
「助かります。でもあれくらいなら一人で大丈夫ですよ」
「そうか? お前の体力もますますドワーフに近づいてきたなぁ! がっはっはっは!」
豪快に笑うダン親方に頭を下げて俺は今日の分のバイト代を受け取り、本来の仕事を請け負った。
「欲しいジャンクは、いつも通りお前が持ってって構わんぞ。面白いもんがあったらリッキーのやつにも持って行ってやれよ」
「ははは。いいですね。それじゃあ、また明日親方!」
「おう! またな!」
ジャンクとは魔石が発掘される場所で必ず見つかる用途不明品のことである。
そういうものをひとまとめにしてゴミ山に持って帰るのが本来の俺の仕事だ。
だがこのジャンクはただのガラクタじゃない。
ジャンクはどこかしらの異世界からやって来た漂流物で、俺から言わせればこれは魔石よりも価値のある本当の宝物だ。
何でそんなことが断言できるかというと答えは簡単。
俺もまた異世界からやって来た漂流者だからだ。
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