第7話

「ど、どうしたのこんな大金?」


 あんぐり口を開けるリッキーに俺は真剣な表情で頷いてみせた。


「これは……何と言ったらいいか。……退職金みたいなものかなぁ」


 ここに来る前、俺は兵隊をしていた。


 もっぱら後方支援担当だったが、色々と終わった後に貰ったお金である。


「うぁ……かなりあるね。普通に出してくるとは思わなかった」


「ぶっちゃけ全財産だ」


「え?」


 この町に来て鉱山で貯めた分もあるので、その額はちょっとした豪邸が買えるくらいはあるだろう。


 それを聞いたリッキーはさすがに顔色を変えた。


「君は……なんでここまでするんだ?」


 それはあまりにも当然の疑問だった。


 ゴミ山でだれも見向きもしないようなものを修理するために全財産をつぎ込もうとするなんて言うのは、我ながらまともじゃない。


 俺も何度も考えたが……リッキーに答えたのは考えた中でもシンプルなものだった。


「その価値があると俺が信じているから。だからどうしてもやりたいんだ」


 結局の所こればかりはきっと説明してもわかってもらえない類の、自己満足でしかない。


 リッキーは困り顔のままもう一度俺に尋ねた。


「ホントにこれ……使っちゃっていいの? 余らなくてもいい?」


「あったりまえだろ? その代わり最高にロマンの詰まったものにしてやってくれよな!」


 リッキーに求めるのはそれだけだ。


 しかしそんな願いがどれだけリッキーに負担を強いるかは計り知れない。


「できる限りの要望には応えるつもりだ、だからどうか頼む。リッキーにしか頼めないんだ」


「……」


 きっと俺の希望は重すぎると自覚していた。


 しかしリッキーは少しだけ俺の顔を見て考え込んだ後、お金の入った袋を掴んだ。


「わかった……君の依頼引き受けるよ。任せて」


「おお! リッキーならそう言ってくれると思っていたよ!」


「まぁ、付き合いも長いからね」


 頼もしい返事に俺は心からリッキーに感謝した。


 計画通り。それではもう一段階話を進めよう。


「ではテラさん……詳しい話を始めよう」


『了解しました。交渉成立、おめでとうございますマスター。それではリッキー様、改めまして当基地にようこそ。貴方をゲストとして登録いたしました』


「へ?」


 交渉が成立したことで、テラさんが話始める。


 リッキーは幽霊にでも話しかけられたみたいに挙動不審になっていた。

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