第27話
「よし……行って来るか!」
俺がそう宣言すると、味方のはずのリッキーとシルナークからは呆れた視線が飛んできた。
「なんでそんな結論になったんだろう?」
「さぁな。だが当初の予定通りではある」
「その通り。誘拐は想定外だが、倒すべきものは出て来た。まさに望んでいた展開だろう? スーツの標的がそこにいる。それに女子がまた攫われた。こいつを動かす理由が二つもあれば、ヒーローの出番だろう?」
いや、そもそも理由など必要ないのかもしれない。
普通の人間が二の足を踏む場面で、たやすく一歩踏み出してこそヒーローと言う物じゃないだろうか?
少なくとも俺は助けに行くことが正解だと確信していた。
「まぁ、あのお嬢様に助けが必要なのかわかんないんだけどね」
リッキーの言う通り、それはまぁ確かに。
攫われたのがあのお嬢様なら助けに行かなくても、どうにかできる気がする。
まぁしかし助けに行く方としては非常に気が楽な話だった。
「いらないなら。そんときはそんときだ……それじゃあ、始めますか」
「そうだな。このまま帰ってはそもそも労力の無駄というものだ」
「僕は帰ってもいいんだけど……」
思ったよりどっぷり騎士団に絡みそうな事件で嫌そうな顔をするリッキーには悪いが、ここまで来た以上何もしないで帰るなんてありえない。
俺が服を脱ぎすてると、服の下には黒いゴムのような素材のインナーがすでに着込んである。
そして持ってきていたコンテナにパスワードを打ち込むと重々しい音をたてて蓋が開き、中から俺のスーツが飛び出してきた。
俺はそのあまりのカッコよさに震えていた。
「くぅ! 我ながらいい仕事した!」
『マスターそんなことを言っている場合ではありません』
「そうだった!」
俺は着ぐるみを着るようにスーツに入る。
ブシュと音を立ててフィットするスーツはインナーをつけるとつけないとではフィット感が段違いだ。
ヘルメットを被り、俺の準備は完了した。
『ヘルメットとスーツの接続を確認』
「各部問題なしだ」
『了解。起動します』
ブオンとスーツの目に光が灯る。
前回以上にスムーズな立ち上がりに、俺は歓喜の声を上げた。
「いける! いけるぞ二人とも!」
「当然だね! 調整は万全さ!」
「こちらも手は抜かない。さて後はお前次第だ」
「おっけー……」
最後の仕上げにシンボルの赤いマフラーを巻けば、勇気がみるみる湧いてきた。
シルナークは問題ないか、確認して俺の肩をポンと叩く。
「マフラーの方にも少し手を加えてある。呪いをより感覚的に扱うための魔術的刺繍だ。効果はあるはずだが、使ってみれば感覚的にわかるはずだ」
「マジか! サンキューシルナーク!」
「スーツの力はここから高みの見物をさせてもらおう。危なくなったら置いて逃げるからな?」
「僕もそうする。君は死んでもスーツは持って帰ってくるように」
「無茶言うなぁ……ひどい奴らだ。なら、せいぜい死なないように―――いや。死ぬ気でヒーローになってくるわ」
俺は宣言して、一息に飛び出した。
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