第13話
「はああああああ!」
秘密基地にガガガガガっとミシンの音が響く。
これもまたゴミ山あさりの成果の一つ。足踏みミシンは正確に、そして快適に我が空想を形にしていった。
『何をしているのですか? 情報の開示を求めます』
そう聞いてきたテラさんに俺は縫い目を確認しつつ説明した。
「ふぅ。マフラーっぽいものを作ってる。こう長くて首に巻き付ける感じの。パワードスーツを着たら首に巻こうと思ってさ!」
『それに何の意味が?』
「意味?」
意味と言ったかテラさんや?
いやいやそれはいくら何でも野暮ってものだろう。こいつにはとっても大切な意味がもちろんあるのだから。
「速く動いた時にたなびくとすさまじくかっこいい気がするからだね!」
『……掴まれたり引っかかったりする危険が増すのではないでしょうか?』
「そこは頑張る! それに町の変わり者ナンバー2のエルフさんおすすめの逸品だ。丈夫さは折り紙付き! ちなみに変わり者ナンバー1は俺で、ナンバー3がリッキーだよ」
『不名誉称号を自称する必要はないのでは?』
「そう? まぁ、俺も変なことしている自覚はあるからなぁ。真人間だと言い張るのも……正直疲れるし?」
『頑張ってあきらめないでおきましょう。その努力は必要な努力ですよ』
「そうかもしれないけどなぁ……いちいちやることなすこと止められるのは困るんだよ。すべて必要なことだから」
『……なるほど』
ついとんでもない論法で説得してしまったが納得されてしまった。
ちょっと不満に思っている自分は我ながら我儘なものである。
まぁそんなことより今はマフラーだ。
試作品の布はまだ染められておらず真っ白だった。
本当は赤がいいが、あらゆる意味で試作品である。
具合がよければ今後赤く染色して新たに作り直すのもいいだろう。
マフラーを首に巻いた姿を想像すると、気分はすでにヒーローだった。
「んで……外装の方はどんな感じ?」
その後の進捗を訪ねてみるとテラさんは答えた。
『はい。朝には完成の見込みです。リッキー様からもそう連絡を受けています』
「おお! それは素晴らしいなテラさん!」
思ったよりもずっと早い。
リッキーもテラさんも全力で頑張ってくれているようだ。
「これは……俺も負けてられないな」
俺がこうして急ピッチで裁縫に励んでいる理由は一つ。
まぁぶっちゃけ、ジッとなんてしていられるわけがなかった。
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