第15話
「いそげいそげいそげ……!」
「わかってる……わかってるから……!」
ガチャガチャと俺の体に外部装甲が装着されてゆく。
思いのほか着ることが大変なのは、今後の課題とメモしておこう。
「よし……外部装甲取付終了!」
「ヘルメット……じゃなくて、兜とって!」
「はいこれ!」
俺は慌てて手渡されるヘルメットをかぶる。
リッキーの気配が離れると、耳元からテラさんの音声が聞こえてきた。
『音声は聞こえますか?』
「ああ! 聞こえてる! 各部起動確認! 計器に問題なし! リッキー! 外から見た感じどうだ?」
「え? っと……問題ないように見えるけど、この兜なんで目が付いてるの?」
「外から中の状態が一目でわかるように表示が変わる! 死にそうだったら白目をむくから気を付けていてくれ! まぁ遊び心だ! 結構かわいいだろ?」
「何それいるの!」
『動作正常。メインパワーに切り替えます。作業員は退避してください』
わちゃわちゃと何かとにぎやかだが、気分的には最高潮だった。
振動が徐々に強くなっていたが、これは動力の音なのか俺の心臓の音なのか俺にはわからない。
ただ、熱い血が激流になって巡っているのは、俺もスーツも同じ気がした。
「リッキー……いよいよだ!」
「よし! がんばれ!」
「おう!」
返事をすると背中のメインパワーから電力が供給され、スーツが本格的に唸りをあげる。
各部に力が行き渡り、その目に電光が灯った。
ブゥイーンと振動音が耳に届いた時点で俺のテンションも限界値を超えていた。
『起動します』
「来た来た来た来た!」
テラさんの声に合わせて立ち上がりながら、俺は歓喜に任せて叫ぶ。
本格的に動き出したスーツから漏れ出る光はひときわ強さを増して、俺を鼓舞しているようだった。
「……よし!」
最後に俺はしっかりと白いマフラーを巻いて気合を入れた。
このマフラーは勇気のスイッチだ。
かつて見たスーツを着たマフラーのヒーローは、いつだって勇気を胸に前に進むのである。
スーツの力はどれくらいのものか……俺はぺろりと乾いた唇を舐め、前だけを見つめた。
そして全力で足に力を込め、前に飛ぼうと踏み出したが―――。
「うお!」
俺は一瞬パニックになった。
気が付くとえぐれた地面にひっくり返っていたが、身体は何ともない。
どうやら予想外の加速で空中でバランスを崩したらしい。
注意喚起するテラさんの声が耳元で響いた。
『落ち着いてください。慣れるまでは慎重にいきましょう』
「お、おう。ちょっと驚いただけだ」
『急ぎましょう。ドラゴンは比較的危険なモンスターです』
「ドラゴン知っているのか? テラさん」
『はい。交戦記録があります。初戦の相手としては悪くないでしょう』
「ほほう……言うね」
『当然です。しょせんは羽の生えたトカゲ。我々のテクノロジーの敵ではありません。後付けの装甲はわかりかねますが』
なんて言ってくるテラさんはここに来て何より頼もしく感じた。
「いいね! ……そうでなくっちゃ!」
俺は改めて立ち上がり、今度こそドラゴン目掛けて駆け出した。
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