第26話

 それはあまりにもあっという間の出来事だった。


 俺、大門 大吉は様子見のために遠くの高台から監視を続けていたが、あまりにも豪快な誘拐に立ち会ってしまった。


 いっそ騎士団にコソコソするよりも、ついていった方がよりパワードスーツの活躍のチャンスがあるんじゃないのか?そんな思い付きで騎士団を探っていたら、遭遇した大事件である。


「……これはヒーローの出番だよな?」


 思わずそう仲間に訊ねると、二人からは白い目で見られたけれど、急いで行動し中ればならないことに変わりはなかった。


 それでは少し、状況の整理をしてみよう。


 女騎士のお嬢様が攫われてしまった。


 それもなんだかよくわからないモノに地下に引きずり込まれるという、何ともエキセントリックな方法で。


 俺としては地面に引きずりこまれるあたり、あの赤毛ドリルの呪いなんじゃないかなってちょっと思ったが、言ったら不謹慎そうだった。


「騎士団とんでもないなって思ってたら……なんかいきなり状況がひっくり返ったんだけど? 何あのでかい腕? オークなの?」


「……あの馬鹿みたいに強力な炎の魔法を喰らってもびくともしていなかったぞ。なんだ、あの耐久性は?」


「アレが蒸気王なのか?」


 感想は多々あるが地面の下にやばい奴が隠れていたことだけはわかった。


 今の光景をヘルメットのカメラを通じて同じく見ていたテラさんは、あのオーク達の装備を冷静に分析していた。


『オークの所持していたテクノロジーは驚くべきことに蒸気機関をより発展させたものだと推測されます』


「蒸気機関……あの白い煙って蒸気なのか……」


 あのオーク達、これまた渋い趣味をお持ちの様だ。


 なんとなく懐かしさを感じるデザインの鎧だなとは思ったんだ。


 未知の文明に、未知の敵。


 わからないことだらけで、頭の痛い事である。


 だが今重要なのは、俺がこれから動くのかやめるのかそれを決めることだった。


 騎士団とか、国家の一大事とかはひとまず考えから外しても、とるべき道はただ一つだった。

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